年配の人だけの問題ではない記憶力の低下。その仕組みと、若い人にも起こり得る理由

Demonstrators, most unemployed, hold an assembly at their protest camp in Madrid, June 12, 2013. Members of the Asamblea de Parados de Fontarron (Unemployed assembly of Fontarron), most of them unemployed, set up a camp site late Saturday June 8, 2013 at the public park of their neighbourhood in Fontarron, Madrid, to protest against Spain's unemployment and the government's labour reform. At 27 percent in the first quarter, Spain's unemployment rate is the highest in the European Union after Greece, and even if the country pulls out of recession next year as economists forecast, job creation could lag for some time longer. The camp site was dismantled early Thursday June 13, 2013 by police on the grounds that it was illegal. Picture taken June 12, 2013. REUTERS/Susana Vera (SPAIN - Tags: SOCIETY CIVIL UNREST)
Losing access to our past is a major fear for many people.Image: REUTERS/Susana Vera
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講演をすると、記憶力に不安を抱えている人から声をかけられることがよくあります。試験勉強をしているのに、同級生ほどうまく覚えられていないと感じる人もいるかもしれません。家を出るときに窓を閉め忘れてしまう人もいるでしょう。あるいは、数週間前の出来事を、周りの人は鮮明に語れるのに、自分は思い出せずに苦労している人もいます。

自分の記憶力がどうも当てにならないと感じることは、不安を覚えさせたり、ときには非常に怖く感じさせたりすることもあります。そしてそれは決して不思議なことではありません。記憶は、私たちが何者であるかを形づくるものです。過去を振り返り、それを他者と分かち合えることは、自分のアイデンティティ、人間関係、そして未来を想像する力の根幹をなすものです。

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この能力のどの部分を失っても、日常生活に支障が出るだけでなく、私たちが何者であるかという概念そのものが脅かされます。50歳以上の人々にとって、最も大きな健康上の不安は最大の健康不安はアルツハイマー病であり、それに伴う個人の記憶の壊滅的な喪失です。

若い人にみられる記憶障害

記憶に関する懸念は、定年後の世代だけのものでしょうか。どうやらそうではないようです。実際、現代の傾向から判断すると、若い世代も過去にアクセスできなくなることを同じくらい心配しています。最近では、大きなコンサートに行けば、スマートフォンの海に阻まれて演者の姿がよく見えないことがよくあります。その一台一台が、光景や音を安全な永久のデジタル記録として残そうとしているのです。

洞窟に住んでいた人類の時代から、人間は知識や経験を保存する方法を見つけてきました。しかし、現代のライフスタイルはそれを行き過ぎたものにしてしまったのでしょうか。技術への過度の依存によって、私たちの記憶システムは怠惰になり、効率が低下しているのでしょうか。

インターネット検索エンジンを使うと、情報の想起力が低下することを示す研究もあります。ただし、最近発表された別の研究では、この効果を再現できなかったこともを示されています。多くの研究者は、こうした状況では記憶が効果を失っているのではなく、単に記憶の使い方が変わっているだけだという点で一致しています。

スマートフォンで出来事を記録するのはどうでしょうか。最近の研究では、一定間隔で足を止めて写真を撮ったグループは、その出来事の想起力が低下していたことが示されました。その体験に没頭していた人々と比べてのことです。また、以前の研究では、写真によって見たものは思い出しやすくなる一方で、語られた内容の記憶が減少することが示唆されていました。こうした状況で重要なのは注意力だと考えられます。写真を積極的に撮ることで、その体験の一部から注意がそれ、距離が生まれてしまう可能性があり、その結果として記憶に残るものが少なくなるのです。

それでも写真を撮りたい場合には、この問題を回避する新しい方法があります。私たち自身の研究では、ウェアラブルカメラを使って自動的に写真を撮影すれば、注意の散漫を防げることが示されています。

テクノロジーと記憶

テクノロジーによって、私たちが記憶を使う方法が変化していることは確かかもしれません。しかし、テクノロジーが脳の本来の学習能力を低下させると信じるべき科学的根拠はありません。

とはいえ、現代の目まぐるしく要求の多い社会には、悪影響を及ぼしうる他の要因もあります。たとえば、質の悪い睡眠、ストレス、気の散るもの、うつ病や飲酒などです。ただし、良いニュースとして、これらの影響は、非常に長期間続かない限り、一般的には一時的なものと見なされています。

日常的な物忘れを超えて記憶の問題を経験する人は、ごく少数います。頭部外傷、脳卒中、てんかん、脳炎などの脳感染症、あるいは水頭症(脳内に液体がたまる先天性の状態)などの先天性疾患によって、情報を保持し想起する能力が大きく失われることがあります。さらに最近では、新たな病態も特定されています――重度の自伝的記憶障害――これは、自分の過去を思い出す能力に特定かつ顕著な障害があると報告する、人口のごく一部の人々を指します。

たただし、これらの人々は例外です。記憶について心配している多くの人々には、実際には大きな懸念すべき理由はありません。記憶力には、誰にでも得意・不得意があります。パブクイズで毎回トップの成績を取る友人が、財布をどこに置いたか必ず忘れてしまうこともあるでしょう。去年の休暇を驚くほど詳しく語れるパートナーが、新しい言語を覚えるのに途方もなく時間がかかることもあります。実際、世界記憶力選手権の優勝者でさえ、鍵をなくすといった日常的な物忘れを報告しています。

概して、記憶が私たちを裏切るのは、疲れているとき、注意を向けていないとき、あるいは一度にあまりにも多くのことをしようとしているときです。リスト、日記、スマートフォンのリマインダーを使うことは、記憶の効率を下げるものではなく、むしろ脳を他のことに使えるように解放してくれるのです。また、インターネットで調べることは、私たちを怠惰にするどころか、知識の基盤を強化したり、豊かにしたりするのに役立ちます。

とはいえ、テクノロジーが邪魔になる場面もあるかもしれません。たとえば、特別かもしれない瞬間から注意をそらしたり、必要な睡眠を妨げてネットサーフィンに誘い込んだりすることがあります。日常的な記憶の抜け落ちの多くは、より意識を向け、忙しさを減らすだけで解消できます。ですから、友人と過ごした時間を覚えておきたいなら、私の助言は、その瞬間を楽しみ、後でそのことについて語り合い、そして良い睡眠をとることです。

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