作物保護は、気候変動、害虫の抵抗性、規制強化による課題の深刻化に直面しています。
この分野の従来の研究開発体制では、新製品の提供までに10年以上かかることもあり、もはや目的に適していません。
AIを活用した早期発見を重視する適応型の研究開発体制は、規制当局の監督を損なうことなく、スピードと効率の向上に役立ちます。
作物保護は、気候変動、害虫の抵抗性、規制強化による課題の深刻化に直面しています。従来の研究開発体制では、新製品の提供に10年以上かかることも多く、生物学的変化の速度にもはや対応できていません。適応型の研究開発体制は、開発の早い段階で成功確率の高い分子に資源を集中させ、資本効率を高める実践的な方法として広がりつつあります。
作物保護は世界の食料安全保障の基盤ですが、農業以外ではその重要性が十分に認識されていません。毎年、害虫によって世界の作物生産量の推定20~40%が失われており、食料価格の上昇、供給の不安定化、経済的負担につながっています。気候変動によって害虫の進化が加速し、生育環境の変動が激しくなるなか、こうした圧力は強まっています。
世界的な食料需要の増加、生物多様性の損失、持続可能性への期待の高まりが、課題の緊急性をさらに高めています。生物多様性の損失だけでも、医療と農業への影響を考慮すると、年間約10兆ドルの損失が見込まれます。また、人間が消費するために生産された食料の約3分の1が、世界全体で廃棄または損失しています。
こうした状況を背景に、業界のイノベーション能力は圧力にさらされています。古い化学物質の使用が中止され、少数の非常に有効な製品への依存が高まったことで、抵抗性の発達が加速しています。圃場での評価は季節の周期に制約され、気候の変動性がさらに複雑さを増しています。同時に、世界各地で規制要件が拡大し、コスト、期間、不確実性が増しています。
過去50年間、研究開発モデルでは、新たな作物保護製品の創出に平均12.3年を要し、有効成分1つあたりの費用は3億ドルを超えてきました。このペースでは、農業が直面する課題に対応できません。業界はイノベーションの実現方法を見直す必要があります。
従来の研究開発の限界
何十年もの間、イノベーションは発見から商業化までの直線的な道筋をたどってきました。このモデルは成果を上げましたが、異なる時代に合わせて構築されたものです。今日では、生物学的・環境的変化の速度に合っていません。開発には10年以上かかる一方、抵抗性はわずか数年で現れることがあります。その隔たりは広がっています。
このシステムを規定する制約が短期間で変わる可能性は低いでしょう。製品は複数の作物サイクルにわたって検証しなければなりません。安全性評価では、今も動物実験が用いられています。規制の枠組みは世界的に拡大しています。いずれも必要なものですが、スピードを高められる領域を限っています。
適応型研究開発が成果を発揮できる領域
適応型研究開発は、パイプライン全体を単に速めることではありません。今日、最も実現可能性の高い領域、すなわち初期の発見段階にイノベーションを集中させることです。
この段階では、圃場試験の季節性、規制要件、大規模な検証による制約が大幅に小さくなります。そのため、統合型の計算ツールとハイスループット検証を活用した迅速で反復的な実験が可能になり、サイクル期間を数年から1~2年に短縮できます。
AIを活用した発見は、この転換の中心的な役割を果たします。パターンを特定し、新たな作用機序を優先し、合成前に候補群を絞り込むことで、成功確率の低い選択肢を早い段階で除外できます。先進的なプログラムでは、初期の成功率を高めながら、合成前の候補群をすでに90%超削減しています。
これにより、問題の捉え方が根本から変わります。構造的な制約が大きいパイプライン全体を加速させようとするのではなく、適応型研究開発は最初期の段階で資本をどう配分するかを改善します。成功確率の高い候補に資源を振り向けることで、後期段階での脱落を減らし、成果につながる製品が生まれる可能性を高めます。
このシステムにおける失敗は埋没費用ではなく、継続的な学習サイクルへの投入材料です。その結果、資本効率を高めながらイノベーションの可能性を広げ、意思決定の質を向上させるモデルが実現します。
大きな成果を上げるには、意義のある期間内に変えられることに焦点を当てる必要があります。規制基準は引き続き厳格です。圃場での検証は今後も季節の周期に左右されます。安全要件も近い将来に根本的に変わることはありません。
機会は、制約が最も少ない初期の発見段階で行動することにあります。ここにイノベーションの取り組みを集中させれば、規制の枠組みや試験方法の長期的な変化を待たずに、今日からスピードと効率を高められます。ここにこそ、適応型研究開発が即時かつ測定可能な成果をもたらす余地があります。
レジリエンスが今も重要な理由
スピードと効率には、レジリエンスが伴わなければなりません。そのためには、パイプラインの多様化、複数の作用機序、地域や作物をまたいだ検証が必要です。持続可能性への配慮も、発見プロセスの早い段階から組み込む必要があります。
農業は、生物の絶え間ない進化、気候の変動、地政学的圧力のもとにあります。適応型研究開発を規律をもって導入する組織は、資本効率を高め、発見を加速させ、新たな解決策を適切な時期に農家へ届けられる可能性を高めることができます。
世界経済フォーラムは、世界の食料安全保障の確保に向けてどのような取り組みを行っているのでしょうか?
もはや問われているのは、業界がより速く進めるかどうかではありません。資本、学習、意思決定を、今、最大の効果を発揮できる領域に集中させることで、イノベーションの進め方を再設計できるかどうかです。それを実行しない組織は、さらに後れを取るでしょう。

