「グローバリゼーションを救う」ことをめぐり、世界の指導者たちは依然として要点を見失っている

A labourer welds the edge of a container at a port in Wuhan, Hubei province, February 22, 2008.
Image: REUTERS/Stringer
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「哲学者たちは世界をさまざまに解釈してきた。しかし肝心なのは、世界を変えることだ」と、かつてカール・マルクスは記したという。貿易自由化、ひいてはグローバリゼーション全般が疑問視されるなか、G20首脳には状況を解釈するだけでなく、変えることも求められている。

先進国と新興国からなる多様な経済圏の集まりであり、世界のGDPの約80%を占めるG20にとって、これは容易な課題ではない。貿易・投資作業部会の設置や、投資政策立案の指針となる原則への合意では大きな成果を上げたものの、G20首脳は反グローバリゼーションの声が台頭していることに対処できなかった。彼らが誤った4つの点と、2017年に状況を好転させる3つの方法を紹介する。

保護主義が理にかなうとき

中国で会合した際に彼らが犯した最初の誤りは、貿易と投資における「あらゆる形態の保護主義に反対する」と再確認した声明だ。実際、これは法的に不正確なだけでなく、彼らの政治的権限の範囲も超えている。

世界貿易機関(WTO)の現行のルールブックでは、一定の防御的な貿易措置は完全に正当なものとされている。これには、アンチダンピング関税や相殺関税、セーフガード措置、公益を守るためのその他の制限的な政策手段が含まれる。ただし、すべての加盟国が合意した条件と方法に沿って措置を適用しなければならない。あらゆる形態の保護に反対すれば、世論の不安を不必要にあおり、政治的な危険を招く。一部の保護主義的措置は、不可欠な安全弁として機能するよう設計されている。明確に定められた一定の条件下で、各国が貿易と投資を制限する権利を確保しながら、段階的に自由化される貿易と投資の恩恵も受けられるようにするためだ。この種の貿易保護措置は非難されるどころか、保障されるべきである。

2017年、G20首脳は、法的により妥当で、政治的にもより機微に配慮したアプローチを取ることが望ましい。たとえば、貿易と投資を制限しようとする違法な措置を使わないよう、すべての加盟国に呼びかけることができる。また、導入される合法的な保護措置は、国際経済法と規則に従って厳格に適用すべきだと改めて表明することもできる。

グローバリゼーションの恩恵を説き続けるのはやめよう

中国での会合でG20首脳が2番目に話し合ったのは、「貿易と開かれた市場の恩恵を、より効果的に広く一般に伝える」ことの重要性だった。

今、求められているのは、貿易の伝道師たちがさらに説教することだろうか。むしろ、これまで貿易の恩恵は誇張されてきたと言いたい。人々は愚かではない。グローバリゼーションや貿易、開かれた市場の恩恵をよく知っている。最新のスマートフォンや台所用品、クローゼットにある服を見れば、その証拠は明らかだ。

指導者や政策立案者が伝えてこなかったのは、避けられない副作用だ。その結果、不利益を被る人々は、負の影響が自分たちに及び始めたとき、不意を突かれる。彼らが不満を訴えても、受けるに値する理解や共感を示されるどころか、取り合ってもらえない。

2017年には、G20首脳がこうした負の影響について率直に語り、グローバリゼーションに取り残された人々を指導者たちは見捨てていないと明確に示してほしい。

費用と恩恵を分かち合う

中国でG20首脳が最後に話し合ったのは、「恩恵を広く行き渡らせるための適切な国内政策」の必要性だった。実際には、恩恵が不均等に分配されているだけでなく、負の影響もまた不均等に生じている。導入する政策がこの微妙だが重要な違いを認識しないかぎり、どれも失敗するだろう。

国内では、これは垂直的再分配政策を必要とする。公的機関は、グローバリゼーションの勝者から得た税収を活用し、より開かれた市場で競争力が低く、成果を上げられない、あるいは得られるものが大幅に少ない人々を支援すべきだ。対象を絞った技能訓練やセーフティネットを提供するのである。同様のアプローチは、新たな雇用機会の創出にも使える。たとえば、行政機関は税収を用いてインフラへの公共投資を増やし、手頃な価格で受けられる教育の質を高め、零細・小規模企業の事務・物流コストを引き下げられる。

国際レベルでも変化が必要だ。これまで実現が非常に難しかった主な理由は、富裕国と貧困国の間に大きな分断があることだ。先進国の労働者は貿易自由化と聞くと、中国、メキシコ、ベトナムなどへの業務移転や雇用喪失を思い浮かべる。開発途上国の人々はこの言葉を聞くと、多国籍企業のほうが自分たちよりも安価な労働力から利益を得ているように感じる。双方の不満に対処する必要がある。

2017年、変化のときか?

2017年にはドイツがG20議長国を引き継ぐ。アンゲラ・メルケル首相は自身のビジョンを示す動画で、「相互につながった世界を形づくる」必要性、グローバリゼーションをすべての人にとって機能させること、国際協力の強化、孤立主義やナショナリズムへの回帰への反対を語った。興味深いことに、曖昧な用語である「保護主義」には触れなかった。

これを目指すにあたり、G20首脳は3つの重要な点を考慮すべきだ。

戦争ではなく貿易を

第一に、指導者たちは、グローバリゼーションの恩恵にこれ以上こだわるのをやめるべきだ。すでに述べたとおり、一般の人々はその恩恵を知っている。それでも、国際平和と繁栄にとって開かれた貿易体制が持つ戦略的価値を忘れてはならない。

「貿易障壁や関税障壁を引き下げ、貿易に対する国際的な障害を取り除くことで国家間の商取引を増やせれば、戦争そのものの根絶に向けて大きく前進できる」。2つの壊滅的な世界大戦の後、元米国務長官の

コーデル・ハルは回顧録にそう記した。世界貿易機関(WTO)の前身である関税及び貿易に関する一般協定(GATT)は、戦時中の政治家たちの多くが発案したものだった。彼らの目標は、開かれ、差別がなく、予測可能な貿易環境を確保することだった。彼らは、物資が国境を越えなければ、兵士が越えることになると痛感していた。

耳を傾ける力

第二に、貿易自由化だけでは国際平和と経済的な豊かさを保障するには不十分だ。貿易の恩恵を余すところなく享受し、その混乱をもたらす副作用の一部に対処するには、ほかの国際政策や国内政策も導入する必要がある。

厳格な政策を策定する前に、政治指導者や世論を形成する人々は、より柔軟なアプローチを取るべきだ。まずは互いの国内事情が抱える困難への理解を深め、問題を緩和し、それによって開かれた貿易を守るのに役立つ政策を支援することから始められる。

ロボットに立ち向かう私たち

最後に、G20首脳は、仕事がコンピューターや自動化に置き換えられる新しい世界に備える必要がある。

これはすでに貿易の状況を変えている。

新たな研究によると、米国の製造業における雇用喪失の約88%は、国際貿易ではなく、自動化やその他の国内要因によるものだった。オックスフォード・マーティン・スクール

の研究者たちの見立てが正しければ、この傾向は今後20年間続き、全雇用の47%が自動化の犠牲になる。この未来から逃れられる国はない。だからこそ、私たち全員が協力する必要がある。ロボットにはできない技能を市民が身につけられるようにする方法や、労働者の交渉力を守るために法律や法規制を強化する方法について、優れた実践例を共有できる。また、課税や雇用政策に関する国同士の政策調和も進めるべきだ。行動を起こすとき

貿易の経済的な根拠に疑いの余地はない。それでも、貿易とグローバリゼーションへの攻撃は強まっている。貿易の恩恵と弊害を合計した効果がプラスになるかどうかは、貿易だけで決まるわけではない。持続可能な発展には、教育やインフラ、国内のイノベーションの向上に加え、雇用、課税、その他の貿易とは無関係な要因についての相互理解と政策調和も必要だ。

貿易をするか、しないか。それは問題ではない。しかし、貿易がもたらす恩恵を確実に享受したいのであれば、2017年にG20首脳は口先だけの立派な言葉で終わらせてはならない。誰一人取り残さない開かれた貿易体制を守るため、行動を始めなければならない。

本稿で述べられている見解は著者個人のものであり、著者が所属する組織の見解を必ずしも反映するものではありません。

グローバリゼーションを救うには、G20首脳の行動が必要

貿易自由化とグローバリゼーションが疑問視されるなか、G20が保護主義への対応、恩恵と弊害の分配、雇用の自動化に向けて果たすべき役割を解説します。

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