一部の交通技術が後退しているように見える世界――月面着陸は行われなくなり、コンコルドは退役し、公共交通機関は機能不全に陥る――にあって、完全自動運転車は現代の驚異だ。
スマートカーの最も愚かな部分は、ハンドルの後ろにいる生身の人間かもしれない。しかし、マスクやグーグルなどの力をもってしても、車はどれほど賢いのだろうか。
自動運転車、自律走行車、スマートカーという話はいったん置いておこう。車は何十年も前から自らの問題を診断し、ある程度は自ら修理してきた。故障の診断と修理は、故障の種類にもよるが簡単だ。ソフトウェアが業界を動かし始めたいま、結局はビッグデータの問題ではないだろうか。
診断の段階
初期の量産型燃料噴射システムは、複数のセンサーや各種変数を監視できた。技術の進歩に伴い、燃料噴射システムは一部のパラメーターを調整できるようになった。これは間違いなく自己診断の一形態であり、問題を「修理」する要素さえ含んでいるのかもしれない。
難しいのは、車にそれを実現する技術が備わるかどうかを述べることではなく、何を自己修理とみなせるのかを定義することだ。調整は、原因ではなく問題そのものを修正していると考えることもできる。
自動車業界が変化するなか、内燃機関の計画的陳腐化についても考える必要がある。「基本的な」車でさえ約30個の電子制御装置を搭載し、高級車ブランドの一部ではその数が約100個に達する。自動運転、電動化、あるいはハイブリッド化を考える前の話だ。
コンピューターと制御装置
搭載される電子制御装置の数が指数関数的に増えるなか、現在のインテリジェントカーには、制御装置全体に分散した約1億行のコンピューターコードがある。ブレーキ、照明、安全システムから、エンジン性能、乗員の快適性、さらには室内空間に至るまで、あらゆるものを監視し調整する。そのため、機械的な解決策より、ビッグデータを活用した解決策が中心になりそうだ。
もちろん、機械の故障のなかには致命的なものもあり、どれほど巧妙な技術を使っても修理できない場合がある。たとえば冷却水ホースの破裂だ。しかし、管理システムが問題を克服し、いわば応急処置で一時的にしのげる可能性もある。
別の見方もある。技術がこれほど高度になれば、重大な部品故障のリスクは低下する。つまり、センサーが問題を認識し、問題が起きる前に予兆を捉えて、壊滅的な故障を防ぐということだ。今日でも、その限定的な形は見られる。
予測技術が答えになるかもしれない
ここでビッグデータが本領を発揮する。
部品の寿命には限りがあり、クランクシャフトからドライブシャフトまで、あらゆるものに「寿命」のサイクルがあることを技術者は知っている。数百万マイルに及ぶ試験(つまり、顧客が製品を使用すること)で得られたデータを活用すれば、そのライフサイクルを正確に予測できる可能性がある(もちろん、常に外部要因が影響し、寿命を左右する)。
単純にデータ予測を考えると、技術者は、消費者のうち誤った燃料を給油する人や、空気圧が不足したタイヤで車を走らせる人、あるいは単に車の扱いを気にかけない人の割合を把握できるようになる。また、部品がいつ故障するか、どのような条件が早期故障につながるか、販売された車両100万台当たり何件の故障が発生するかまで見通せる。
ひとつの問いに、百通りの答え
自動運転車は自ら故障を診断し、修理できるのだろうか。できる。できない。ある程度ならできる。
すべては、修理や修復をどう定義するかにかかっている。
将来の車が、これまで以上に多くの故障や状態を診断できるようになることは間違いない。車を所有するうえでのこの機能は、モノのインターネットや、ソフトウェアで制御されるハードウェアの影響を大きく受ける可能性があり、車の有用な寿命を超えて機能し続けることさえありうる。一般的な意味での完全な自己修理を実現するわけではないが、その目標に向けた大きな一歩にはなる。
問うべきなのは、技術によって車の有用な寿命を無期限に延ばせるかどうかだろう。答えは、間違いなく「はい」だ。


