過去10年間、デジタル技術は産業全体を変革し、第4次産業革命をもたらしました。Facebook、Spotify、Netflixなどの新興企業によるソーシャルメディアプラットフォームやオンデマンドのストリーミングサービスは、メディアとエンターテインメントを一変させました。AmazonやAlibabaのような電子商取引大手は、実店舗の小売業者に大きな変化をもたらしました。デジタルを基盤とするモビリティ企業は、従来型の自動車メーカーに挑んでいます。こうした新技術は、より優れた娯楽、買い物、交通手段を求める消費者の需要を満たしただけではありません。これらの業界をはじめとする分野では、イノベーションによって企業の生産性と持続可能性が向上し、成功に必要なスキルや能力も再構成されました。
しかし同じ期間、建設業界は過去50年間と変わらず、手作業、機械技術、既存の事業運営モデルへの依存度が高いまま事業を続けてきました。その結果、生産性は停滞しています。
いま、デジタル技術が徐々に建設業界に浸透し、インフラ、不動産などの建造資産の設計、建設、運用、保守のあり方を変えています。こうした技術には、ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)、プレハブ工法、無線センサー、自動化・ロボット機器、3Dプリンティングなどがあります。建設業界は世界のGDPの6%を占め、世界で1億人を超える人々を雇用しているため、経済的・社会的な影響は大きなものになる可能性があります。ボストン・コンサルティング・グループによると、今後10年以内に、全面的なデジタル化によって業界は推定12~20%、金額にして1兆~1.7兆ドルを節約できる可能性があります。ボストン・コンサルティング・グループによると。

新技術と並行して、建設業界の関係者に長年続く慣行の見直しを促す世界的なメガトレンドもいくつかあります。影響が特に大きいのは、急速な都市化、気候変動、資源不足、そして人材不足の拡大です。なかでも人材不足は差し迫った課題です。すでに現在、米国の建設請負業者の3分の2以上が、重要な職種の人材確保に苦労しており、英国の建設部門では、採用が難しい求人が過去5年間で2倍以上に増えています。他の国々でも、業界のデジタル変革が目前に迫り、新たなスキルが必要になることから、人材不足はさらに深刻化すると予想されています。

混乱の中で成長するための6つの重要な方法
建設業界のバリューチェーンに関わる建築家、設計者、エンジニア、建材サプライヤー、請負業者、運用・保守会社は、新技術やトレンドが引き起こし得る変化の中で成長できるよう、戦略的に備え、適切な行動を取る必要があります。しかし、業界に起こり得る多種多様な変化を踏まえると、将来を予測するのは困難です。そこで世界経済フォーラムは、ボストン・コンサルティング・グループおよび建設業界を代表する30社以上とともに、幅広い未来の可能性に備えるため、3つの将来シナリオを策定しました。
• 仮想世界での建設。人工知能(AI)、ソフトウェアシステム、自律型建設機器が、エンジニアリングおよび建設のバリューチェーン全体で、手作業の大部分を担うようになります。
• 工場が世界を動かす。建設作業の大部分が工場に移り、業界ではリーン原則と先進的な製造工程を用いてモジュールをプレハブ化し、後に現場で組み立てます。
• グリーンへの再始動。建設業界は、厳しい環境規制に対応するため、持続可能な技術と新素材を活用します。

建設業界がどの道を進むのかは依然として明らかではなく、将来には3つのシナリオすべての要素が含まれる可能性が高いでしょう。いずれの未来においても、現在のビジネスモデル、戦略、能力では不十分です。このことは、建設業界のバリューチェーンに関わる各社が戦略的に備える必要性を浮き彫りにしています。
提案されている施策の多くは特定のシナリオに限られますが、どのような未来にも有効な6つの重要な施策があります。
• 新たな人材を惹きつけ、必要なスキルを育成する — どの将来シナリオでも、現在の労働力とは大きく異なるスキルを持つ人材が必要となる一方、適切なスキル向上の仕組みはほとんど整っていないためです。
• 建設業界のバリューチェーン全体で連携・協働する — 建設業界のバリューチェーンは分断され、細分化が進んでいるため、どの将来シナリオにも不可欠な、円滑なデータの流れと統合システムの実現が妨げられているためです。
• 先進技術を大規模に導入する — 建設業界は新技術の導入が遅く、依然として手作業や機械技術に大きく依存しており、その結果、生産性が低いままだからです。
その他の重要な施策として、プロセス全体でデータとデジタルモデルの活用を最大化すること、既存の製品ポートフォリオを見直して新たな事業機会を取り込むこと、変革マネジメントと適応力を高めることが挙げられます。
建設業界の意思決定者は、将来シナリオで示された変化を警鐘として受け止め、特定された重要施策を企業が備え、繁栄する未来を形作るための基盤として活用する必要があります。その未来において、企業は経済成長、社会の進歩、環境への責任の促進という役割を果たすことができます。

