COVID-19は、人間中心の持続可能なエコシステムの重要性を世界に認識させる機会となった。
多くの国では、インフラ計画が過去に収集されたデータセットに基づいており、都市が現実にどのように拡大しているかが明確に考慮されていない。
エコシステムへの損害を測定する仕組みがないため、規制機関は手がかりを失っている。
COVID-19のパンデミックを通じて、人間中心の持続可能なインフラを構築することが世界的に重要だと実感した。例えば、COVID-19患者の治療に必要な病院インフラが利用できないことで生じた問題がある。これは発展途上国だけでなく先進国でも同様で、「エコ・人間中心」の持続可能性指標を評価するリアルタイムのプロセスは存在しなかった。今こそ見直すべきことだ。
過去数十年、世界各国は自国への企業投資を呼び込む政策を策定してきた。環境面では、経済特区の設置やグリーンビルディング認証など、投資にさまざまな条件が課されてきた一方、投資地域の周辺に住む人々には、同じような配慮がなされないことが多い。
経済と環境をより効率的に両立させる
世界銀行の統計によると、インドは過去30年間に23%の成長を遂げ、前例のない発展を実現した。その背景には、技術革命、スキルを持つ人材の増加、そして新たに形成された都市で広がる経済機会がある。最低限のインフラを備えた都市に産業を確立する時間があまりにも短いと、需要と供給のバランスを取ることが難しくなる。
市当局や民間部門は高層ビルや交通インフラを整備してこの需要に応えてきた一方、水処理、雨水貯留施設、病院設備、大気の質、健康と安全など、ほかの施設や課題には目を向けない傾向があった。例えば、新しい産業が立ち上がると、その施設の周辺インフラには多数の中小企業が集まり、つながりが生まれることで、すぐに過負荷となる。

こうした産業の周辺で暮らす人々の生活の質にも、その影響が表れる。大気や水の質、必要な病院や交通インフラの利用可能性といった環境・設備がその例だ。その理由の一つは行政政策の実施が不徹底であることだが、重要なのは、そうした政策の基礎を定めるために使われたデータセットにも原因があることだ。
グレート・リセットの一環として世界経済をどう再建するかに大きな関心が集まる今、各国には経済と環境をより効率的に結びつける仕組みを開発する大きな機会がある。しかし、政策が実行されないことで生じる生物物理学的・生態学的な影響に起因する経済問題は、何度も繰り返されながら、ほとんど測定されていない。
データ主導型意思決定プラットフォーム
今必要なのは、都市・町の計画チームが、必要な設備、インフラの整備範囲、成長の限界を適切に定められるようにする技術プラットフォームだ。大都市は、すでに機能が逼迫し、人や新しい企業を受け入れる余地がないことを、どうすれば把握できるだろうか。毎時間新たな住民が到着する中で、必要なインフラがすべて整っていると、どうすれば分かるだろうか。行政に必要なツールを提供するリアルタイムのデータや情報がなければ、これらはすべて実現できない。
未来の都市には、さらなる成長への準備が整っているかを示すデータ主導型の意思決定プラットフォームが必要だ。現在、各国は住民情報をデジタル化し、デジタルIDを作成する取り組みを積極的に進めている。インドはその最前線に立ち、デジタル化の取り組みは多くの国際機関からベンチマークとして参照されている。例えば、国際航空運送協会(IATA)は、デジタルイニシアチブ「One ID」プログラムで、今日最大かつ最も成功したデジタルイニシアチブとされる高度なIDプログラム、アーダールを参考にしている。
しかし、人に関するデータだけで持続可能なエコシステムを築くのに十分だろうか。人間の身体の分析にはX線やMRIスキャンが用いられるが、生物物理学を軸とし、生態系と人間を中心に据えた枠組みには、地理空間技術が必要だ。この技術で都市をスキャンし、樹木、汚水、清浄水、地下水、大気の質、炭素排出、固形廃棄物、建物の外周、雨水貯留、地域住民向けの設備、合法・違法な占有など、さまざまな指標を調べることができる。
英国では、施設建設にあたってビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)の利用が義務化されている。これにより地方自治体は、建設前、建設中、建設後に建物が規制に適合していることを示す十分なデータを得られる。
データの増加を把握し、人手による介入を最小限に抑えながらデータを最新の状態に保つには、衛星画像センシング技術の活用が必要だ。これは、既存の不整合に関する情報を確認するだけでなく、特定区域をさらなる搾取から守るための基盤にもなる。
この空間スキャンは、環境の過剰な搾取を抑えるだけでなく、経済面にも配慮した、計画的で持続可能な成長の基盤を築く。スラムのような人口密集地域では、LiDAR技術を搭載したカメラを活用し、点群データを定期的に取得する必要がある。スキャンデータを分析ツールと組み合わせることで、衛生状態、居住者の種類、大気の質、排出、エネルギー消費など、各通りに関する豊富な情報を詳細に把握できる。規制の観点からは、政府や民間運営主体が、対象地域が必要な規制に適合しているかを判断するための十分なデータとなる。
世界経済フォーラムは、未来の都市に向けてどのような取り組みを行っているのか。
都市変革センターは、都市のリーダー、企業、政府を結びつけ、都市の未来を形づくる課題と機会への理解を深める。
都市変革センターは、同業者間の学び合いと協働を通じて、都市が知見を交換し、共通の理解を実践的で強靭な都市ソリューションへとつなげられるよう支援する。
活用はそこで終わらない。こうして生成されたデータは、現在のCOVID-19パンデミックのような状況でも幅広く活用できる。例えば、人口10万人あたりの周辺の病院数をリアルタイムで提供できる。システムはまた、ある地域が適切な生活水準を満たしているかを評価できる必要がある。さらに、世界銀行などの国際機関が主導する大規模プロジェクトで、世界各地の保健、衛生、教育事業を推進するためにも広く活用できる。
今こそ、産業と都市の開発を、持続可能でエコ・人間中心の暮らしに向けたものにする必要がある。リアルタイムの空間スキャンは、その実現を後押しする。

