解説:欧州とアジアの経済的な結びつき

Chemistry student Brandon Lee watches as his classmates prepare to make the compound found in an anti-parasitic medicine used to treat malaria, called Daraprim, in their school lab at Sydney Grammar School in Sydney, Australia December 2, 2016. REUTERS/David Gray - RC15E4DE21C0
More than 200,000 collaborations between Asian and European research institutions take place every yearImage: REUTERS/David Gray
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アジアと欧州は今や主要な貿易相手であり、年間の物品貿易額は1.5兆ドルに上り、各大陸と米国との貿易を上回っています。新たな研究では、国同士の二国間データをかつてない規模で集め、アジアと欧州の51カ国間にある経済、社会、政治面の結びつきを明らかにしています。

世界の注目が米中貿易戦争に集まるなか、アジアと欧州は関係の深化に取り組んでいます。両大陸は、人々、企業、機関の相互連結を最優先の政治課題とし、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて取り組む確固たる決意のもと、関係の構築と強化を急いでいます。

持続可能な連結性が新たな潮流です。これは、アジア欧州会合(ASEM)の中心的な議題となっています。ASEMは、オーストラリアとニュージーランドを含む欧州30カ国とアジア21カ国による政府間のハイレベル協力フォーラムです。欧州連合も、最近採択した戦略「欧州とアジアをつなぐ―EU戦略の構成要素」で持続可能な連結性を提唱しています。

では、現在、アジアと欧州はどのようにつながっているのでしょうか。データを見てみましょう。

アジア・欧州間の貿易

ASEM諸国間の貿易は、世界の物品貿易全体のおよそ半分を占めています。域内貿易(欧州内またはアジア内)は地域間貿易の4倍に上る一方、アジアと欧州の間の貿易額は、世界のどの地域間の貿易額よりも大きくなっています。

出典:Comtrade、2016年

ドイツと中国という2つの主要な拠点が際立っています。この両国でASEMグループ全体の貿易の4分の1を占め、両大陸を結ぶ主要な貿易の架け橋となっています。アジアに輸送される欧州製品のほぼ3分の1はドイツからのもので(2,020億ドル)、中国が最大の輸出先です。

逆方向では、中国から欧州への輸出の半分以上がドイツ、オランダ、英国に向かいます(1,780億ドル)。地理的に中心に位置するロシアは、ASEM諸国の中で貿易額が3番目に大きい国です。ロシアの欧州向け輸出額はアジア向けの2倍です。

欧州と日本、韓国とインドの間にも、1,000億ドルを超える重要なアジア・欧州間貿易があります。欧州では、スイスがアジア向け輸出額でドイツに次ぐ第2位で、特に中国とインド向けの輸出が大きく、インド向けではドイツを上回ります。

制度面でも、欧州諸国とアジア諸国の貿易関係は強化されています。2019年にはEUと日本の新たな貿易協定が発効しました。こうした貿易協定は、持続可能な開発に関する規定を盛り込む絶好の機会となります。EU・日本協定は、パリ協定に関する個別の規定を盛り込んだ初の協定です。

外交関係は良好で、データによると、貿易協定や大使館を通じたつながりは二国間貿易の活発さと関連しています。中国やドイツなど貿易額の大きい国は、ASEMの全50のパートナー国に大使館を置いています。

国境を越える投資

アジアと欧州の間の海外直接投資(FDI)は、年間約900億ドルに達します(2015~2017年)。これは欧州域内のFDIとほぼ同規模です。

FDIの状況は、各地域の主要な外国投資国2カ国に大きく左右されています。アジアへの欧州投資の半分以上は英国とドイツによるもので、320億ドルを超えます。実際、英国のアジアへの投資額は欧州への投資額の2倍で、最大の投資先はインドです。同様に、中国と日本は欧州における主要なアジアの投資国で、合計額は120億ドルに上ります。

全体として、インドと中国は欧州からの外国投資総額のおよそ半分を引き付けています。一方、アジアからの投資家よりも欧州からの投資家にとって魅力的なアジア諸国もあります。韓国、モンゴル、シンガポール、ロシアがその例です。

しかし、アジアと欧州の関係は経済的な結びつきだけではありません。

人々の移動

アジアと欧州は、人々や社会の結びつきも深めており、両地域間では約1,300万人が移住しています。ドイツ、英国、オーストラリアは、地域間の移民を最も多く受け入れており、それぞれ約250万人です。

英国からオーストラリア、ロシアとカザフスタンからドイツへの大規模な移民は、歴史、文化、言語のつながりと関連しています。欧州への移民の主な出身国はロシアで、次いでインドです。

出典:UN-DESA、2017年

大学院生の国際的な移動は、海外で質の高い教育を受ける機会をもたらすとともに、語学力を伸ばし、異なる文化や社会に触れる機会にもなります。両大陸間では毎日約1,000人、年間では約40万人の学生が移動しています。

アジアの学生にとって英国は最も人気の留学先で、そのほぼ4分の3を中国、インド、マレーシアからの学生が占めます。欧州にいるアジア出身の学生のほぼ半数は中国人です。欧州の学生に最も人気の留学先はオーストラリアで、次いで日本です。

現在、欧州のパスポート所持者の3分の2以上はアジアにビザなしで渡航でき、アジアの国籍を持つ人の3分の1は欧州にビザなしで渡航できます。ビザの取得を容易にする政策により、学生や研究者は円滑に渡航できます。

研究での協力

アジアと欧州の研究機関は、科学論文の共著という形で、年間20万件を超える共同研究を行っています。ASEM諸国の研究協力のうち、地域をまたぐ協力は約3分の1を占めます。

オーストラリア、ニュージーランド、インドの機関に所属する研究者は、アジア諸国よりも欧州諸国と約2倍多く共同研究を行い、ロシアの研究者は欧州の研究者と3倍多く共同研究を行っています。欧州諸国にはEUの大規模な資金提供を受けた研究プログラムに支えられた強固な域内協力ネットワークもあるため、地域をまたぐ協力は欧州側よりアジア側で活発です。

中国、オーストラリア、英国、ドイツ、ロシア、フランスなどの国々は、科学者をつなぐ大陸間の架け橋となっています。共同研究が最も多いのは英国と中国、英国とオーストラリアの間で、それぞれ1万件を超えます。次いでドイツと中国の間が約7,000件です。

アジアの小国の研究者は、欧州諸国に重要な研究パートナーを見いだしています。例えば、ラオスと英国の共同研究は、ラオスの研究成果の約20%を占めます。モンゴルとドイツ、ミャンマーと英国の間にも同じ傾向が見られます。

持続可能な連結性―今後の道筋

アジアと欧州の連結性は、平和、安定、経済的繁栄、包摂的な開発に不可欠ですが、それだけでは全体像の半分にすぎません。持続可能な連結性は、持続可能な開発のための2030アジェンダの一部であるSDGsの達成に貢献する必要があります。

データによると、アジアと欧州の連結性は、SDGsの大半、とりわけ持続可能性の社会的側面に関わる目標と合致しています。これは、連結性が、生活環境の改善、より包摂的な社会、教育水準の向上などと関連していることを意味します。

しかし、連結性の高い国々は環境への影響も大きい傾向にあり、それは温室効果ガス排出量や国内の物質消費量の増加につながっています。政策立案者は、連結性による環境への影響を最小限に抑えるとともに、その恩恵が社会のすべての人々に行き渡るようにするという課題に直面しています。

詳しくは、報告書をこちらでお読みいただき、データセットはASEM持続可能な連結性ポータルでご覧ください。本記事にはCarlos Tacão Moura氏とMichaela Saisana氏も寄稿しました。

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