出社義務を検討するリーダーたちは、なぜ問いを取り違えているのか

FILE PHOTO: Workers wait at a bus stop during the morning rush-hour on London Bridge, in London, Britain, December 16, 2025. Most organizations are already operating in a distributed way, which in many ways make it too late for return-to-office mandates.
Most organizations are already operating in a distributed way, which in many ways make it too late for return-to-office mandates.Image: REUTERS/Toby Melville/File Photo
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  • 多くの企業は今も、出社義務の導入やリモートワークへの制限強化を検討している。

  • 多くの人が気づいていないのは、すでにオフィス間、タイムゾーン間、あるいは同じビルの階をまたいで分散型の働き方をしているということだ。

  • 企業はリモートワークの制限に注力するのではなく、どのような勤務形態であっても、生産性の最大化に取り組むべきだ。

出社をめぐる議論は、ここ数年、ビジネス界の見出しを席巻してきた。経営幹部は出社を義務づけ、従業員は反発する。リモートワークの終焉や復活を告げる見出しが、次々と飛び交う。同じことの繰り返しだ。人々がどこに座るべきかという議論に気を取られる一方で、世界で最も競争力のある企業は、はるかに価値あることに取り組んでいる。場所を問わず最高の人材を採用し、分散型チームを真の戦略的優位性として築いているのだ。

実体験から言えば(私は110カ国で7,000人以上の従業員を抱えるグローバル人事・給与計算企業を経営している)、リモートワークをめぐる現在の議論は、そもそも問うべきことを取り違えている。

本当に問うべきなのは、自社が分散型組織として運営する方法を知っているかどうかだ。そう選んだかどうかにかかわらず、すでにそうなっているのだから。

「分散型」とは

ニューヨークに本社を置き、ロンドンに営業チーム、ベルリンにエンジニア、サンパウロにサポートチームを擁する企業を想像してほしい。従業員全員が同じフロアに座り、一体感のある企業文化を持つ「オフィス勤務の会社」だろうか。そうではない。出社方針を設けた分散型組織だ。タイムゾーンやオフィスをまたぐチーム、あるいは同じビルの別の階にいるチームがある時点で、非同期コミュニケーション、異文化間の協働、そして出社状況ではなく成果を管理するという、分散型の働き方に伴う中核的な課題に向き合うことになる。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、この現実が表面化したが、パンデミックがそれを生み出したわけではない。企業は何十年も前から分散型で運営されてきた。かつてはインフラ上の難題が迷路のように立ちはだかっていたが、今ではその空白を埋め、分散型の働き方を円滑にするテクノロジーがある。

データが覆すアウトソーシングの神話

「グローバル採用」と聞くと、人々はコスト削減が目的だと思いがちだ。Deelの「2025年グローバル採用の現状レポート」は、100万件を超える労働者の契約を分析し、そうではないことを示している。

2020年から2025年に設立され、1億ドル以上の資金を調達したスタートアップ約100社では、国境を越えた採用先の上位は英国(12.2%)、カナダ(11.9%)、ドイツ(8.8%)、オーストラリア(5.8%)、スペイン(5.2%)だ。これらは人件費が高く、高度なスキルを持つ人材が集まる市場であり、人件費の節約を目指すスタートアップが自然に選ぶ採用先ではない。一方、より広範な中小企業では、フィリピン、メキシコ、コロンビア、インドへの依存度が高い。

国境を越えた採用の28%をソフトウェア開発者が占め、次いでテクノロジー分野の営業職やAIエンジニアが続く。資金調達額上位のスタートアップは、一般的な中小企業と比べて、海外でソフトウェア開発者を採用する可能性が13.6%高い。これは、高い報酬に見合う希少なスキルを求める、戦略的な人材獲得の判断だ。こうした業績上位のスタートアップをはじめ、企業が優れた人材にアクセスできない理由として、地理的な制約があってはならない。

特に示唆的なのは、世界の国境を越えた採用職種の上位10職種のうち7職種が、営業、マーケティング、または顧客対応に関わる職種であることだ。特定地域の顧客が実際にどう考え、どう購買するかを理解する、現地市場の知識は、遠く離れた本社で再現するのが今なおほぼ不可能だ。そのため企業は、どこであろうと、その知識を得るために現地で人材を採用する。

最も在宅勤務が多い6カ国
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リモートワーカーは、思っているより都市の近くにいる

もう一つ、根強く残る神話も覆す必要がある。リモートワーカーは最寄りの都市から遠く離れた広々とした土地へ移り、そのまま住み続けているという見方だ。ここでも、私たちの調査はそうではないことを示している。

リモートワーカーが大都市圏から離れている平均距離は、2022年以降、毎年縮まっている。米国では、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ヒューストン、サンフランシスコといった都市の近くに住む人の割合が、2021年と同水準になっている。ロンドンやパリにも同様の傾向が見られる。リモートワーカーは今も、こうした都市がもたらす活気、コミュニティ、機会の近くにいたいと考えている。

これは、リーダーが分散型チームについてどう考えるかを見直すきっかけとなるはずだ。「リモート」なら「各地に散らばっている」という思い込みは的外れだ。働く人々は、見慣れた都市圏に集まっている。ただし、あなたのオフィスまで歩いて行ける距離にいるとは限らない。

すべての創業者が問うべきこと

私が話をする起業家の中には、出社義務を課すべきかどうか、今も悩んでいる人がいる。しかし、多くの意味で、その問いにはすでに答えが出ている。市場の動向、自社の採用判断、そして優秀な人材が住む場所として選んだ地域から、その答えは明らかだ。

より適切な問いはこうだ。国境を越えて人材を法令に沿って採用・管理する仕組みがあるか。チームが複数のタイムゾーンにまたがる中で、企業文化を築く方法を知っているか。地理的な制約によって、自社を卓越した存在にする人材へのアクセスを狭めていないか。

2026年、人材獲得競争に勝つ企業は、必ずしもオフィスの福利厚生が最も充実している企業や、最も厳しい出社規則を設けている企業ではない。世界のどこにいても優れた人材を見つけ、どこにいようと、そこに参加する価値があると思えるようにする方法を見いだした企業だ。

出社をめぐる議論は続くだろう。しかし、次の10年を形づくる企業は、議論の決着を待ってはいない。2019年の組織図とは大きく異なるチームを築いている。そして分散型の働き方を譲歩ではなく、競争上の優位性と捉えている。

あらゆる企業がリモートワークをしている。問われるのは、それを適切に行えているかどうかだけだ。

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