次世代モビリティを構築するために各国が投資できる3つの方法

A commuter with a dog stands on a Berlin transport company BVG subway platform at Alexanderplatz station during a nationwide strike called by the German trade union Verdi over a wage dispute, in Berlin, Germany, March 27, 2023. REUTERS/Annegret Hilse REFILE - QUALITY REPEAT TPX IMAGES OF THE DAY mobility
How can advanced nations overcome political, financial and infrastructure challenges to improve mobility?Image: REUTERS/Annegret Hilse
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  • 排出量の削減とモビリティの向上に必要な新たなインフラプロジェクトは、費用がかかり、実施にあたって政治的な課題も伴います。

  • 建物から水道管に至る既存の構造物が、新たなプロジェクトに利用できる空間を狭める一方、デジタル技術は需要を変化させてきました。

  • しかし、電化、資産の共有、政府間の連携、モビリティ分野のデジタルイノベーションを通じて、新たなインフラや既存インフラの改善は可能です。

理想的な世界であれば、先進国は人々であふれる都市でモビリティを向上させ、貨物輸送を迅速化し、温室効果ガス排出を削減するため、大規模な新規インフラプロジェクトに迅速に着手するでしょう。

しかし近年、高速鉄道や高速道路網などの巨大プロジェクトは、実施が格段に難しくなっています。民主主義国家では、費用がかさみ数十年に及ぶプロジェクトを実行するための合意形成が、政治的にますます困難になっています。

さらに、建物から水道管に至る既存の構造物が、新たなプロジェクトに利用できる空間を狭めています。同時に、デジタル技術は需要を細分化し、低価格の移動手段へのアクセスを提供し、共有サービスを調整し、旅行者の好みに基づいて移動区間ごとの手段を提案することで大量輸送の選択肢を案内し、特定のサービスに依存する消費者や旅行者を減らしています。

今後数十年のモビリティ目標を達成するには、企業と政府のリーダーが、多岐にわたる関係者やサービスを調整する必要があります。世界のモビリティには2040年までに2兆5,000億ドルの投資が必要ですこれは2017年の水準の2倍です。投資の構成はすでに変化しており、その大部分は、低価格の高速鉄道や自動車の充電設備など、デジタル技術で刷新された従来型および新たなモビリティサービスの組み合わせに向かうとみられます。これは、オリバー・ワイマン・フォーラムによる最近の調査と、世界の業界幹部や専門家30人へのインタビューに基づくものです。

モビリティ分野の投資構成はすでに変化しているImage: オリバー・ワイマン

モビリティに最大限の効果をもたらすには、大手既存企業と増加するモビリティ系スタートアップが、インフラ管理者、運営事業者、政府、車両メーカー、デジタル技術の提供者と連携しなければなりません。将来、成功するモビリティモデルには、次の3つの共通要素があります。

1. 電化と資産の共有

モビリティは膨大な資源を消費し、気候変動に大きく寄与しています。こうした負荷を減らすことは、非常に大きな課題です。輸送部門は世界の温室効果ガス排出量のおよそ5分の1を占めます。エネルギー部門に次いで2番目に大きな排出源です。

自動車の電動化は急速に進んでいます。さまざまなスクーターや自転車を含むマイクロモビリティは、ほぼすべてが電動または人力であり、鉄道輸送の大部分も同様です。

自動車、飛行機、列車:輸送に伴うCO2排出量はどこから生じるのか?Image: Our World in Data

航空輸送は事情が異なり、持続可能な航空燃料(SAF)の商用化にはまだ時間がかかります。この隔たりにより、他の交通手段への移行が進む可能性があります。たとえばフランスは、列車で2.5時間以内に移動できる国内線を禁止しました。一部の地域では炭素排出規制が導入され、複数の市場で航空輸送が鉄道に対して持つ価格面の優位性が損なわれる可能性もあります。

モビリティは、もう一つの限られた資源である空間も必要とします。都市の成長に伴い、より多くの人や貨物を運ぶ必要がありますが、線路や道路を継続的に拡張する余地は十分にありません。さらに、歩行者や自転車などのアクティブモビリティのために、より広い空間を求める声も高まっています。既存の路線や車両で、より多くの人や貨物を運び、さまざまなサービスに対応しなければなりません。

その方法の一つが、資産の共有を拡大することです。多くの鉄道事業者はすでに線路を共同利用しています。特に欧州連合では、インフラ事業者と鉄道運行事業者が分かれています。道路車両の共同利用も広がっています。一般的な個人所有の自動車は、時間の約95%は使われていません(都市に路上駐車が多い理由の一つです)。配車サービスやカーシェアリングを利用すれば、より少ない車両で自動車による移動が可能になり、都市空間を生み出せます。前者はすでに広く定着しており、相乗りや専用車両群からの借り受けなど、ほかのサービスも若者や都市居住者の間でますます魅力を増しています。空いたスペースは、自転車などのアクティブモビリティ、路面電車の線路、バス専用レーンといった別の用途に活用できます。

2. デジタル技術を活用したモビリティサービス

かつて旅行者の行動は、利用可能な選択肢に左右されていました。その選択肢は、多くの場合、自動車か限られた大量輸送機関だけでした。今日では、最終顧客が第一に考えられています。デジタル分野のイノベーターがバリューチェーンを逆転させ、アプリを使ったサービスにより、顧客はかつて旅行代理店が行っていたように、路線、サービス運営事業者、交通手段を選び、旅程を組み立てられます。

最近のイノベーションがもたらしたもう一つの成果は、スマートパーキング、バッテリー充電、車両共有など、デジタル技術を活用した新たなモビリティサービスの大幅な成長見通しです。こうしたサービスのうち13種類を選んだ調査では、今世紀の現在の10年間に年平均約10%近く成長し、2030年には6,600億ドルに達すると予測されています。これは、オリバー・ワイマン・フォーラムとカリフォルニア大学バークレー校交通研究所(ITS)による調査に基づくものです。モビリティ部門全体の成長率は約5%と見込まれています。

世界で最も公共交通機関が充実している都市トップ10
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従来型の交通手段も、デジタル技術を通じてイノベーションを進めています。2016年、フランス国鉄(SNCF)の看板サービスであるTGV高速鉄道が低価格航空便やバスの圧力を受けるなか、同社は低価格かつ高速なブランド「Ouigo」(「さあ、行こう」の意)を立ち上げ、成功を収めました。

予約と発券はオンライン限定となり、窓口、コールセンター、旅行代理店が不要になりました。乗車券の販売コストは10ユーロ超から4ユーロ未満に下がりました。列車部品のデジタル監視により予知保全が可能となり、コストが削減され、車両の効率的な活用が大きく進みました。

3. 産業界と政府の連携によるインフラ整備

ソフトウェアに加え、新たなサービスやデジタル化されたサービスには、車両の充電・駐車施設が必要です。鉄道やバスにつながる複数交通機関の乗り継ぎ地点に設けるのが望ましいでしょう。大量輸送機関には、バス専用レーンや路面電車の線路をさらに整備する必要があります。将来的には誘導充電システムを組み込む可能性もあります。また、多くのアジアの先進都市ですでに見られるように、オフィスや住宅の高層ビルとの一体化も進むでしょう。高速道路では、スマートセンサーによって車両自動化の導入を早められる可能性があります。

しかし、次世代モビリティに対応した都市づくりには、どの交通手段を優先するかの決定が欠かせません。公共交通にどれほどの予算を投じるべきでしょうか。自動車用の空間を自転車やマイクロモビリティに割り当て直すべきでしょうか。そして将来、ドローンや空飛ぶ電動タクシーが都市の空を縦横に飛ぶことを認めるのでしょうか。

交通手段別のモビリティ利用比率の変化Image: オリバー・ワイマン

成功するには、サービス運営事業者とインフラ建設事業者が政府と連携しなければ、障壁に直面するおそれがあります。たとえば電動キックボードは、資源消費の少ない便利な移動手段に見えますが、適切に管理されなければ、自由に乗り捨てられる車両群が歩道を妨げる可能性があります。パリでは4月の住民投票で、投票者の大多数がレンタル電動キックボードの禁止を求めました。

モビリティは常に、単なる技術的課題ではなく、きわめて政治的な課題でもあります。しかし、電化、資産の共有、政府間の連携、モビリティ分野のデジタルイノベーションを通じて、新たなインフラや既存インフラの改善は可能です。

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