世界貿易機関(WTO)の第12回閣僚会議には、100人を超える各国の主要な貿易担当者がジュネーブで参加しました。
各国の担当者が世界最大級の危機、すなわちパンデミック、戦争、サプライチェーンの混乱、食料危機、インフレ、気候変動に取り組み、多国間貿易協力は成果を上げました。
閣僚は、WTOの機能を改善し、その構造、柔軟性、透明性を高める改革に取り組むことを約束しました。
100人を超える各国の主要な貿易担当者が、2022年6月12~17日、世界貿易機関(WTO)の第12回閣僚会議(MC12)に参加するためジュネーブに集まりました。2017年に前回閣僚が集まった時点ですでに多国間主義は圧力にさらされていましたが、それ以来、状況はさらに複雑になっています。重なり合い、互いに深刻化させる一連の危機が議論の背景にありました。パンデミック、戦争、サプライチェーンの混乱、迫り来る食料危機、インフレの進行、深まる地政学的な亀裂、そして気候変動です。しかし、あらゆる困難にもかかわらず、MC12は成果を上げました。具体的で実質的な成果は、多国間貿易協力が今日の世界の課題に対応し、最も困難な時期でさえ、各国政府が世界的な緊急事態に取り組むのを助けられることを示しています。また、WTOの将来像を垣間見せたことも、おそらく最も重要な成果でした。一方でMC12は、持続可能で包摂的な成長に向けて、多角的貿易体制の可能性を最大限に生かすうえでの重大な課題も明らかにしました。
WTO第12回閣僚会議(MC12):大きな賭け、期待、そして今後の道筋
WTO閣僚会議は先行きが読めず、たいていは独自の展開をたどります。世界各地の貿易担当閣僚が、複雑で機微な一連の課題を数日間で交渉するために集まっても、何が起こるかを正確に予測できる人はいません。2013年のバリでは、閣僚が画期的な貿易円滑化協定を採択し、大きな成功を収めました。一方、1999年のシアトルでは、会議の予定終了日を待たずに主催者が中止を決めるという大きな失敗もありました。WTOの主要な意思決定機関がブエノスアイレスで開いた前回の会合では、多国間の成果は得られませんでした。
MC12の場合、期待は低かったものの、賭けられているものは大きなものでした。たとえ控えめでも、成功は不可欠でした。成果を出せなければ、いくつもの面で深刻な事態になっていたでしょう。各国政府が貿易協力を活用して、パンデミック、食料危機、あるいは魚資源の減少に取り組む機会を逃すことになります。電子送信に関税を課さない措置の一時停止を延長できなければ、デジタル経済の継続的な拡大に水を差し、それに依存する先進国と途上国の中小企業や消費者が増えている状況にも打撃を与えたでしょう。協力しようという意欲がなければ、各国政府はWTO改革の見通しを損ない、それとともに組織の将来にも打撃を与えていたでしょう。幸い、閣僚は成功を選びました。代替案を選ばないよう加盟国に働きかけるため、たゆまず尽力したWTO事務局長、ンゴジ・オコンジョ=イウェアラ博士の功績は大きいといえます。
閣僚会議の正式な成果は、今日の世界の中心的な課題に関わるものです。パンデミックへの対応では、最も重要で、かつ議論の多かった部分において、ワクチン製造能力の地理的な分散化を後押しするため、各国政府が特許権を制限できる範囲を明確化し、簡素化しました。食料不安への対策として、MC12の加盟国は貿易を促進し、世界食糧計画による食料調達を輸出制限の対象外とすることに合意しました。デジタル貿易については、動画ストリーミング、金融取引、その他の電子送信が国境を越えて自由に流通し続けられるよう、関税を課さないことを約束しました。そしてWTOの歴史上初めて、環境の持続可能性を中核に据えた協定に加盟国が合意しました。具体的には、違法・無報告・無規制の漁業活動や、乱獲された漁業資源への補助金を禁止するとともに、情報共有のための透明性枠組みを設けるものです。
今後に向けて、閣僚はWTOのすべての機能を改善するため、改革に取り組むことを約束しました。これは不可欠です。加盟国は、組織の構造に根差しつつ柔軟性を備え、次回の閣僚会議までに進捗を報告する権限を持つプロセスに合意しました。さらにMC12は、上級委員会に関するものを含め、紛争解決制度が抱える課題や懸念に対処することの重要性と緊急性を認め、2024年までに完全かつ適切に機能する紛争解決制度を実現することを目指しました。
知的財産に関する決定の目立たない脚注が、MC12による制度面で最も重要な貢献かもしれません。合意に盛り込まれた柔軟性の恩恵を受けられる国を定めるにあたり、脚注1は、新興市場が制度内で責任をより多く担うことを後押しする、実践的な青写真を示しています。すべての途上国が対象となることを明記し、COVID-19ワクチンの製造能力をすでに持つ国に対しては、この決定の適用除外を拘束力のある形で約束するよう促しています。中国は適用除外を選びました。そうした約束は一般理事会で採択される場合があり、WTOのウェブサイトに記録、集約、公表されます。脚注1は米国と中国が共同で交渉しました。予想どおり、これがMC12で最後にまとまった項目でした。WTO内の責任の均衡を助けるだけでなく、「適用除外」の手法は、参加できない加盟国が参加せずに済むようにすることで多国間の成果を促し、貿易体制に必要な柔軟性をもたらす可能性があります。
多くの成果を上げた一方、MC12は、農業を含む多くの課題で加盟国間の隔たりが依然大きいことを明らかにしました。将来の作業計画を大きく前進させる突破口は見いだせませんでした。成長と発展における貿易の役割や、貿易協力の利点についても意見が分かれていました。MC12が前向きな一歩であることは確かです。しかしそれは、WTOを活性化し、信頼を再構築するための、より広範なプロセスの第一歩にすぎません。その道のりは今後も険しく、起伏が多く、先行きの読めないものとなるでしょう。それでも、先週私が目にしたことは、ンゴジ博士が述べたように、閉会セッションで「戦略的競争は、拡大する戦略的協力と並行して存在し得る」という希望を私に抱かせてくれます。取り組みは続きます。





