バイオリージョナル・デザインは、建築、景観、インフラを地域の素材、地元の文化、持続可能性と調和させます。
気候変動や世界的な混乱への対応として、生態地域を考慮した建築が広がりつつあります。
バイオリージョナル・デザインをニッチな実践から強固なエコシステムへと拡大することは、新たな市場を生み出すとともに、気候変動への対処にもつながります。
人類の歴史を振り返ると、人々が生息環境を築く唯一の方法が「バイオリージョナル・デザイン」だった時代は、それほど昔のことではありません。しかし、コンクリート、ガラス、鉄鋼などの工業材料のグローバル化が、職人技を生かした建築手法に取って代わりました。とりわけ、モダニズムが富と進歩の象徴となるにつれて、その傾向は強まりました。
今日、バイオリージョナル・デザインは、ニッチながら広がりを見せる計画・設計のアプローチです。建築、景観、インフラなど、人間の生息環境の開発を、地域の素材、文化に根差した用途、気候に適した戦略と調和させます。
伝統的なバイオリージョナル・デザインの実践は、必要に迫られて、あるいは職人技へのこだわりから、今も一部の地域で続いています。一方、より現代的な形のデザインも、炭素排出削減の解決策として、そして近年では世界の不安定化を受けて自立性を高める手段として、注目されるようになりました。
ほとんど失われかけたバイオリージョナル・デザインの技を拡大するには、逆説的ですが、伝統的な実践やイノベーションに関する世界的な知識交換と、地域での応用や政策を組み合わせる必要があります。
地域の素材と、活用可能な世界の知見を組み合わせる
大規模木造は、バイオリージョナル・デザインをどのように発展させ、拡大できるかを理解するうえで、いくつもの重要な教訓を示しています。
1990年代初頭、直交集成板(CLT)はオーストリアで発明されました。主な動機は、針葉樹材に付加価値をもたらすことでした。板を層状に重ねて接着し、強度と安定性に優れたパネルを作る工法です。
北米ではカナダが早期に導入し、欧州との知識共有や、政府出資のプロジェクトであるウッド・イノベーション・アンド・デザイン・センター(ブリティッシュコロンビア州)などが後押ししました。
続いて米国でも、ポートランドのフレームワーク・ビルディングや、ミネアポリスのT3などの主要プロジェクトが進み、大規模木造が中層、さらには高層の建物にも適用できることが示されました。
こうした先行プロジェクトを踏まえ、カナダの国家建築基準は2020年に、米国の国際建築基準は2021年に改定され、一定の条件下で、最大18階建ての大規模木造建築が認められました。
バイオリージョナル・デザインを前進させる3つの教訓
1. 世界的な知識共有が鍵となる。
バイオリージョナルな建築の実践は、世界的な知識交換に支えられています。とりわけ、気候条件や素材資源が似ている生態地域間の交換が重要です。例えば、大規模木造のエコシステムを構築するプロセスを欧州から北米へ移転するのは比較的容易です。生産方法も素材の性能も変わらないためです。
2. 地域での実践には強固な政策が必要となる。
一方、地域での実践には、建築の質と信頼性を確保するため、それぞれの地域に合わせた政策や建築基準が必要です。例えば、フレームワーク・ビルディングは2016年の認可取得に向けて、厳格な火災、爆風、耐震試験を受け、その結果が米国の他地域の建築基準に反映されました。まだ建設されていませんが、フレームワークは、プロジェクトの試作が認可への道筋を築く一例です。
3. 素材の多様性。
大規模木造は、最も商業化と工業化が進んだバイオリージョナル素材と言えるかもしれませんが、同様の動きが石材でも始まっています。大規模木造と同じく、これは国際的な知識移転を通じて進んでいます。伝統的な石積み技術の共有、実用性を確かめる地域での試行、さらなる発展を可能にする技術革新が組み合わさっています。
影響のより小さい建設方法を目指すなかで、このパターンは他のバイオ素材にも広がっていくでしょう。

職人技を再び生かす
ベルギーのレンガ造りの建物、特にゴシック様式の建物は、同国の建築遺産の重要な一部です。ブルージュではレンガ造りの建物が至るところにあり、「レンガの街」として知られています。
ベルギーでは、レンガは定着した建材であり、その生産体制も確立されています。しかし、レンガの製造工程では、コンクリートに匹敵するほど多くの内包炭素が排出されるという問題があります。
この問題に対処するため、ベルギーの素材研究者たちは低炭素レンガを開発しました。大量のエネルギーを要する窯焼きの代わりに、石灰系結合材を使って炭酸化と呼ばれる工程で「硬化」させます。レンガは空気中の二酸化炭素と反応して強度を増します。
小規模な試作品の生産から始まった取り組みは、今、大幅に拡大しています。ブリュッセルが地下鉄網の拡張に着手するなか、Metro3プロジェクトは新しい駅の建材として土ブロックに着目しました。掘削で出た建設廃棄物をレンガに変え、廃棄物を減らす狙いです。
新たに7駅を建設する需要に応えるため、画期的な素材技術を商業規模へと広げる新たな連携が生まれました。
こうした大規模なプロジェクトや、ヘント美術館の拡張が需要を喚起し、既存のレンガ製造業界との新たな関係を促しました。製造業界は工場の稼働時間を共有し、低炭素レンガの生産拡大を可能にしました。
経済と雇用の発展を促す原動力
世界初のカーボンポジティブな大学は、ルワンダ保全型農業研究所です。MASS Design Groupが創設した、3,400エーカーのキャンパスです。この非営利建築事務所は、バイオリージョナル・デザインを用いて社会インフラを築くにあたり、雇用と経済の発展を促すアプローチを先駆的に実践してきました。
キャンパス内の建物はすべて、石の基礎、土壁、木材など、低炭素素材を使って建設されました。プロジェクト予算7,500万ドルの90%が、キャンパスから500マイル以内で使われました。
MASSはプロジェクトの実施にあたり、労働者300人(うち女性16%)に持続可能な建設手法を訓練しました。
これは実験を行い、テラコッタや木材などの素材を扱う新たな技能について、地域市場を育てる機会となりました。
地域で調達した素材の使用に加えて、キャンパスでは在来種や湿地を含む生物多様性豊かな生態系が再生されています。このプロジェクトは、バイオリージョナルな持続可能建築の知識を基盤とする地域経済を生み出し、地元のバイオ素材と新たな技能を身につけた地域の労働者を生かす建築のあり方を見直すきっかけとなりました。

バイオフィリアの力
バイオリージョナル・デザインのアプローチに通底する明確なテーマは、バイオフィリアの力です。人間が生まれながらに持つ自然素材への親和性が、建築やデザインにおける生物形態的なパターンの活用を促してきました。
自然に引き寄せられる感覚は直感的に理解されていますが、近年の研究は、認知神経科学と環境心理学の知見から、建築環境が身体的、感情的なウェルビーイングに良くも悪くも大きな影響を及ぼしうることを示しています。
今という時代の要請に応えるため、自然素材を取り入れられるよう、規制、経済、枠組みを更新する技術的、社会的、文化的な意志を結集することが不可欠です。
社会生態学の教授で、バイオフィリア理論の先駆者であるスティーブン・R・ケラートは、著書『バースライト』でこう述べています。「私たちが進化してきた環境から離れ、疎外された状態で暮らすなら、真に健康で、満ち足り、充実した人生を送ることは決してできないでしょう。」

