ペルシャ湾岸の小国クウェートは、2015年の購買力平価調整後の1人当たり平均所得が6万9,000米ドルを超え、世界の1人当たりGDPランキングで6位に位置している。同時に、世界経済フォーラムの2015~2016年世界競争力指数(GCI)では34位にとどまった。
面積と人口のいずれも比較的小さいもう一つの国、ニュージーランドの1人当たりの富はクウェートのおよそ半分にすぎず、購買力平価で3万4,000米ドル強、世界35位である。それにもかかわらず、ニュージーランドの競争力は明らかに高く、GCIで16位にランクされた。
もちろん、両国の経済とその構造を直接比較することはできない。クウェートは天然資源収入(輸出の90%超)への依存度が高く、それがこうした高い1人当たりの数値をもたらしている。一方、ニュージーランドのGDPは、国内経済の69%超を占めるサービス業を主な原動力としている。概念としても指数としても、競争力は各国経済の構成に関する固有の事情を超えるものだと考えられる。競争力は最終的に、各国に共通し比較可能な一連の指標に基づく。では、なぜこのような不一致や、同様の不一致が生じるのだろうか。
これまで、開発や競争力などの関連要素を測定し理解する取り組みは、経済的な課題が中心となってきた。従来、GDPとその派生指標は、開発の変化を説明し裏付けるために用いられてきた。多くの場合、政策実施を検討するうえで役立つ、明確で重要な傾向を示してきた。例えば、世界経済フォーラムは、国をまたぐ大規模な比較において、1人当たりGDPとGCIには強い相関があると指摘している。
私たちの分析でも、両指数を2014年から2016年までの3年間の平均とし、指数モデルを用いると、146カ国におけるGCIスコアのばらつきの69%をGDPで説明できることが確認された。しかし同時に、前述したニュージーランドとクウェートの比較が示すように、1人当たりGDPがマクロレベルの競争力の複雑な全体像を必ずしも捉えるとは限らない。
さらに、他の複数の指標を調整した場合など、GDPや1人当たりGDPだけでは、非経済的要素を考慮した開発を包括的に説明できないことを示す研究が数多くあり、その数も増えている。経済成長が、平均的な市民の生活水準や機会の質の向上に必ず結びつくわけではないことが、次第に明らかになっている。GDPや経済指標は、社会、環境、個人に関わる開発上の課題をしばしば脇に置く。これは、国の競争力の社会的側面にも当てはまる可能性がある。
社会進歩指数(SPI)は、Social Progress Imperativeが開発した取り組みである。マイケル・ポーターを含む研究者や企業リーダーのグループによって設立された同組織は、経済指標では開発の真の広がりを捉えきれないという課題に対応するため、SPIを考案した。SPIは、栄養や基礎医療、情報通信へのアクセス、寛容さと包摂の度合い、個人の自由と選択の度合いなど、社会的・環境的要素のみを測定する。
この指数は、各国の実際の社会的・環境的成果を示す50の指標で構成されている。これはSPIの重要かつ独自の特徴である。SPIは、経済的な代理指標としてのみ意味を持つ定量的な投入を測るだけでなく、社会と経済の開発および実績が実際にもたらす成果を測定する。サブ指数は、社会開発という現象を概念化し近似する3つの基本カテゴリー、すなわち基礎的人間ニーズ、ウェルビーイングの基盤、機会に集約される。
したがってSPIは、従来のマクロ経済実績の分析よりも幅広く、意義があり、詳細な国内・国際比較指標となり、開発と進歩をより繊細かつ正確に捉えることを目指している。社会の実情のうち、しばしば隠れていたり考慮されなかったりする側面を明らかにし、実際の政策立案に大いに役立つ適切な情報を提供することが期待されている。
例えば、クウェートとニュージーランドの1人当たりGDPとGCI順位の不一致に戻ると、SPIは、前述のとおりクウェートの方が1人当たりの富は大幅に大きい一方、社会的進歩ではニュージーランドがクウェートをかなり上回ることを示している。2015年と2016年、クウェートはSPIで42位だったのに対し、ニュージーランドは世界有数の上位国で、2015年に10位、2016年に11位だった。
経済開発はクウェートの方が進んでいるが、SPIを見ると、それはSPIで測定される包摂的な社会的進歩には結びついていない。ニュージーランドは比較的貧しい国でありながら、経済成長の恩恵をより適切に分配し、投資することで、市民の社会状況と機会を改善してきたとみられる。このことは、先に見た両国の競争力の差や不一致を理解する手がかりとなる可能性がある。社会的進歩は、各国の競争力を左右する重要な要因であり、その基盤でもあるのかもしれない。
さらに大規模な国際比較を行った分析でも、社会進歩指数とGCIに強い関連があることが示された。それぞれのデータセットに基づき、GCIは3年間(2014/2015年から2016/2017年)の平均、SPIは4年間(2014~2017年)の平均を算出した。両指数について国別データが得られることを条件とした最終サンプルには122カ国が含まれた。データを最初に見ると、2つの変数の間には明確な正の関係が見られる(図1)。ただし、その傾向は直線的ではないようだ。国の社会的進歩が進むにつれて競争力はより速いペースで高まる傾向があり、何らかの指数関数的成長を示唆している。

SPIの平均値をlog10GCIに対してプロットすると、非常に強い正の線形相関が見られる(図2)。log10GCIは、GCIの値を10を底とする対数に変換して算出する。対数を用いる理由は単純だ。まずデータ(GCIとSPI)の図を作成したところ、非線形(指数関数的)なパターンが見られたため、関係を線形化する目的で対数変換を適用した。その結果は単純な線形回帰とは異なる形で解釈される。つまり、SPIが1ポイント上昇すると、平均してGCIが0.43%上昇すると言える。

データの線形回帰分析でも、観察された相関が統計的に有意であり、SPIの係数が99.999%の信頼水準で有意であることが確認された。さらに、同じ期間の同じ国々についてGDPの平均値も調整した第2のモデルでは、経済実績を考慮してもSPIが引き続き非常に有意(信頼水準99.999%)であり、モデルがGCIの分散の78%超を説明することが確認された。
GDPを調整せず、所得水準が同じ国々の中でSPIとGCIの相関も分析した。世界銀行の標準的な所得別国分類を用いたが、中所得国グループについては、下位中所得と上位中所得を区別せず、すべての国をまとめた。また、主に右端の領域に位置するOECD加盟国で構成されるグループも追加で検討した(図3)。

パターンはそれほど明確ではないものの、正の相関は依然としてかなり強い。先進国では、社会的進歩が進むにつれて競争力も高まる傾向が見られる。以下はグループ別分析の結果である(図4、5、6)。



見て取れるように、国を所得グループに分けると関係は弱まる(SPIが説明するGCIのばらつきは42%から49%)。これはサンプル数の減少による可能性もある(低所得国は17カ国、高所得国は38カ国、中所得国は67カ国)。それでも相関は十分に強く、有意である。このことは、所得水準の平均が同程度でも、社会的進歩の水準が高い国ほど競争力が高い傾向にあることを示唆している。SPIとGCIには意味のある関連があるという当初の仮説を、さらに裏付ける妥当な根拠となる。
全体として最も重要なのは、当初の2つのモデルのいずれでも、SPIとGCIの間に明確で強い相関が確認されたことだ。より大きなサンプルでは、SPIがGCIの変動の75%超を説明する。これらの結果は重要である。関係に因果性があると仮定し、相関の指数関数的な性質を考慮すると、社会的進歩の水準が比較的小幅に上昇するだけでも、国の競争力が相対的に大きく高まる可能性が示唆される。
この分析にはさらなる検証が必要であり、より詳細な追加調査によってSPIの役割について一層優れた知見が得られるだろう。しかし、現時点の証拠は、社会的進歩や社会開発の要因が、競争力、ひいては国とその国民の繁栄を高めるうえで中心的な役割を果たすことを示唆していると考える。この観点からは、医療、教育、環境などの課題への投資は、政治的判断の結果にとどまらず、全体的な経済成長や、国が世界規模で得る競争優位にも関わるものとなる。
したがって、健全な社会政策は、国の実績を左右する要素として、特別な注意を要する。SPIは、各社会の現状や改善が必要な社会的要素を理解するうえで重要な役割を担い得る。SPIが示す社会開発の繊細な全体像は、政策担当者にとって有効な手段となり得る。現実の社会課題に対応する政策を、より精密かつ効率的に立案でき、それが最終的には国の競争力や国民の機会拡大に影響する可能性があるためだ。SPIは、ハイレベルで状況を初期分析する実用的なツールとなるかもしれない。SPIをさらに発展させ、堅牢性と対象範囲を高め、さまざまな政策決定レベルで指数への理解を深めることは、競争力、ひいては開発全般を理解し促進するための有効な戦略となるだろう。
注:
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