西側諸国が内向きになるなか、ラテンアメリカ貿易の未来は?

Vendors arrange produce at a farmers' market in Havana January 15, 2015.
‘Open markets, inclusive and sustainable growth and tolerant societies are the only way forward’Image: REUTERS/Stringer
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ラテンアメリカの景気後退は、ようやく底を打ったようだ。今年は小幅ながらプラス成長が予測されている。しかし、一次産品スーパーサイクルの終焉から地域が回復するなか、成長見通しを脅かす新たな要因として、保護主義と経済ナショナリズムが重くのしかかっている。

この状況に皮肉を感じても、地域の人々を責めることはできないだろう。ブエノスアイレスからメキシコシティーまでの各国政府が、自由貿易と財政・金融規律を掲げるこの時に、経済正統派の柱であるそれらの考え方は、ワシントン・コンセンサスの名の由来となった都市で支持を失っている。

しかし、ラテンアメリカとカリブ海諸国から輸出される全商品の40%超が米国向けであるという事実は変わらない。メキシコと中米では、その割合は80%近くに達する。多くのラテンアメリカ経済は、2016年より前からすでに世界貿易の低迷の影響を受けていた。いずれの国にも、開かれた世界経済を維持する利害がある。ちなみに、米国にとっても同じことが言える。同国は、全商品輸出の5分の1をラテンアメリカとカリブ海諸国に向けており、多額の海外直接投資を行うとともに、サービス貿易の黒字も拡大させている。

ラテンアメリカ各国政府にできること

今日の複雑な貿易政治のなかで、ラテンアメリカの人々は何をすべきだろうか。第一に、地域の政府と企業リーダーは、世界市場の開放を維持するよう強く働きかけるべきだ。その場の一つとなるのが、今年12月にアルゼンチンで開かれる世界貿易機関(WTO)閣僚会議である。

第二に、これは全面的に自らの力で実現できることだが、各国は、数十年にわたってやや消極的に進めてきた地域統合の取り組みを実らせることができる。域内貿易と投資を深化させれば、地域全体に広がるバリューチェーンのさらなる発展が促され、専門化と規模拡大による生産性向上も実現できる。それだけではない。数百万に上る零細・小規模・中規模企業(その多くは女性が所有する企業)が、こうしたバリューチェーンに足場を築く機会も生まれる。そのために各国政府は、すでに低い関税をさらに引き下げ、非関税措置を特定して不要な障壁となったものを撤廃し、貿易関連の規則や手続きを調和させる必要がある。また、ハード・インフラとソフト・インフラを整備して貿易コストを削減することも求められる。WTO貿易円滑化協定を完全に実施することは、取引される商品の国境での遅延やコストを減らすための一要素である。

世界銀行の最近の論文は、地域統合によって世界の貿易・投資の流れとの結び付きが深まる可能性を示している。特に、ラテンアメリカ各国政府が他の地域に適用する「最恵国待遇」関税を引き下げ、労働市場と資本市場を統合すれば、その効果が期待できる。これは、自由貿易協定から、より強固な経済・社会統合のパートナーシップへ移行することを意味する。

地域別に見た、地域内の相手国およびその他の地域向け輸出品目の総数に占める割合(2010~14年平均)Image: 世界銀行

大陸内では、太平洋同盟とメルコスールの各ブロック間の収れんを進め、ラテンアメリカの統合を前進させる余地がある。域外の動きも、域内統合の後押しになり得る。例えば、長らく停滞していた欧州連合との交渉を再開すれば、メルコスール域内の貿易と投資の流れを強化できる可能性がある。

ポピュリズムへの対抗策としての包摂

ラテンアメリカの人々は、経済ポピュリズムに伴う好況と不況の循環をよく知っている。無責任な赤字財政に、インフレや外貨制約を顧みない姿勢が重なると、数年間は目覚ましい成長を遂げることがある。しかし、その後は通貨切り下げと危機に見舞われ、すべてが崩れ落ちる。

しかし、ポピュリストが一つの重要な点で正しいのも事実だ。有権者は雇用と公平な成長を望んでおり、そのことで責められる筋合いはない。課題は、経済的、環境的、政治的に持続可能な、より包摂的な成長の道筋を見いだすことだ。

後者を実現するには、条件付き現金給付や、教育・技能向上への長期投資、女性の労働参加率の引き上げなど、国内の社会政策が引き続き不可欠である。しかし、財政余地は限られており、世界経済の先行きも不透明なため、各国政府はマクロ経済の緩衝余力を確保したいと考えるだろう。

市場で得られる所得、つまり税や給付を差し引く前に人々が得る所得の幅広い層にわたる成長も必要だ。ここで貿易、とりわけ中小企業(SME)が関わる貿易が、重要な役割を果たす。

貿易の包摂性を高める鍵は中小企業

中小企業は雇用の60~70%を占め、多くの国では企業の圧倒的多数を占めている。小規模企業は一般に、大企業より生産性も賃金水準も低い。欧州の小規模企業の生産性は、国内の大企業の競合相手のおよそ3分の2に達する一方、ラテンアメリカでは20~30%程度にとどまる。

この「生産性格差」を縮めれば、低賃金労働者の大きな層の所得が増え、経済全体の成長と競争力にも寄与する。国境を越えて貿易を行う、あるいは国際的なバリューチェーンに加わる中小企業は、より速く成長し、より多くの人を雇用し、より高い賃金を支払い、生産性も高める傾向がある。

中小企業はその性質上、国境での手数料や規制遵守に伴う費用など、貿易関連の固定費の影響をより強く受ける。そのため、貿易コストを引き下げる地域統合から、相対的に大きな恩恵を得られる。

国際貿易センターの分析によると、生鮮食品に関する規制の調和だけでも、域内貿易の潜在額150億ドルの実現につながる可能性がある。これは、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)が取り組む価値のある、高い効果が見込める改革課題の一つを示している。

ラテンアメリカの大企業は、遠方の主要経済圏を最大の輸出市場とすることが多い一方、国際商取引に携わる中小企業は、域内でより多く貿易を行う傾向がある。地域貿易と投資の障壁を緩和すれば、より多くの中小企業がGrupo Arcorの歩みにならう助けとなる。同社は1951年、アルゼンチンのコルドバ州で菓子工場として創業したそして現在では、ラテンアメリカ各地に生産施設を持ち、120か国に販売する数十億ドル規模の企業となっている。

最近の景気後退以前、ラテンアメリカの多くの国では経済格差の縮小が進んでいた。世界経済の支援が弱まる今日、貿易拡大に向けて地域全体で協調して取り組み、中小企業がその恩恵を分かち合えるよう注力すれば、成長と包摂の双方に寄与するだろう。

正統派の原則に従いながら、社会の大部分に成果をもたらせない経済政策は、失敗を免れない。先進国はいま、こうしたリスクを学んでいる。ラテンアメリカの人々にとっては、以前にも見た光景だ。開かれた市場、包摂的で持続可能な成長、そして寛容な社会こそが、唯一の前進の道である。誰一人取り残してはならない。

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