世界経済フォーラム、public.affairs@weforum.org
『2024年産業ネットゼロ追跡レポート』は、世界全体の排出量が増加するなか、排出削減が困難な8業界では直近の排出量が減少したものの、2050年までにネットゼロを達成するには進捗が大幅に不足していると警告しています。
ネットゼロの実現には新たに30兆ドルの投資が必要で、その半分以上を8業界以外のセクターに投じる必要があります。このことは、業界横断的な協力と良好な政策環境の緊急性を浮き彫りにしています。
人工知能(AI)はこの移行に変革をもたらす可能性を秘めていますが、エネルギー需要や競争を高める可能性もあり、業界のリーダーや政策決定者に新たな機会と課題をもたらします。
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2024年12月12日、スイス・ジュネーブ発—世界経済フォーラムが新たに発表した『産業ネットゼロ追跡レポート』(Net-Zero Industry Tracker)によると、鉄鋼、アルミニウム、セメント、基礎化学品、石油・ガス、航空、海運、トラック輸送の排出削減困難な8業界で、削減が進展しました。世界経済に不可欠なこれら8業界は、2022~2023年に絶対排出量を0.9%削減しました。同じ期間に、世界のエネルギー関連排出量は1.3%増加しました。
しかし、この進捗のペースではネットゼロ目標の達成には到底及びません。レポートによると、2050年までに目標を達成するには新たに30兆ドルの投資が必要であり、今後の課題の大きさが示されています。この規模の投資を実現するには、上記8業界が直接13兆ドルを投資し、エネルギー供給者を含むエコシステムの各主体が17兆ドルを投じる必要があります。
今回の調査には、心強い情報もあります。温室効果ガス削減のほぼ半分を支え得る、商業的に実現可能な技術がすでに整っています。また、排出原単位、すなわち生産単位当たりの平均排出量は、過去5年間で4.1%低下しており、現在のソリューション導入の効果を示しています。これらの取り組みをさらに進め、新興技術の変革力を引き出すには、業界間の協力を強化し、クリーンエネルギー、特に再生可能電力のインフラをより迅速に整備するとともに、より強力な意思決定を行うことが重要です。
『2024年産業ネットゼロ追跡レポート』は世界経済フォーラムとアクセンチュアが共同で作成しました。世界の温室効果ガス排出量の約40%を占める、排出削減困難な8業界のエネルギー移行の現状と今後の動向を評価し、ネットゼロ達成に向けた主な障壁を分析しています。また、技術、投資戦略、政策を網羅する包括的な「削減準備状況」フレームワークなど、進展を加速するための実行可能な道筋を提示しています。
「削減への道のりは長いものの、排出削減困難な各業界で削減が進み、エネルギー移行への取り組みが進展していることは心強いことです」と、世界経済フォーラムのエネルギー・素材センター長Roberto Bocca氏は述べています。「2050年までにネットゼロを達成するには、各業界が前例のない協力を行い、削減に必要な資金を調達するため、かつてない金融イノベーションを実現する必要があります。実際、私たちにはすでに多くの技術や政策枠組みがあり、今すぐ行動を起こせます。」

2022~2023年、8業界は生産量を増やしながらも、排出量全体を0.9%削減しました。同期間に世界全体の排出量が増加したことを踏まえると、これは大きな進展です。さらに重要なのは、2019~2023年に排出削減困難な8業界の総需要が年平均9.2%増加した一方で、総排出量と排出原単位は低下したことです。これは、生産を縮小するのではなく、効率改善と脱炭素化によって削減が進んだことを示しています。排出削減困難な8業界のうち、アルミニウム、セメント、化学、航空、トラック輸送の5業界では、エネルギー原単位が低下しました。低炭素電力の利用拡大、石炭消費の削減、エネルギー効率の向上、再利用される金属の増加など、複数の要因が寄与しています。
レポートは、これらの業界の削減を妨げる主な障壁として、高金利、政治的不確実性、貿易制限、新たなクリーンエネルギー技術の選択肢の少なさなどを挙げています。低炭素電力、水素、炭素回収・利用・貯留(CCUS)のインフラ整備を中心に、大規模な投資が必要です。低炭素電力インフラの整備は前向きに進んでいるものの、水素とCCUSのインフラは、業界が必要とする水準の1%未満しか整備されていません。
今年のレポートでは初めて、排出削減困難な業界の脱炭素化を加速する生成AIの可能性を紹介しています。生産性の向上、業務の効率化、エネルギー利用の最適化によって、生成AIは資本効率を5~7%高め、ネットゼロ投資の必要額を最大2兆ドル削減する可能性があります。コスト削減に加え、AIは製品単位の炭素報告を可能にし、資産管理、研究開発の加速、研究開発の透明性向上に役立つツールを提供します。一方、AIの広範な導入は電力需要を大幅に増加させ、限られた低炭素エネルギー資源の奪い合いへの懸念を生みます。
「重工業は世界的な脱炭素目標の達成に不可欠であり、AIはネットゼロの課題への対応を支援する現実的な可能性を示しています」と、アクセンチュア・ストラテジーの最高経営責任者Muqsit Ashraf氏は述べています。「リーダーが生成AIの生産性向上の可能性と経済的価値を活用すれば、事業成長を再構築する道が開けます。これは排出量の増加を回避するだけでなく、AIの可能性を実現し、業界の脱炭素化を推進する重要な原動力へと転換することにもつながります。」
世界経済フォーラムのエネルギー移行インサイト責任者Espen Mehlum氏は、次のように補足しています。「排出削減困難な業界は、クリーンエネルギー技術の普及と重要インフラの整備に関する複数の課題に同時に取り組むため、体系的なアプローチを採る必要があります。政策決定者は、排出削減困難な業界、エネルギー供給者、消費者の目標に沿ったインセンティブを導入し、脱炭素化を加速できます。それは最終的に、すべての人に利益をもたらします。」
『2024年産業ネットゼロ追跡レポート』の変更点
過去のレポートでは、アンモニア製造を排出削減困難な8業界の一つとして扱っていました。今年は対象範囲を拡大し、基礎化学品(エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、混合キシレン、アンモニア、メタノール)を8業界に含めました。これらの化学品は世界の温室効果ガス排出量の2.5%を占めます。この変更により、レポートが追跡する総排出量は増加しました。
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