AI競争は「電力」へと軸足を移しつつあり、欧州は新たな試練に直面している

Europe is seen as a slow mover on power projects – but the reality is more complicated.
Europe is seen as a slow mover on power projects – but the reality is more complicated.Image: REUTERS/Russell Cheyne
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  • AIにおける主導権は、データや人材だけでなく、電力へのアクセスによってますます左右されるようになっている。

  • 欧州にはクリーンエネルギーの資源があるものの、供給、インフラ、需要を迅速に整合させることに苦慮している。

  • 改革が行われなければ、AIへの投資は、電力と計算資源をより速く拡大できる地域へ移るリスクがある。

現代のAI開発の最初の10年は、米国と中国が主導してきた。両国は大規模な投資とインフラを背景に、汎用の先進的な基盤モデルを開発してきた一方で、欧州は後れを取っている。

米国のハイパースケーラーは欧州のクラウド市場の約70%を支配しており、中国はAI特許で首位に立っている。これに対し欧州が生み出した基盤AIモデルはわずか3つにとどまり、米国の40、中国の15に比べて少ない。

しかし、競争の前提は変わりつつある。現代のAI開発は、本質的に計算資源へのアクセスによって左右される。計算資源とは、データセンターで稼働し、電力で駆動する特殊なチップの集合体のことである。より優れたモデルを構築する能力は、それらに電力を供給する能力と切り離せない。国際エネルギー機関によれば、データセンターの処理能力は昨年20%増加したが、その大部分が当然ながら米国と中国であった。2030年までに電力消費量は2倍以上に増えると予測されている。

地政学的緊張が高まる中、外部から支配されるデジタルインフラへの欧州の依存は、戦略的な脆弱性として浮上しつつある。クリーン電力に裏打ちされた主権的な計算能力は、デジタルとエネルギーの両面の安全保障に対応する手段となり得る。しかし、それを実現するには、より深刻な課題に向き合う必要がある。それはクリーン電力の不足ではなく、供給、需要、インフラを迅速に整合させることができていないという問題である。

欧州の制約:電力確保のスピード

欧州は依然として、データセンターを迅速に建設するうえで複雑な環境にある。電気料金は米国より高く、土地はより希少であり、一部の欧州市場では送電網への接続に最長10年もかかり得る。こうした課題は、フランクフルト、ロンドン、ダブリンといった、送電網の制約が大きく炭素集約型の既存立地において、特に深刻である。

その影響は既に表れている。一部の施設は待つことをせず、送電網の待機列を完全に回避し、ガス火力発電所に直接接続している。これは同地域のネット・ゼロの目標と明らかに相反する。また、計画を単に一時停止する事例もある。OpenAIが英国の大規模なデータセンター計画から撤退したような判断は、AIインフラの迅速な展開が依然として極めて困難であることを示す兆候である。

AIインフラをガスに依存させることには、デジタル経済の基盤に化石燃料価格の変動性を組み込んでしまうことなど、独自のリスクが伴う。小型モジュール炉(SMR)などの原子力による代替案もしばしば挙げられるが、再生可能エネルギーによる代替案と比べ、導入には依然として時間とコストがかかる。モデリングによると、洋上風力、太陽光、蓄電池、最小限のガスによるバックアップを組み合わせた再生可能ハイブリッド・マイクログリッドで120MWのデータセンターに電力を供給すると、大幅に低いコストで、かつおおよそ半分の時間で電力を届けられることが、ネット・ゼロ・センターの分析で明らかになった。

課題は供給そのものではなく、電力の調整方法にある

欧州には、これを実現するための資源がある。しかし、現在の制度はそのようには設計されていない。欧州大陸の資源は豊富で地理的にも多様であり、北海の洋上風力、南欧の太陽光、スカンジナビアの水力などがある。それにもかかわらず、発電のタイミングと場所を、必要とされる時間と場所に合わせることができていない。

供給の拡大は問題の半分にすぎない。クリーン発電の拡大と同時に、電力需要は減少してきた。ドイツと英国では、例えば2005年以降、消費量が15~30%減少している。これにより構造的な不均衡が生じ、システムの固定費が縮小する需要量に分散されるため、単位当たりの電気料金が上昇している。その結果、電化の進展が遅れ、需要はさらに弱まっている。

こうした状況において、データセンターの成長は、欧州の高いエネルギーコストというジレンマに対する解決策となり得る。大規模で予測可能な負荷は、既存インフラの利用率を高め、固定費をより多くの消費に分散させ、システム全体の価格を引き下げることができる。

その役割を果たせるかどうかは、需要がシステムとどのように相互作用するか、特にピーク時に、によるる。柔軟性に乏しく立地の悪い負荷は、高額な送電網の増強を必要とする。柔軟で適切に立地された負荷は、それを回避することができる。

インフラの新しいモデル

今まさに生まれつつあるのは、この新しいクラスのインフラに対する異なるモデルである。

最も単純なケースでは、インフラは電源に従うことができる。クリーン電源の近くにデータセンターを立地させれば、安価な電気を利用できると同時に、混雑した送電網への負担を軽減するという二重の利点が得られる。ただし、これはどこでも可能というわけではない。遅延の要件や既存のデジタル・エコシステムがあるため、多くの施設は、すでに送電網が逼迫している都市部に留まらざるを得ない。

そうした場合には、システムの状況に応じて需要をシフトさせる方策を検討する必要がある。この柔軟性は仮定の話ではない。調査では、ナショナル・グリッドおよびEmeraldAIとの共同研究により、最新のAIデータセンターが性能を損なうことなく需要を調整できることが示されている。

直接的な柔軟性が限られる場合には、現地での発電と蓄電によって送電網への依存を減らすことができる。さらに、データセンターそのものを超えて、周辺の住宅や事業所に分散するエネルギー資源によって、制約のある送電網における追加的な容量を引き出すこともできる。グーグルとXcel Energyは、検討を進めている。ミネソタ州で、この考え方の一つの形を試しており、地域社会を解決策の一部とし、開発に対する地域の支持を高めるため、分散型エネルギー資源に投資している。

この変化は、AIによる動力が増えつつあるエネルギーシステムにおいて、複雑性をより適切に管理する手法によって可能になりつつある。データセンターの成長を牽引する同じ技術は、リアルタイムでエネルギーシステムを最適化し、予測の精度を高め、供給と需要のバランスを取り、システムコストを削減することができる。送電網がより複雑になり、変動性のある再生可能発電が主流になるにつれ、こうした知性はますます不可欠になる。この意味で、AIは電力システムの運用の一部になりつつある。

行動の時

AI競争は、電力をめぐる競争へと移行しつつある。クリーン電力の問題を解決できるかどうかが、今後10年のAI開発を主導する経済圏を決定づけ、それに伴う投資、イノベーション、成長を呼び込むことになるだろう。

欧州全体では、EUレベルの持続可能性基準から、ドイツなど各国の戦略に至るまで、進むべき方向は明確である。しかし、この機会を捉えられるかどうかは、実行のスピードに懸かっている。

改革が行われなければ、欧州の制約によって投資は他の地域へと流れ続けるだろう。今後制定される「クラウド・AI開発法」のような仕組みを含めて改革が行われれば、欧州はAIインフラとクリーンエネルギーシステムが共に進化する、異なるモデルを構築することができる。

電力問題を最初に解決する国々が、AI開発の次の段階において決定的な役割を果たすことになる。欧州には なお主導権を握る機会が残されているが、その時間は限られている。

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