AIは各分野で試験導入の段階を経て組み込み型システムへと移行しましたが、ガバナンスの成熟度は導入の進展に追いついていません。
エネルギー、安全性、公平性が、AIの次の成長段階を左右する制約として浮上しました。
2025年は、政策、投資、制度面の能力を今後どこに向けるべきかを明らかにしました。年末にあたり、主な動きを振り返ります。
1. 影響を受けない分野はない
今年、AIへの信頼と受容が加速し、あらゆる業界に深く浸透しました。
導入が進むにつれ、企業がさまざまな分野や地域でAIを活用する方法も広がっています。世界経済フォーラムの2025年ニュー・チャンピオンズ年次総会では、専門家パネルが、AIの導入がどのように進んでいるかを検討し、利用状況の違いが企業間の協業にどのような意味を持つかを議論しました。セッションの全編は以下からご覧いただけます。
AIが業界横断で及ぼす影響について、さらに知りたい方へ。アクセンチュアとの協力により作成された、「AI in Action: Beyond Experimentation to Transform Industry(AIの実践:実験から業界変革へ)」世界経済フォーラムの報告書では、新たなAI技術が各業界に及ぼす影響を包括的に分析しています。
2. AIがデジタルの安全性を推進
児童の性的搾取、詐欺、プライバシー侵害、偽情報などのオンライン上の有害行為は、複雑さと件数の両面で増加しています。
限られたリソース、規制の複雑さ、急速に進化する脅威により、組織は対策の実施に苦慮しており、法的・評判上の不利益を被るリスクが高まっています。
「介入への道筋:効果的なデジタル安全対策のロードマップ」は、リスクの特定から対策の有効性評価まで、デジタル安全対策を実施する方法を示すガイドを提案する世界経済フォーラムの論文です。
この論文ではTikTokを事例に、AI生成コンテンツのラベル付けから、欺瞞的なAIコンテンツの削除まで、AIをユーザーの力を高め、その保護に役立てる方法を示しています。
3. AIエージェントの台頭とリスク
経営幹部の82%が今後1~3年以内にAIエージェントを導入する計画を立てるなか、加速する実験と成熟した監督体制との隔たりが広がり、新たなリスクを生んでいます。
世界経済フォーラムがキャップジェミニと協力して作成した論文、「AI Agents in Action: Foundations for Evaluation and Governance(AIエージェントの実践:評価とガバナンスの基盤)」は、この隔たりを埋める方法を検討しています。事例研究と実践的な助言を通じて、組織が業務プロセスにAIエージェントを安全に導入する方法を説明します。詳しくは以下をご覧ください。
こうしたエージェントは、いまや一般消費者向け市場にも進出しています。最近では、ChatGPTやGoogleなどの主要なアシスタントが、AIエージェントに商品の調査、選択、購入を代行させる機能の提供を始めました。
消費者もこの考え方を受け入れ始めているようです。Statistaのデータによると、過去12か月間に収集された調査で、18~39歳の米国人のおよそ4分の1が、買い物にAIを使うのが好き、または商品検索にこの技術を使ったことがあると回答しています。
4. AI時代における創造性の新たな役割
AIの急速な普及はクリエイティブ産業に機会をもたらす一方、いくつもの課題も提起しています。
生成AIは可能性の幅を確実に広げ、深い技術的スキルや芸術的スキルを持たない人も含め、より多くの人が創作者の輪に加わる力となるでしょう。同時に、この技術の登場が人類に恩恵をもたらすようにすることが何より重要です。
データプライバシー、知的財産権の侵害、倫理的な影響、情報エコシステムへの悪影響、バイアスや不正確さのリスク、雇用喪失の可能性への懸念が浮上しています。
それでも、創造的思考のようなソフトスキルは、AI時代の労働市場における「重要な通貨」になっていると、世界経済フォーラムの新たな報告書は指摘しています。
ある専門家は、こうした技術の変化が人間の創造性の価値を高める可能性があると考えています。CHANELのヤナ・ピールは今年初め、「Meet the Leader(リーダーに聞く)」に出演し、AI時代に人間の創造性を生かす方法を語りました。
5. AIのエネルギー問題
AIはエネルギー面の課題を抱えています。2035年までに、世界のデータセンターの電力消費量は1,200テラワット時を超え、2024年のほぼ3倍になる可能性があります。アクセンチュアとの協力により作成された世界経済フォーラムの報告書、「From Paradox to Progress: A Net-Positive AI Energy Framework(パラドックスから前進へ:AIのエネルギー純益化フレームワーク)」は、AIが世界のエネルギーシステムに負担をかけるのではなく、強化する方法を示しています。
この報告書は、AIの成長をエネルギー目標に沿わせるための3つの方策を中心に構成されています。
効率性を考慮した設計:再生可能エネルギーでデータセンターを稼働させ、エネルギー効率の高いハードウェアを使い、必要な規模にとどめたモデルを構築するなど、消費エネルギーをできる限り抑えるAIシステムを作る。
効果を重視した導入:電力網、建物、運輸、産業全体で排出量を削減し、効率性を高めるAI開発を拡大する。
需要を賢く形成:最も高い効果が見込める用途に注力し、不要な処理を避け、責任ある影響の小さいデジタル利用を促す。
6. 責任あるAIが中心的課題に
今年はAI規制が大きな焦点となり、欧州連合(EU)のAI法が施行されました。主要な規制当局による、世界初の包括的なAI規制です。
世界経済フォーラムは、アクセンチュアとの協力により作成した論文、「Advancing Responsible AI Innovation: A Playbook(責任あるAIイノベーションの推進:実践ガイド)」を通じて、責任あるAIを育む重要性を改めて強調しました。同論文は、責任あるAIの原則を実践に移すための、実行可能で拡張性と適応性を備えた9つの実践策を提示しています。
認識が高まっているにもかかわらず、組織における責任あるAIの実践は依然として未成熟であることを、以下の図が示しています。
サンドボックスは、責任あるAIを推進する有効な手段です。データ、インフラ、モデル、検証ツール、市場へのアクセスにおける主要な不足を解消し、イノベーションを促すことを目指します。この世界経済フォーラムの論文は、包摂性と説明責任を確保し、公共の利益に沿いながらイノベーションを可能にするAIサンドボックスの計画、実施、ガバナンスに向け、戦略面と運用面からなる2部構成の枠組みを示しています。
7. AGIがますます現実に近づく
汎用人工知能(AGI)は、あらゆるタスクで推論、学習、革新を行う柔軟性を備える可能性があります。
生成AIはすでに、雇用喪失などへの懸念を招いています。では、AGIは進歩をもたらす力となるのでしょうか。それとも、人類の根幹を脅かす存在となるのでしょうか。世界経済フォーラムの2025年ダボス年次総会では、専門家がこの問題をセッションで議論しました。
議論の内容を以下の短い動画にまとめました。
8. 公平なアクセスを重視
世界の一部地域では、AIの可能性が現実になりつつあります。しかし、エネルギーを大量に消費するAIインフラ、高度な計算能力、高品質なデータ、現場でのAIスキル向上機会の不足が重なり、何十億もの人々が経済的・社会的な恩恵を得られないおそれがあります。
今年、世界経済フォーラムのAIグローバル・アライアンスは、すべての人によるAIの安全で包摂的なイノベーション、導入、活用を進めるアプローチの実施を促す「成長と開発のための包摂的AIイニシアチブ」を立ち上げました。
この立ち上げに合わせ、KPMGとの協力により作成された世界経済フォーラムの白書、「Blueprint for Intelligent Economies – AI Competitiveness through Regional Collaboration(インテリジェント経済の青写真―地域協力によるAI競争力)」は、デジタルとAIの成熟度にかかわらず、各国がAI革命を成功させるための指針を示しています。
AIを真に公平で持続可能な成功へと導くには、協力と多様なステークホルダーの連携が必要です。詳しくは、以下から報告書の全文をご覧ください。


