米国では、歩きやすさとマイクロモビリティの人気が高まっている。
「歩きやすく、多様な用途が混在する都市づくり」という考え方は、既存都市の改修を導いているが、ゼロから開発する場所の設計にも有効な枠組みとなり得る。
ユタ州のこの地域が示すように、車への依存度が低い地域をつくるうえで最大の課題は、自動車中心の都市計画が50年にわたり続いてきたことを乗り越えることだ。
「ザ・ポイント」と呼ばれるこの地域では、複数の移動手段をオープンスペースのネットワークと結び付け、住民が自宅や事業所だけでなく、自転車道や歩道にもアクセスできるようにする革新的な方法が見いだされた。
何十年もの間、自動車は米国人の暮らしの中心にあった。米国の都市や地域の計画に大きな影響を及ぼし、その結果、米国人のライフスタイルや移動手段の選択にも影響を与えてきた。しかし、歩きやすく車への依存度が低い地域の利点に気づく人が増えるなか、米国では新たな都市開発モデルが広がる機運が生まれている。
ソルトレイクシティ郊外では、多様な移動手段の提供を目指す米国の開発事業のモデルとなる新たな地域、ザ・ポイントの整備が進んでいる。ザ・ポイントは、歩きやすさと公共交通を重視した都市づくりの原則に基づいて建設されており、住民が徒歩15分圏内で日常の用事をすべて済ませられる場所となる予定だ。
この複合用途開発の用地は、ユタ州最大の2都市、ソルトレイクシティとプロボの間に位置する。ここには州内最大の刑務所があった。2018年に刑務所が閉鎖されると、州有地であるザ・ポイントの600エーカーが再開発に利用できるようになった。州はこのプロセスを導く土地管理機関を設立し、SOMに開発の基本計画策定を依頼した。
ザ・ポイントは、ゼロから歩きやすい地域をつくるまたとない機会だと、私たちのチームにはすぐに分かった。幅は約1.25マイルに及ぶが、敷地全体が中心部から徒歩15分以内で行ける。歴史ある礼拝堂を除いて土地がすべて更地になるため、設計チームは白紙の状態から取り組むことができた。
私たちはユタ州住民への調査を設計の着想源とした。住民は、公園やオープンスペースへ直接アクセスできる自転車・歩行者インフラを優先する地域を望んでいると明確に示した。また、専門家主導の市民参加プロセスにも加わり、ザ・ポイントの設計を形づくる共通のテーマが浮かび上がった。なかでも、ユタ州特有の生態系をたたえ、この景観に誰もが簡単にアクセスできるようにしたいという願いが顕著だった。
人間の尺度を重視するこのアプローチは、世界各地の都市計画を導いている。ザ・ポイントの計画は、複数の移動手段に対応する現代の地域や都市を設計する際に何を考慮すべきかを明らかにしている。
地域の優先事項と都市設計を調和させる
複数の移動手段を可能にするモビリティが、私たちの設計の中心テーマであり出発点だった。プロジェクトの規模と範囲に応じて、歩行者、公共交通、自転車のインフラを優先し、配置することを目指した。土地利用の密度と構成も設計構想の鍵であり、公園や公共空間の規模と形状も同様だった。最後に、計画チームは、地理的な背景、気候、地域の希望や目標に応える建築・公共空間のアイデンティティーを実現するための設計指針を作成した。

ザ・ポイントの歩きやすい都市づくりの構想は、旧来の都市に見られる街区構成や土地利用のパターンに通じる。自動車が主な移動手段となる以前に用いられていたこの都市パターンは、非動力の移動手段と動力を使う移動手段の双方を等しく重視する道路網を特徴とする。
ザ・ポイントは中程度の密度で設計され、建物の階数は平均4~6階となる。米国最大の街区を持つソルトレイクシティとは対照的に、私たちは伝統的な都市グリッドを歩きやすい形にした。ザ・ポイントの小規模な街区は、移動のしやすさを高める緑道や帯状のオープンスペースと織り交ざっている。
従来型の道路基準
低密度地域で歩きやすい都市づくりを進めるうえで最大の課題は、たとえ市民の支持があっても、従来の郊外型道路設計基準を乗り越えることだ。過去半世紀にわたって整備されてきたこれらの基準は、自動車の効率的な移動を優先するため、自転車や歩行者の通行と衝突を生む。
交通エンジニアとの緊密な協力により、設計チームは車線幅を狭めることに合意を得た。これにより歩行者の横断時間が短くなる。また、植栽帯を設けることで、歩行者が安全に待避できる場所をつくることにも合意した。

チームは道路網全体も調整し、右左折車線の追加が必要となる一部交差点の交通負荷を軽減した。さらに、道路網を都市環境の交通状況に近づける設計とすることで、全体の走行速度を抑え、自転車や歩行者にとってより安全な環境をつくれるとの合意に至った。
駐車場については、駐車需要と歩きやすい地域をつくる目標とのバランスを検討した。プロジェクト全体の設計ビジョンを保ちながら、市場の需要に基づいて見込まれる駐車場の必要量を、効率的かつコンパクトに確保することにした。
解決策としては、建築的な工夫で視界から遮られた地上駐車場、建物と一体化した駐車場、地下駐車場などが考えられる。このモデルを踏襲する今後の開発では、駐車場の必要量を各開発事業者が適切に判断し、駐車場の設置要件そのものをなくすこともできる。駐車場の最低設置台数義務を撤廃する考え方は、多くの米国の都市で支持を広げている。
歩きやすい都市づくりのモデル
「歩きやすい都市づくり」の実施には、とりわけ米国の低密度地域でいくつかの障害がある。しかし、市や州の機関、都市設計家、エンジニアが協力すれば、こうした課題を解決できる。ザ・ポイントが示すように、地域住民の熱意ある参加、明確な設計ビジョン、そして志を同じくする専門家の支援があれば、当初は大きな障害に見えるものも乗り越えられる。
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米国では、地域規模の開発をゼロから行うことはまれだが、ザ・ポイントの設計から得られた教訓は、大規模な都市再開発の取り組みに広く応用できる。そして、より歩きやすい都市地域を増やすべき理由は明らかだ。車に依存する郊外地域より経済生産性が高く、都市の運営コストも低い。その結果、公園、学校、手頃な価格の住宅に充てられる税収が増える。

