1990年に戻ったと想像してみてください。FacebookもGoogleもまだありませんでした。ベルリンの壁が崩壊したばかりで、中国はまだ経済大国ではありませんでした。
今日私たちが知るグローバル化も、まだ最盛期には達していませんでした。ほとんどの国で輸入関税は大幅に高く、豊かな国では平均約5%、インド、中国、ブラジル、ロシアという主要新興国では28%でした。現在は豊かな国で2%未満、新興国で5%です。最近の報告書で、経済協力開発機構(OECD)の研究者たちは、関税の引き下げ傾向が反転したらどうなるのかを考察しています。保護主義が1990年の水準に戻ったらどうなるでしょうか。米中貿易戦争が激化するなか、この問いはとりわけ重要です。
OECDによると、貿易自由化の時計を巻き戻すことは望ましくないものの、破滅的な事態にはなりません。関税が現在の水準にとどまれば、世界の一人当たりGDPは2020年から2060年にかけて2倍以上になると研究者たちは推計しています。関税が1990年の税率に戻ると、その成長の約14%が失われると見込まれます。この分析では、関税が2020年から2030年にかけて徐々に引き上げられると想定しています。研究者たちは、関税上昇が地政学を不安定化させたり、投資家の信頼を損ねたりする影響など、起こり得るすべての影響が推計に含まれているわけではないと注意を促しています。
関税率が1990年に戻っても、輸送コストまで1990年に戻るわけではありません。OECDによると、2015年の貨物輸送の平均コストは1990年より25%低くなっていました。そのため、以前の高い関税率に戻っても、輸送費の低下によって貿易は拡大するでしょう。
OECDによると、保護主義が戻った場合に最も大きな打撃を受けるのは、インド、オーストラリア、中国です。1990年の関税率が非常に高かったため、インドと中国が最も大きな損失を被るでしょう。現在は中国が最大の貿易相手国であるオーストラリアも、中国が同国の天然資源をそれほど輸入しなくなるため、経済に打撃を受けるでしょう。

1990年への仮想的な回帰は、将来実際に起こり得ることを正確に反映しているとは言いがたいものです。米国が最近、より重商主義的な経済政策へ転じたからといって、インドや中国が世界の他の国々に経済を閉ざすと考える理由はほとんどありません。米国が関与しなくても、EU、中国、インドは互いの製品に対する関税率を引き下げることができます。
それでも、この検討から得られる教訓はあります。OECDの分析によると、関税引き下げによる恩恵の大半は、商品の取引そのものの価値ではなく、貿易拡大によって経済間で知識が移転することから生じます。例えば、バングラデシュの最近の経済急成長は主に、急成長する衣料品製造業によるものです。この産業は韓国の衣料品メーカーとの貿易によって大きく発展し、バングラデシュの人々はそこで貿易のノウハウを学びました。貿易は、物品の取引と同じくらい、そこから生まれるアイデアの交換にも価値があります。グローバル化が後退した世界で最大の損失となるのは、知識のエコシステムが縮小することでしょう。





