800万冊の書籍と6500万本の新聞記事を分析することで、研究者らは1820年までさかのぼる史上初の「国民幸福指数」を作成しました。
指数から得られた主な知見は次のとおりです:
お金は幸福に影響する: 国民所得の増加は国民の幸福度の向上ももたらしますが、国家レベルで目に見える効果を得るには大幅な上昇が必要です。
寿命の長さも重要である: 寿命が1年延びることは、GDPが4.3%増加することと同じ幸福への効果がありました。
戦争は代償が大きい: 戦争の期間が1年減ることは、GDPが30%上昇することと同等の幸福への効果がありました。
幸福度が低下した時期もある: 戦後の英国では、国民の幸福度が最も低かった時期が、その名にふさわしい「不満の冬(Winter of Discontent)」の頃に当たります。戦後の米国では、指数の最低点がベトナム戦争およびサイゴン撤退と重なります。
「注目すべきは、国民の主観的な幸福感が戦争に対して驚くほど回復力を持つことです」と、共著者でウォーリック大学およびアラン・チューリング研究所教授のトーマス・ヒルズ氏は述べています。
「一時的な景気の好況や不況が長期的に与える影響はわずかです。当社のデータには、アメリカの南北戦争、1848年のヨーロッパ各地の革命、狂騒の20年代、大恐慌も見て取れます。しかし、これらの出来事が終わると、人々は速やかに以前の主観的幸福度の水準に戻りました。
「国民の幸福感は、開閉して体験を直近の過去と比較して調整する調節可能なスパナ[レンチ]のようなものです。時代の勝利や悲劇についての記憶はほとんど長く残りません。」
「期待は非常に重要に思われます。1950年代の配給制度の終了後、国民の幸福度は非常に高く、将来への期待も同様に高かったのですが、残念ながら物事は人々が望んだようには進まず、「不満の冬」の最低点に至るまで、国民の幸福度は長年にわたり低下しました」と、共著者でウォーリック大学教授のダニエル・スグロイ氏は述べています。
過去の国民の幸福度と今日の政策
世界各国の政府は、政策が国民の幸福度(national wellbeing)に与える影響を検討するため、調査による「国民の幸福度」データの活用を増やしています。
残念ながら、ほとんどの国のデータは2011年以降しか入手できず、一部の国についても1970年代半ば以降のものに限られます。このため、長期的な傾向を見極めたり、主な歴史的な幸福の要因(causes of happiness)について何かを述べたりすることが困難です。
この問題に対処するため、研究者らは心理学の重要な知見、すなわち人々が語ることや書くことの多くは、その根底にある幸福度を大いに示しているという考えを取り入れ、過去200年にわたって出版された数百万冊の書籍や新聞のオンラインテキストに適用する手法を開発しました。
研究結果は、Nature Human Behaviorに掲載されています。
安定した意味を持つ単語
この手法では、テキストから導き出せる幸福の価値(心理的価値規範)を、異なる言語における数千の単語について用いて、4つの国(米国、英国、ドイツ、イタリア)における肯定的な言葉と否定的な言葉の相対的な割合を算出します。研究チームはまた、単語の意味が時間とともに変化するという事実を考慮するため、言語の変遷についても補正を行いました。
「例えば、「gay」という単語は1800年代には現在とはまったく異なる意味を持っていました」と、アラン・チューリング研究所の共著者チャヌキ・セレシンヘ氏は説明します。「私たちはGoogle Booksから得た数テラバイトの単語共起データを処理し、単語の意味が時間とともにどのように変化してきたかを把握しました。そして、歴史的に最も安定した意味を持つ単語のみを用いて、研究結果を検証しました。」
研究チームは、新しい指数を既存の調査ベースの指標と照らし合わせて検証しました。書籍や新聞記事が優れたデータ源となる理由のひとつとして、編集者は読者の気分に合った記事を掲載したがるという説があります。
「私たちの指数は、過去における人々の満足度を理解するための重要な第一歩です。イタリアのデータを見ると、ファシズム期には緩やかでも一定した低下が、直近の危機の後には急激な低下が見られるのは興味深い点です」と、グラスゴー大学の共著者エウジェニオ・プロト氏は述べています。


