ロシアによるウクライナでの戦争は「甚大な人道的苦難」をもたらしただけでなく、世界貿易にも打撃を与えていると、世界貿易機関(WTO)が警告しています。
食料供給の混乱は、貧困国に「極めて深刻な結果」をもたらす可能性があると、WTOは述べています。
WTOは物品の輸入と輸出の予測を下方修正し、貿易の円滑化に向けて各国政府やパートナーに協力を呼びかけています。
中国で新たに実施された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のロックダウンも、海上貿易を混乱させています。
ロシアによるウクライナ侵攻は「甚大な人道的苦難」をもたらしただけでなく、世界貿易にも打撃を与えており、低所得国が最も大きな影響を受ける可能性が高いと、世界貿易機関(WTO)が警告しています。
WTOの2022~2023年貿易見通しによると、2月24日に戦争が始まって以降、世界経済の見通しは「暗転」しました。WTOのエコノミストは、2022年の物品貿易量(物品の輸出入)の伸び率予測を、4.7%から3%に引き下げました。
ウクライナ戦争が食料危機と燃料危機を引き起こす
「食料の供給減少と価格上昇により、世界の貧困層は食料を得られなくなるおそれがあります」と、WTOのンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長は述べました。
WTOによると、商品価格の急激な上昇は、ウクライナ紛争がもたらした最も直接的な経済的影響です。戦争はまた、食料、エネルギー、肥料など、ロシアとウクライナから供給される不可欠な物資の供給も脅かしています。
黒海の港を経由する穀物輸送が停止すれば、貧困国の食料安全保障に「極めて深刻な結果」をもたらす可能性があると、WTOは警告しています。
中国で新たに実施された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のロックダウンも、海上貿易を混乱させています。その結果、原材料の不足が新たに生じ、インフレが加速する可能性があります。
WTOの貿易統計の要点を、3つの図表で紹介します。
ウクライナ紛争の行方が不透明で、その経済的影響を示す確かなデータも不足しているため、WTOのエコノミストはシミュレーションを用いて貿易について「妥当な仮定」を立てました。図表1では、2022年の世界の物品貿易量の伸び率が「0.5%にとどまる可能性もあれば、5.5%に達する可能性もある」と説明しています。
図表では、誤差の幅を色の帯で示しています。
予測は10月に更新される予定ですが、新たなデータが得られれば、それより早く更新されます。
危機の際には、誰もが必要な物資を確保できるよう、貿易を減らすのではなく増やす必要があると、WTOは述べています。貿易の円滑化に向けて、各国政府とパートナー機関が協力するよう呼びかけています。
図表2は、世界の燃料価格が急速に上昇している様子を示しています。上昇はウクライナ戦争前の2020年に始まりました。2022年3月の原油価格は1バレル当たり118ドルで、2022年1月より38%、前年同時期より81%高くなりました。日次の原油価格は3月8日に1バレル当たり128ドルの高値をつけましたが、4月1日までに104ドルに下落しました。
天然ガス価格は地域によって異なると、WTOは説明しています。欧州では1月から3月にかけて45%上昇し、熱量を示す単位である英国熱量単位(Btu)100万単位当たり41ドルとなりました。一方、米国では価格は「比較的低い水準にとどまっている」とWTOは述べており、Btu100万単位当たり約4.9ドルです。
「原油価格の上昇は世界の実質所得と輸入需要を押し下げる可能性がある一方、天然ガス価格の上昇は欧州により大きな影響を及ぼすと考えられます」と、WTOは述べています。
図表3は、2019年の最初の3か月から、2023年最後の3か月の予測までの期間について、地域別の物品輸出入を示しています。
「輸入については、欧州が他地域を下回ると予測されています」とWTOは述べています。アフリカと独立国家共同体(CIS)も同様です。CISはロシアを含む東欧・アジアの政府で構成され、1991年のソビエト連邦解体後に成立しました。WTOによると、このグループの不振は主にロシアに対する制裁によるものです。
ウクライナが欧州の地域区分に含まれていることも、欧州の低迷に拍車をかけています。アフリカの輸入水準が低いのは、2021年後半の貿易における「予想外の減少」も一因だと、WTOは述べています。
中東では、原油価格の上昇により輸出収入が増えると予測されています。中東諸国はより多く輸入できるため、輸入量も増える可能性が高いでしょう。
WTOは、ウクライナ紛争が商業サービスの世界貿易にも影響すると述べました。これには、コンテナ輸送や旅客航空輸送を含む運輸部門が含まれます。





