都市システムは全住民にサービスを提供するために存在し、そこには移動に困難を抱える人々の増加も含まれます。
都市は、今日のニーズに応えながら、将来のシステムが持続可能性とアクセシビリティの基準を満たせるよう、総合的に投資しなければなりません。
誰もが利用しやすい都市を設計・建設することで、すべての市民に必要な都市変革を実現できます。
都市システムは全住民にサービスを提供するために存在し、そこには移動に困難を抱える人々の増加も含まれます。
インフラに関する意思決定と今日の投資は、現在の進路を定めるとともに、今後数十年にわたる制約をも形づくります。この重要な局面で、都市は今日のニーズに応えつつ、将来のシステムが一段と厳しい持続可能性とアクセシビリティの基準を満たせるよう、総合的に投資しなければなりません。
世界各地で、都市インフラの更新に向けて過去最高水準の資本支出が計画されており、2027年までに投資額は130兆ドル超に達する見込みです。主な焦点は脱炭素化ですが、アクセシビリティという重要な側面や、その必要性が高まる今後の人口への配慮は、しばしば見過ごされています。
すべての市民が利用しやすい都市づくり
今後のアクセシビリティ改修により高い費用を払うことにならないよう、都市の考え方や計画の立て方を変える必要があります。過去の過ちを避けるため、都市は持続可能性とアクセシビリティの両方の基準に対応する投資を行わなければなりません。
そうすることで、都市は今日の市民のニーズに応えるとともに、明日の人口を見据えた意図的な設計を進められます。
世界最大のマイノリティである障害のある人々は、重要な人口集団を構成しており、世界人口の16%、すなわち13億人に上ります。
さらに、高齢者人口は今後数十年で大幅に増加し、2030年には10億人、2050年には16億人に達すると予測されており、推定世界人口の17%を占めることになります。
障害のある人々や高齢者は、歩行、バランス、視覚、認知、身体的な力の低下など、移動に関する困難に直面する割合が高くなります。大都市圏、とりわけ古い都市やその交通システムの設計では、こうした人々のニーズがしばしば顧みられてきませんでした。
革新的で利用しやすいソリューションへの投資
ロンドン地下鉄の駅のうち、車椅子で利用できるのは3分の1にすぎません。古いインフラの改修には費用がかかりますが、都市は、移動の障壁を取り除き、人々が移動しやすくなる技術や、より優れた設計手法に投資することで、こうした制約への対応を始められます。
実際、新しいエリザベス線は、すべての乗客への支援に大きく力を入れています。ロンドン交通局は、旅行方針文書の中で、「公共交通機関を利用する際のアクセシビリティの重要性を理解しており、高齢者や障害のあるお客様に自立と移動の自由をもたらすことを歓迎します」と述べています。
また、スイスのローザンヌ市では、地下鉄駅の床に触知式の表示が設置されています。手すりには点字があり、映像と音声による信号も備わり、車椅子や歩行器の利用者も全面的に利用できます。市全体で優れたユニバーサルデザインの手法が採用されていますが、比較的裕福な都市であるため、理想的なモデルにはなっても、まだ必須要件とはなっていません。
自動運転車の実証事業からオープンデータの収集、革新的な金融手段まで、移動の障壁を取り除く実質的な進展は、多くの場合、イノベーションによって実現します。
インフラへの過去最高水準の資金投入が進み、支援技術への世界的な関心も高まる今こそ、都市は移動案内の向上に焦点を当てた技術を、建造環境に直接取り入れるべきです。
フォーブス誌の報告書『Disability is A Game Changer for 2023 and Beyond(障害が2023年以降を変える)』は、この市場に眠る可能性を強調しています。
利用しやすい製品の消費者市場は、「ニッチ」と誤解されています。可処分所得が8兆ドルを超える障害者コミュニティは、米国、ブラジル、パキスタン、インドネシアを合わせた規模に相当し、中国を上回る市場です。
Custom Markets Insightsによると、障害のある人々と高齢者向けの世界の支援技術市場は、668億4,000万ドルの規模で、前年比成長率は7.26%です。
世界の人口構成が変化し続けるなか、この市場は拡大が見込まれます。都市は、将来の人口に役立つ技術に戦略的に投資し、アクセシビリティを標準とする企業からのみ調達することで、この勢いを後押しできます。
自治体や民間の関係者は、投資基準の中心にアクセシビリティを据えることで、イノベーションの進展を加速できます。
バリアフリーのインフラには、高い運用基準が求められる
アクセシビリティに配慮したインフラも、維持管理が行われなかったり、十分に統合されていなかったりすれば、すぐに利用しにくくなります。都市は、そこで暮らす人々と同じく、絶えず変化しています。都市インフラの運用・保守は、その資金調達、設計、建設を担う組織とは別の複数の政府機関が担うことがよくあります。
米国では、米国障害者法(ADA)の遵守において、設備を使える状態に保つことが重要です。企業は障壁を取り除くために費用を投じます。そして、その投資を守る必要があります。
バリアフリーで使いやすいインフラには、慎重な設計だけでなく、高い運用基準も必要です。保守と運用への注力は極めて重要です。中断が生じれば、障害のある人々や高齢の住民に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
地下鉄の利用しやすい入口が工事中だとします。その場合、車椅子の利用者は次に乗車できる場所を探すため、慣れていない経路を通ることも多く、かなりの距離を移動しなければならないことがあります。
分かりやすい経路案内、複数のアクセスポイント、連絡手段、安全ネットワーク、迅速な修理など、高い運用基準は、アクセシビリティに配慮したインフラの機能を保つために不可欠です。
世界経済フォーラムは、持続可能で包摂的なモビリティシステムをどのように推進しているのでしょうか。
世界経済フォーラムのモビリティの未来を形づくるプラットフォームは、航空宇宙・ドローン、自動車・新たなモビリティ、航空旅行・観光、サプライチェーン・輸送という4つの産業にまたがって活動しています。モビリティの未来を安全でクリーンかつ包摂的なものにすることを目指しています。
「明日のクリーンな空のための連合」を通じて、100社を超える企業が協力し、2030年までに世界の航空業界で持続可能な航空燃料の比率を10%にすることを目指しています。
フォーラムはユニセフと協力し、海運、航空、物流の大手企業と憲章を策定しました。COVAXによる世界各地の脆弱なコミュニティへの新型コロナウイルス感染症ワクチン10億回分超の配送を支援するためです。
道路貨物輸送ゼロ・プロジェクトとP4G「ゼロへの移行」連合は、成果をもたらし、貨物輸送のゼロエミッション化を加速する根拠、費用、機会を示してきました。
「Medicine from the Sky(空から届ける医薬品)」イニシアチブは、ドローンを使ってワクチンを配送し、インドの遠隔地に医薬品を届ける取り組みで、300回を超える実証試験に成功しています。
フォーラムのTarget True Zeroイニシアチブは、電動飛行技術と水素飛行技術を活用し、ゼロエミッション航空の導入と規模拡大の加速に取り組んでいます。
フォーラムは、ロサンゼルス市、連邦航空局、NASAと協力し、世界各地の都市でアーバン・エア・モビリティの導入を支援する「都市の空」の原則を策定しました。
フォーラムは、宇宙持続可能性評価の策定を主導し、軌道上のデブリ低減と宇宙ミッション管理において、より安全で持続可能な手法を奨励・推進しています。
Circular Cars Initiativeは、自動車のサーキュラーエコノミーに関する政策の策定に貢献しています。これは、欧州委員会およびゼロエミッション車移行評議会参加国の支持を受けたもので、現在は中国の政策ロードマップを支援するよう要請されています。
Moving Indiaネットワークは政策担当者と協力し、電気自動車の製造政策を前進させ、ゼロエミッションの道路貨物車両の普及を促し、移行への資金を確保しています。
都市モビリティ・スコアカード・イニシアチブは、フォーラムのグローバル新モビリティ連合が主導し、モビリティ事業者と都市を結び付け、持続可能な都市モビリティシステムへの移行状況を評価しています。
お問い合わせください。参加方法について詳しくご案内します。
カナダのリック・ハンセン財団のような組織は、開発事業者がよりアクセシビリティに配慮したガイドラインに沿って建設できるよう支援しています。例えば、法令で定められた範囲を超えて空間を理解し、共感と利用者中心の設計を取り入れるとともに、「何もしない」ことによる経済的損失を考慮することに重点を置いています。
同財団は、ニューヨーク市にあるラガーディア空港ターミナルBの再設計に取り組み、以下のアクセシビリティ機能を導入して最高評価のゴールドを獲得しました。
すべての利用者対応デスクに磁気ループを設置
直感的な経路案内を支援するため、出発案内板を2種類の形式と色分けで表示。搭乗口までの距離も表示
車寄せで利用できるアクセシビリティ支援付きの降車・チェックインサービスと呼び出しボタン
ランドマークも活用した、ターミナル全域で分かりやすく一貫性のある色分け経路案内
植物や葉による感覚刺激を取り入れ、ターミナル内の他の空間とは明確に異なる、ニューヨーク市の公園を思わせる落ち着いた座席エリア
政策と規範を更新する必要がある
都市イノベーションの頂点としてしばしば称賛される「スマートシティ」の構想は、障害のある人々や高齢者を見過ごし、設計、計画、調達、実施の各プロセスから排除することが少なくありません。
政策や規範はインフラ設計を規定します。設計プロセスを進化させ、アクセシビリティ基準とレジリエンスを優先する必要があります。それにもかかわらず、アクセシビリティの専門家がプロセスの終盤になってから関与することが多く、変更が非効率で高額になっています。
さらに、専門家ごとに異なる独自のガイドラインを使うため、何をアクセシブルな設計とするかについて、国内または国際基準を設けるのが困難です。アクセシビリティの標準ガイドラインを定め、教育課程を整備することで、ユニバーサルデザインの原則を円滑に取り入れられます。
誰もが利用しやすい都市の設計・建設を進める間にも、OpenSidewalksなど、クラウドソーシングで情報を集めて現状の都市を地図化し、身体的な困難のある人々に、利用しやすい道路、地下鉄の駅、ホテルなどについて、より詳細な情報を提供する取り組みやアプリが複数あります。
インフラシステムの設計にあたって都市の説明責任を高めるには、アクセシビリティ技術者の審査・認証制度を設け、計画が標準規範を満たした際に公式認証を与える方法があります。
レジリエントで利用しやすい都市をつくるには、さらに次のことも必要です。
あらゆる利用者を考慮した、複数の交通手段を統合する交通に投資する
開発計画の初期段階から包摂的な設計原則を取り入れる
統合的な設計チームの一員として、障害のある人々や高齢の住民を計画プロセスに加える
スマートシティの技術・設計ガイドライン、調達基準、インフラ改修にアクセシビリティを組み込む
利用しやすい都市を設計・建設することは、すべての人に恩恵をもたらすという点で望ましいだけではありません。今後の人口構成がすでに見込まれているなか、そうした都市がなければ世界的な危機を招くでしょう。
多様な知見を持つチームが今すぐ計画に取り組めば、改修に何兆ドルもの費用を投じずに済み、都市と市民がつながり、繁栄するために必要な、利用しやすい都市への変革を実現できます。
ThrivAbility Ecosystemは、あらゆる年齢や能力の人々が参加し、つながり、活躍できる、アクセシビリティが普遍的な世界の実現を使命とするソーシャルベンチャーです。AARP Agetech Collaborativeのテストベッドに指定されており、教育、イノベーション(支援技術、エイジテック、アクティブ・モビリティ)、企業との連携を3つの柱としています。
