都市は地球の未来を形づくっている。人々が環境問題に向き合い、持続可能な開発の課題に取り組む場でもある。国連の持続可能な開発のための2030アジェンダ(貧困をなくし、地球を守り、公平な経済成長を促進するための世界共通のロードマップ)において、目標11は、「包摂的で、安全かつ強靱(レジリエント)で、持続可能な都市と人間居住を実現する」ことを掲げている。
では、包摂的な都市とはどのような姿だろうか。都市部が持続可能な形で管理されているかを、どう測ればよいのだろうか。また、誰一人取り残さず、都市住民のニーズに応える気候変動対策を確実に実施するにはどうすればよいのだろうか。この目標が極めて重要であるにもかかわらず、都市の進捗を追跡するデータは乏しい。
この種のものとして初となる私たちの研究ツール、都市環境・社会的包摂指数(UESI)は、このデータの不足を補うことを目指している。高解像度の大規模データと国勢調査データを近隣地域単位で活用し、30を超える都市について、環境面と社会面の公平性が交わる領域での状況を明らかにする。
これまでにない詳細さにより、同じ都市に暮らす住民でも、都市環境を大きく異なる形で経験していることが明らかになる。これは、政策決定者が今後の政策介入の対象をより適切に定める助けとなる。たとえば下の画像では、ロサンゼルスで平均所得が最も高い近隣地域は、都市ヒートアイランド現象の強度が最も低い。一方、低所得地域では都市の暑熱がより深刻であり、それによって、すでに脆弱な人々にさらなる出費や生産性の阻害、公衆衛生上のリスクが生じる可能性がある。
世界各地の都市で、この指数は、貧困地域が環境負荷の不釣り合いに大きな割合を引き受けていることを示している。環境面で全体的に優れた都市でさえ、公共交通機関や緑地などの恩恵と、大気汚染や都市の暑熱などの負荷が不均等に分配されていることが多い。
下の図は、環境パフォーマンスと社会的包摂という2つの側面から、各都市の結果をまとめたものだ。ほとんどの都市が図の左側に位置しており、環境パフォーマンスの良し悪しを問わず、貧困層が環境上の課題による不釣り合いに大きな負担を負っていることを示している。
つまり、不平等は依然として幅広い都市に共通する課題である。メルボルン、バンクーバー、コペンハーゲン、ボストンのように環境面で優れた都市でさえ、環境対策に公平性を組み込む必要がある。メキシコシティやサンパウロなどでは、高所得層の住民が都市の利便施設に近い都心部に集まることで、とりわけ高い水準の大気汚染や都市の暑熱にさらされる可能性がある。
ただし、右下の象限に位置する多くの都市では、高所得地域が環境パフォーマンスの低さによる不釣り合いに大きな負担を受けているものの、低所得地域も依然として深刻な環境上の危険に直面している点に留意が必要だ。たとえば北京では、大気汚染への曝露は所得水準による差が比較的小さいが、それでもすべての住民、特に汚染への対処に使える資源が少ない可能性のある低所得層に、深刻なリスクをもたらしている。
環境パフォーマンスは都市の内外で異なるが、いくつかの重要な傾向が際立っている。UESIの対象都市に住む人々の実に96%が、微小粒子状物質(PM2.5)への安全な曝露に関する世界保健機関(WHO)の指針値を超える空気を吸っている。PM2.5は、人の健康にとって最も危険な都市環境上の脅威の一つだ。この結果は、世界的に極めて高い大気汚染曝露を追跡した他の 最近の 研究とも一致する。UESIが対象とする30を超える都市のうち、近隣地域のPM2.5濃度がこの基準を下回っているのは、アムステルダム、アトランタ、バルセロナ、ボストン、コペンハーゲン、メルボルン、モントリオール、ニューヨーク、テルアビブ、バンクーバーのみである。
都市は気候変動への対応にも苦慮している。交渉担当者が12月にポーランドでパリ協定の実施方法の詳細を詰める会合を開くことを考えると、これは特に重要な懸念だ。地球温暖化は水ストレスを悪化させており、UESI対象都市の3分の1以上はすでにその影響を受けている。過去15年間に都市が失った樹木被覆面積は、バルセロナ市全域の面積に相当する。当然ながら、樹木被覆の減少が最も大きい地域では、都市ヒートアイランド現象の強度も増している。大半の都市は緩和、適応、モニタリングの取り組みに関する政策を策定しているが、テルアビブ、ニューデリー、カサブランカ、バンガロールなど一部の都市には、都市規模の気候計画がまったくない。
UESIは、透明性と詳細さを新たな水準に引き上げることで、持続可能で包摂的な成長の目標に対し、都市がどこまで達成できているか、またできていないかを把握するための測定可能な基準を提供する。このツールは、都市住民が環境負荷の影響を理解し、持続可能なウェルビーイングに関する権利を守る力にもなる。
廃棄物管理やリサイクルのデータがないなど、依然として不足はあるものの、情報技術の革新によって根強い課題に新たな光を当てられるようになっていることを生かし、このツールの対象都市とデータが拡充されることを期待している。




