2050年までに、世界人口の68%が都市部に住むと予測されている。
スマートシティは、イノベーションとデジタル変革を通じて社会をより良くできる。
絶え間ない混乱が続く世界で、都市にはダイナミックさと適応力が求められる。
ローマは一日にして成らずと言われるが、それにはもっともな理由がある。都市は、地球上で人間が設計したシステムのなかで最も複雑だ。現在、世界人口の55%が都市部に住んでおり、2050年までに68%が都市部に住むと予測されている。米国では、すでに83%に達しており、2050年までに89%に上ると予測されている。
こうしたことから、都市は、社会全体と地球にとって、イノベーションとデジタル変革の最も重要な機会と言えるだろう。この変革を通じて、より持続可能でレジリエント、そしてより適応力のある都市の未来を実現できる。本稿では、スマートシティの概念が必要ではあるものの、それだけでは不十分な理由と、すべての人に役立つ未来の適応型都市を実現するための3つのステップを探る。
スマートシティだけでは不十分な理由
スマートシティという概念は、長らく都市の未来像とされてきたが、それさえも必要ではあるものの十分ではない。テクノロジー企業は長年、何十億ものリアルタイムデータを収集するインテリジェントセンサーによって、都市をスマート化し、周囲の状況に対応できるようにする構想を提唱してきた。用途としては、自動運転車、スマート照明、さらにはスマートごみ箱などが挙げられてきた。センサーとデータは確かに基盤となる要素であり、コンクリートにとってのセメント、空気、水、砂、砂利のようなものだ。しかし、それらは原材料であり、最終的な解決策ではない。
適応型都市が未来である理由
スマートシティの概念は有益な出発点だが、未来の都市には、さらに重要な一歩が求められる。絶え間ない変化や混乱にダイナミックに対応できる適応型都市になる必要がある。
近年、あらゆる形の混乱が例外から常態へと移行した。今日の絶え間ない混乱は、3Dプリンティング、人工知能(AI)、機械学習(ML)、自動運転車、デジタルツインなどの技術的な変化に加え、パンデミック、異常気象、気候変動、予期せぬ事態、さらには大きく変動する政府の政策など、ビジネス上の混乱としても現れている。
スマートシティの概念は、状況が安定している場合にはうまく機能した。しかし、絶え間ない混乱が続く世界で都市に求められるのは、デジタル面と物理面の双方にわたる運営モデルに本質的な俊敏性を備え、変化に対応できることだ。都市の物理インフラが脆弱なままなら、デジタルエコシステムの俊敏性は意味をなさない。
適応型都市は、人々の暮らしと生計、レジリエンスと持続可能性、さらに政治、経済、社会、技術、法律、環境に関するあらゆる条件のバランスを取り、それらを継続的に分析して行動に移す。
適応型都市を実現する3つのステップ
適応型都市への道のりは、数年にわたる取り組みだ。デジタル変革と同様、早期に成果を上げることもでき、その過程の各段階で便益を実現できる。実現に向けた主なステップは、ビジョンの確立、適応性を考慮した設計、そして本質的な俊敏性を備えた構築の3つだ。
1. 適応型都市のビジョンを確立する
適応型都市のビジョンは、その目標から始まる(図1)。目標は都市ごとに明らかに異なる。たとえば米国では、レジリエンスの面でマイアミが必要とするものは、ダラスとは大きく異なる。適応力は、あらゆる目標の達成をより良く支えるための手段となるため、重要だ。つまり、より多くのステークホルダーのために、より多くの目標を、より多くの場合に達成できるということだ。

縁石の動的管理は、データに基づいて変化する管理方針を用いて道路の効率性と公平性を高め、縁石沿いの交通や配送の流れを円滑にするために、都市計画担当者を支援する解決策の一つだ。2時間駐車できるスペースを、3分間の荷さばき区域や、時間帯などの要因に応じて料金が変動する配送区域に転換できる。
都市の事業目標は絶えず変化するため、適応型都市は目標自体の動的な最適化を支援する必要がある。そうすれば、交通量とCO2排出量のように相反する目標を、分単位で先回りして管理できる。
2. 適応性を考慮して設計する
適応性を考慮して設計するには、都市のアーキテクチャにおけるデジタル要素と物理的要素の両方に焦点を当てることが重要だ。ソフトウェアの適応性は、クラウドコンピューティング、AI、ML、デジタルツイン、ソフトウェア定義ネットワーク、スマートコントラクト、プラットフォーム型ビジネスモデルなどの手法で実現できる。
物理的な適応性は、モジュール式の設計と建設、多機能設計、ロボットやドローン、迅速な統合と相互運用性、または動的な供給を支える技術(表1)などで実現できる。

例として、Ampleのロボット式バッテリー交換ステーションがある。電気自動車のバッテリーモジュールとパックを10分で交換できる。さらに、 「プラグアンドプレイ型の都市計画」では、歩道橋などの要素を必要に応じて移動できるようにする。フォートワース市は、幅80フィートの小川に可動式の橋を架け、街並みを改善した。より大規模な例として、カタールの輸送用コンテナを使ったサッカースタジアムは、試合後に解体して再組み立てできる。
駐車施設の運用最適化とは、より少ない資源でより多くを実現すること(例:パンデミック時に需要が最大90%減少した状況)だけでなく、駐車場の各階を運動施設に転換することや、期間限定の小売店向けスペースを提供すること、またはレストランの持ち帰りや食品配達のための準備エリアを設けることなど、別の方法を見つけることでもある。
こうした物理的な適応性は、建築環境の個別の資産だけでなく、建造物全体にも及ぶ。カリフォルニア州オンタリオのニュー・ヘイブン計画開発コミュニティにあるような多機能街灯には、USB充電ポート、環境センサー、Wi-Fi、道案内機能などが備わっている。
世界経済フォーラムは、世界各地の都市やコミュニティの発展をどのように支援しているのでしょうか?
都市変革センターは、都市の未来を形づくる課題や機会への理解を深めるため、都市のリーダー、企業、政府を結びつけている。
センターは、同業者間の学び合いと協働を通じて、都市が知見を交換し、共通理解を実践的でレジリエントな都市ソリューションへとつなげられるよう支援する。
3. 本質的な俊敏性を備えて構築する
都市インフラを整備または更新する際、こうしたデジタル面・物理面の要素によって、必要不可欠な本質的俊敏性を実現できる。建設や改修の過程でこれらを活用すれば、運用期間全体を通じた適応性を設計段階から組み込める。時宜にかなった例がマイクログリッドだ。系統の一部が損傷した場合でも、自己修復する生物のように衝撃に対応できる。
統合にあたっては、スタートアップなどの関係者が持つ知的財産を、Appleのアプリストアのようにプラットフォームのサービスに容易に組み込める、プラットフォーム型ビジネスモデルを推進することが重要だ。適応型都市は、公共サービスとしてこのプラットフォームを所有・運営できる一方、許可不要のイノベーションを可能にし、市民を含む他者が容易に革新を起こし、その上に新たなものを築けるようにする。
適応型都市では、建物、道路、自動車から人間の役割に至るまで、あらゆる資産の役割を再定義する時が来ている。
この取り組みの一環として、自然環境を人工的に造られた環境により融合させ、緑と灰色を組み合わせる必要がある。社会はあまりにも長い間、灰色のインフラにほぼ全面的に依存し、自然の調整機能を備えた緑のインフラがもたらす自然のプロセスの恩恵を活用してこなかった。
ソフトウェア企業としての適応型都市
未来の適応型都市では、多くの技術的な基盤によって多様な用途が可能になる。そのすべてを実現するプラットフォーム型ビジネスモデルのガバナンスと統括が、おそらく最大の課題となるだろう。この段階で、適応型都市は文字どおり独自のソフトウェア企業となり、世界をより良い場所にする一助となる。
「すべての企業はソフトウェア企業である」と言われる。今こそ、すべての都市もまたソフトウェア企業になる時なのかもしれない。

