貿易戦争が世界経済にもたらす脅威

FILE PHOTO: Sports utility vehicles (SUVs) waiting to be exported are seen at a port in Lianyungang, Jiangsu province, China April 5, 2018. REUTERS/Stringer/File Photo ATTENTION EDITORS - THIS IMAGE WAS PROVIDED BY A THIRD PARTY. CHINA OUT. - RC1FC7341690
Tariff increases penalize not only the assembler of a product, but also its suppliers along the chain.Image: Reuters
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報復とその応酬に彩られたこの年、米中間の貿易は行き詰まり、相次ぐ関税引き上げの波によって、両国の二国間貿易の半分以上が影響を受けている。誰が勝ち、誰が負けるかは尋ねる相手によって異なるが、貿易の流れに関しては、主要な当事国のどちらも勝者ではない。

「人の弱みにつけ込む」ということわざは、米中間の緊張を傍観する一部の国々に当てはまるかもしれない。貿易がこの混乱地域から迂回するなか、いくつかの国は、貿易大国から振り向けられた輸出の一部を取り込んで利益を得るだろう。米国が3月1日に関税を25%へ引き上げれば、この効果はさらに顕著になる可能性がある。

最近のUNCTADの推計は、3月の関税引き上げの可能性を含め、関税引き上げの影響を受ける米中貿易の大半が第三国へ振り向けられることを示している。例えば、米国の関税対象となる中国の輸出額2,500億ドルのうち、82%は第三国の企業が取り込み、約12%は中国企業が維持し、米国企業が確保するのは約6%にとどまる。

同様に、中国の関税対象となる米国の輸出額約1,100億ドルのうち、約85%は他国の企業が取り込み、米国企業が維持するのは10%未満、中国企業が確保するのは約5%にとどまる。この結果は、機械から木製品、家具、通信機器、化学製品、精密機器まで、さまざまな分野で一貫している。このことから、一方的に課される関税は相手国との貿易を抑制するには非常に効果的である一方、中国と米国のいずれにおいても国内企業の保護にはほとんど効果がないことがうかがえる。

米中貿易の衝突から利益を得ると見込まれる国々のなかでは、欧州連合が筆頭に立つ。EUは米中間の二国間貿易の約700億ドル(中国から米国への輸出500億ドル、米国から中国への輸出200億ドル)を取り込むと見込まれる。日本、メキシコ、カナダはそれぞれ200億ドル超を取り込み、その他の国々が得る額は大幅に少なくなる。

2017年に約17兆ドルだった世界貿易と比べれば、これらの金額は大きくないかもしれない。しかし、一部の国にとって輸出の増加は相当な規模になり得る。例えば、メキシコは米中貿易から約270億ドルを取り込める可能性があり、これは同国の輸出総額の約6%に相当する。同様に、オーストラリア、ブラジル、インド、フィリピン、パキスタン、ベトナムでも、輸出総額に対して大幅な増加が見込まれる。

しかし、グローバル・バリューチェーンが広がる世界では、貿易大国の対立は、標的となった国や分野を超えてドミノ効果をもたらす可能性が高い。関税引き上げは、製品の組立企業だけでなく、サプライチェーン上の供給業者にも打撃を与える。米国の関税の影響を受ける中国の輸出量は、東アジアのバリューチェーンに最も大きな打撃を与え、約1,600億ドル縮小させる可能性があると私たちは考えている。

対照的に、北米のバリューチェーンへの影響はより小さいと予想される。中国の関税による悪影響を受けるものの、中国から北米地域(米国、メキシコ、カナダ)への生産移転によって、その影響はほぼ相殺されるだろう。一方、他の地域は明らかに利益を得る。とりわけ欧州では、バリューチェーンに関連する貿易が900億ドル拡大する可能性がある。他のアジア諸国や南米諸国の地域バリューチェーンも恩恵を受けると見込まれるが、アフリカでの恩恵はかなり小さい。

それでも、グローバル・バリューチェーンが地域間でどの程度移転するかは、最終的には関税が一時的なものと受け止められるか、恒久的なものと受け止められるかに左右される。長期にわたる貿易戦争の懸念は、先進国と途上国の双方で、世界の投資の流れ、さらには雇用と成長に重大な影響を及ぼす可能性がある。

争いが利益を生むというのは、広く受け入れられた真理である。しかし、こうした争いには波及効果があり、誰にとっても深刻な結果をもたらすのも事実だ。世界経済と2019年の開発見通しには、現在の貿易摩擦というダモクレスの剣が頭上に垂れ下がっている。これは、世界経済の見通しに関する最近の国連報告書でも強調されている。

現在の貿易摩擦は、不満の表れでもある。進行中の貿易紛争に関する交渉や解決の一部が、世界貿易機関(WTO)の枠内ではなく二国間で行われていることは、多国間貿易体制の弱体化を示している。

貿易摩擦の影響は、国際貿易の流れを再編するだけにとどまらない。多国間貿易体制の改善から、国際社会が2015年に採択した持続可能な開発目標の達成まで、世界的な課題の解決に向けた協力も妨げている。長期的には、これが最も深刻な悪影響となるだろう。誰も勝者にはならない。

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