献血については誰もが聞いたことがあるでしょう。では、データの提供はどうでしょうか。
糖尿病、心臓病、てんかんなどの慢性非感染性疾患(NCD)は、世界保健機関(WHO)の予測によると、あらゆる疾病の57%を2020年までに占めるとされています。

このため、一部の専門家はNCDを「世界の健康にとって最大の課題」と呼んでいます。
データが解決策になるでしょうか。
現在、世界各地の60万人を超える患者が、2,800を超える慢性疾患に関するデータを共有し、研究や自身の疾患の治療の改善に役立てています。
オンラインコミュニティ「PatientsLikeMe」に参加する人々は、服薬や治療計画から心の悩みまで、幅広い情報を共有しています。
参加者の多くは、同じような経験をしている人がほかにもいると知るだけで、大きな支えになると話しています。
しかし、このプラットフォームはデータの活用を通じて、慢性疾患を抱える患者の生活の質を高める、さらに広範な恩恵をもたらす可能性もあります。
データを提供し、データを得る
PatientsLikeMeは、医療分野で新たに登場しているデータプラットフォームの一つです。こうしたプラットフォームは、リアルタイムデータ分析による臨床試験の迅速化や、ブロックチェーンを使った患者データの安全な共有など、健康上の課題に対するさまざまな技術的解決策を提供しています。
その理念は「データを提供し、データを得る」です。実際には、ウェブサイトを利用する患者は誰でも、地域のコミュニティ全体から集められた情報を幅広く閲覧できます。たとえば、よくある薬の副作用や、患者の症状・行動に見られる傾向などです。
患者は症状、治療に関する情報、健康上の転帰を共有します。こうした情報を、さまざまな慢性疾患について何百万ものデータポイントに変換し、集約・整理することで、新たな知見を明らかにできます。
オンラインコミュニティのメンバーは、データから何が明らかになったかを知ることができます。また、より良い製品やサービス、ケアの開発に役立てるため、医療業界や製薬業界とデータを共有することもできます。
こうした業界ではすでに、患者への理解を深めるため、遺伝子配列解析やフィットネスバンドなどのウェアラブル機器を含む、他の情報源からのデータ活用が積極的に進んでいます。
こうした情報をもとに、個別化医療、あるいは精密医療の新たな手法が開発され、学習障害からがんまで、幅広い課題への対応が進められています。
より明るい未来
慢性疾患に関するデータをクラウドソーシングで集めることで、これまで入手できなかった膨大な情報が医学研究者に開かれます。
慢性疾患の治療を大きく変え、新薬の開発を加速させる可能性があることから、その有望性は早くから注目されていました。2007年、PatientsLikeMeの会員が「わずか数千人」だったころ、同社はCNN Moneyの世界を変える15社の一社に選ばれました。
このウェブサイトは、MITのエンジニア、ジェイミー・ヘイウッドと弟のベンが、兄弟のスティーブンの運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症、ALSとも呼ばれる)の治療改善を目指して立ち上げました。このプラットフォームで集められたデータは、ALSは心に影響しないという一般的な誤解を覆す、2018年9月発表の研究に活用されました。
ヘイウッドは、世界経済フォーラムのバイオテクノロジーに関するグローバル・フューチャー・カウンシルのメンバーであり、アラブ首長国連邦のドバイで11月11~12日に開催されたグローバル・フューチャー・カウンシル年次総会に参加しました。


