データが都市の安全性を高める可能性

Belgian soldiers scuffle with police officers during a protest against planned pension reforms in central Brussels, Belgium, November 15, 2016. REUTERS/Yves Herman - D1BEUMZGXLAB
Political demonstrations have led to violent disorder and social unrest in cities across the world.Image: REUTERS/Yves Herman
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欧州では、急速に成長する都市や都市圏が、政治的または宗教的な目的の達成を目指す過激派や、縄張りを支配する犯罪組織による都市暴力に、ますます直面している。都市が国内外のガバナンスにおいてより大きな役割を担い始める一方、政治デモが暴力的な騒乱や社会不安につながっている。

経済平和研究所が発表した2017年版「世界平和度指数」は、2008~2017年に暴力犯罪が全般的に減少したと報告した。しかし、暴力犯罪に対する認識を測る指数は、同じ期間に市民の懸念が高まったことを示した。

都市がより危険になっているという認識は、現実と一致しない可能性があるが、注目度の高い事件にメディアの関心が集まることで生じているのかもしれない。あるいは、犯罪統計が都市暴力の実態を正確に示していない可能性もある。都市レベルで暴力のパターンを包括的に理解するための明確な方法はない。市や自治体の担当者は、市民の認識が正確かどうかを自信を持って判断できないこともある。

競争力の強化

欧州の都市は経済の原動力であり、人々、資金、資源の国際的な流れを促す重要な役割を担っている。犯罪による暴力、過激派による暴力、社会的暴力が減れば、競争力が高まり、住民の生活の質も向上するだろう。

情報の活用を改善することで、都市生活の多くの分野で変化が進んでいる。都市は、データに基づく取り組みを通じて、交通渋滞の緩和、サービス提供の改善、インフラ投資や住宅建設の優先順位付けに取り組み、事後対応型から事前対応型の政策へと移行している。

欧州の都市が経済的・社会的な可能性を最大限に発揮するための先手を打つ取り組みとして、SeCURE Citiesイニシアチブは、同じ手法を都市暴力の削減にも適用する。SeCURE Citiesイニシアチブの目的は、市や自治体の当局者をはじめ、その他の関係者が自らの都市における暴力の実態を包括的に把握できるよう、ツールを提供することだ。

包括的な知識は、実践的かつ地域に根ざした取り組みを支える。SeCURE Citiesイニシアチブは、暴力の影響を受ける人々のために、マルチステークホルダー協働の貴重な情報源およびプラットフォームとなるだろう。

さらに、こうした知識を基盤に、都市は急速に台頭する都市ネットワークを活用し、既存の問題の解決を支援し、新たな問題が生じた場合に迅速に対応できる最適なパートナーを見つけられる。

Image: 世界平和度指数、2017年

暴力の実態を包括的に把握する

都市暴力に関する既存の情報が組み合わされ、特定の都市の全体像を包括的かつ総合的に示すことはほとんどない。

都市暴力は、主に犯罪統計を使って測定されている。犯罪統計が非常に重要な指標であることは明らかだが、実態を網羅しているとは言い難い。通報されない事件、起訴に至らない捜査、有罪判決に至らない起訴は、いずれも把握されない可能性のある都市暴力の例だ。

都市暴力の分類も、包括的な理解を妨げる可能性がある。実質的に同一の暴力事件が、暴力犯罪、加重されたヘイトクライム、またはテロ攻撃として扱われる場合がある。事件の分類によって、対応を担う者、収集・保管される情報の種類、その情報が国内外のパートナーと共有されるかどうかが決まる。

分類の不統一は、欧州レベルで暴力のパターンを特定・分析することを難しくしている。EUROPOLは、最新の欧州連合テロ情勢・傾向報告書で、共通の定義がないことによって生じる問題を指摘している。

犯罪統計以外に、都市が暴力の実態を包括的に把握するうえで役立つ情報源には、どのようなものがあるだろうか。

まず考えられるのは法執行機関だ。警察、刑務所、保護観察機関には、都市暴力に関する膨大な知見が蓄積されているが、それぞれの組織内にとどまっている。

都市では、警察が継続的に配置できない地域で目に見える警備体制を確保するため、民間警備会社を雇うことが増えている。企業も、自社の資産を守り、従業員の安全性を高めるため、民間警備会社を幅広く利用している。

慈善団体、宗教コミュニティ、青少年団体、スポーツクラブなど、都市暴力の事件について情報を得ている地域団体はさまざまある。そうした知識は、暴力歴のある人が刑事司法制度の対象となる前に「離脱の道筋」を提供する取り組みなど、体系的なプログラムを通じて得られる場合もある。一方、偶発的で非体系的に得られることもある。

学校、教育委員会、社会福祉機関は、暴力事件に繰り返し関与したり、暴力的な行動を常習的に示したりする個人や家族に関する情報を保有している。

医療制度には、都市暴力に関する大量のデータが蓄積されている。暴力による負傷で受診した人々の情報に加え、問題を抱える家族が問題に対処、または克服できるよう支援する、対象を絞ったカウンセリングや心理的支援サービスも、手段として広く受け入れられるようになっている。

暴力事件の件数や深刻さが実際に、あるいは認識として増えていることを懸念する市民にとって、政党や選挙で選ばれた代表者への質問や苦情の申し立ては、自然な手段となり得る。したがって、地域レベルでは、政党も都市暴力に関する知識を持つ「目と耳」だ。

次のステップ

都市暴力に関する多くの情報が、市民生活の改善に活用されていないと認めるなら、状況を変えるにはどうすればよいだろうか。思考実験として、10年後、市や自治体で働く次世代の職員は、都市暴力をより効果的に減らすために何ができるだろうか。

上記の公的・民間機関のあらゆる職員が、日々の業務を行いながら、合意された様式に従ってリアルタイムでデータを入力するタブレット型のインターフェースを使う場面を想像してほしい。完全性を確保し、市民のプライバシーを守るために審査されたデータは、クラウド上に保存されたデータ管理システムに自動的に入力される。検索システムによって広範なネットワーク上でデータを利用できるようになり、各利用者は必要に応じてデータを集約したり、細分化したりできる。

このようなシステムでどのようなデータが利用可能になるだろうか。種類は多岐にわたり、その範囲を制限するものはおそらく人間の想像力だけだ。

⦁ 公的機関と民間組織がそれぞれ所有・管理するカメラは、顔認識や車両データを使って、リアルタイムの追跡を可能にできる。

⦁ モノのインターネット(IoT)により、街灯や公共交通機関などに組み込まれたセンサーから得られる情報が増大する。

⦁ ヘイトクライムや過激派による暴力の扇動に関するオンライン上の事例を特定するため、ソーシャルメディアをスキャンするツールは、ますます高度化している。

⦁ ほぼすべての市民がスマートフォンを持つ社会では、暴力事件を記録した動画、画像、音声ファイルがオンライン上でいっそう豊富に蓄積される。

⦁ 教育、医療、社会福祉サービスの匿名化データから、個人や家族に関する適切に匿名化された情報を得られる可能性がある。

⦁ 警察や保護観察機関による面談の匿名化データから、犯罪による暴力に関する情報を得られる可能性がある。

こうした情報、そしてさらに多くの情報をダッシュボード上で連携させ、さまざまな方法で分析できるようにするうえで、技術的な障壁はない。

この種のアプローチは、都市生活のほかの分野を可視化するために、すでに使われ始めている。しかし、「サイロ化」の影響を示す事例もある。情報技術の進歩が、市や自治体の行政の日常業務に行き渡っていないと指摘されている。現在の体制では、データを豊富に活用するアプリケーションの開発が難しい。ある部署が作成したデータは、ほかの部署の目に触れないことが多く、そのデータを大きな効果のある目的に活用できる部署も、それに気づかないためだ。

サイロ化を解消する最善の方法は、政治的リーダーシップを発揮することだ。データの統合的な生成・管理を妨げる要因は軽視できないが、必要な政治的リーダーシップがあれば、既存の法的・行政的な境界の範囲内で何が可能かを検討できる。

リーダーシップがなければ、官僚組織の中間層で部門横断、または機関間の協力が実現する可能性は低い。積極的に関与する政治指導者は、都市や自治体における暴力の実態を包括的に把握するなど、共通の目標に焦点を当てたマルチステークホルダーの取り組みを義務付ける必要がある。その方針は、理想的には地方選挙で議論され、承認されるべきだ。

次の段階として、共通の定義に基づき、共通の様式を用いるデータ生成・管理システムの汎用設計を、1つ以上の特定の都市で試験できる。試験都市で検証された設計は、関心を持つ都市や自治体のグループ間で、より幅広い議論を行うための基盤になり得る。

SeCURE Citiesイニシアチブは、欧州安全保障協力機構など、欧州全域に関わる関連組織との連携を検討するとともに、Strong Cities Network、Nordic Safe City Network、European Forum for Urban Security、100 Resilient Cities Initiative、Global Cities Forumなど、既存のネットワークの参加を促すこともできる。

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