いつか、老化を遅らせたり、巻き戻したりできるのだろうか?

People practice Laughter Yoga during the "World Laughter Day" celebrations in Hong Kong May 6, 2012. Laughter yoga was launched in 1995 by Dr. Madan Kataria, a physician in India, and there are now more than 6,000 clubs in 60 countries, the organization said. REUTERS/Tyrone Siu (CHINA - Tags: SOCIETY HEALTH) - RTR31O4A
The “epigenetic clock” is a tool for predicting both biological and chronological ageing and understanding the ageing process.Image: REUTERS/Tyrone Siu
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人類は昔から、永遠の若さに強い憧れを抱いてきた。不老不死の願いをかなえる霊薬や泉の物語は、太古の昔から私たちの想像力をかき立ててきた。こうした神話は大陸ごとに異なる形で語り継がれており、アレクサンドロス大王の征服行も、時のもたらす荒廃を癒やす若返りの川を探し求めたことに由来するとされることさえある。

老化に強い関心を寄せてきたにもかかわらず、その仕組みについて私たちが知っていることは、今もごくわずかだ。なぜ、どのように老化するのか。人によって老化の仕方が違うように見えるのはなぜか。老化を遅らせることはできるのか。そうすべきなのか。幸い、こうした問いを探るための道具は神話よりも精密になった。そして私たちは、マウスのゲノム内で時間とともに変化する活動に基づいて老化を予測する装置を開発した。さらに、この装置は老化を遅らせるために使える可能性もある。

人間や動物の老化は避けられないが、その進み方は種によって異なり、同じ個体の体内でも臓器ごとに違う。しかし、老化の仕方があらかじめ決まっているのか、生物に内在するプログラムの一部なのか、それとも単なる摩耗の結果なのかは、まだわかっていない。

生物学者は、年齢を2種類に分けて考える。生物学的年齢は体がどれほどよく機能しているかを示し、暦年齢は実際の年齢を表す。例えば、若くても大量に飲酒する人は、肝臓の生物学的年齢が非常に高いかもしれない。懸念されることに、健康的な生活を送る若者でも、肝臓の生物学的年齢が非常に高い場合がある。どの要因が生物学的年齢にどう影響するのかは、まだ明らかになっていない。

しかし、環境要因や生活習慣が遺伝子に及ぼす影響を研究するエピジェネティクスが、この問題に新たな光を当てつつある。特に注目されるのが「DNAメチル化」だ。これは細胞が遺伝子の発現、つまり遺伝子のスイッチが入るか切れるか、またそのタイミングを制御する仕組みである。DNAメチル化では、メチル基をDNA分子に付加して、遺伝子を「オフ」の状態に固定する。つまり、年齢を重ねるにつれ、DNAメチル化はDNA配列そのものを変えることなく、遺伝子の働きを変化させる。

Image: 世界保健機関

エピジェネティック・クロック

「エピジェネティック・クロック」は、生物学的年齢と暦年齢の両方を予測し、老化の過程を理解するためのツールだ。DNA上の複数の部位におけるメチル化レベルに基づき、ゲノム内の活動を時間の経過に沿って示す。

ゲノム上の特定部位でDNAメチル化のレベルを測定すると、細胞、組織、臓器の生物学的年齢を推定できる。その年齢を暦年齢と比較し、差を詳しく調べることで、科学者は老化の仕組みを解明し始めることができる。また、老化の進む速さに影響する要因を特定し、がん、肥満、アルツハイマー病など、さまざまな病気との関連を見いだすこともできる。

スティーブ・ホーバスは、最もよく知られたエピジェネティック・クロックの例を2013年の論文で発表した。ホーバスは、がんを含む健康な人と病気の人の組織でメチル化を調べた研究者たちが以前に収集したデータを分析した。そしてそのデータを用いて、生涯を通じて年齢がDNAメチル化レベルにどのような影響を及ぼすかを示した。その過程で、体のあらゆる部位に存在し、年齢とともに変化する353個のマーカーを特定した。このクロックは幅広く応用できる。同じマーカーを使うため、生物のどのDNAを用いるかに左右されず、体内のあらゆる組織や体液のサンプルから生物学的年齢を予測できる。誤差の中央値は3.6年と、十分に実用的な精度を備えている。

ホーバスのエピジェネティック・クロックをめぐる大きな疑問の一つは、その分子構成要素であるメチル基に微細な変化を加え、その変化が老化を遅らせたり速めたりする様子を観察できるかどうかだ。もちろん、倫理面と実務面の両方の理由から、人間でそのような実験を行うことは不可能だ。

マウスでの実験

この課題に取り組むため、私たちの研究チームは、バブラハム研究所と、ケンブリッジにある欧州バイオインフォマティクス研究所の研究者たちとともに、新たなエピジェネティック・クロックを提案した。このツールは『Genome Biology』に発表され、マウスの老化を研究するために開発された初のツールとなった。

生物学的データを理解するための計算手法やソフトウェア、すなわちバイオインフォマティクスは、この問いに取り組むうえで欠かせず、私たちが生物学的年齢の正確なモデルを作ることを可能にした。マウスのクロックによる予測を他のエピジェネティック・クロックと比較し、哺乳類の老化について結論を導き出すことができる。私たちの論文は、マウスのゲノムにある329か所のDNAメチル化の変化から、3週間をわずかに超える誤差で年齢を予測できることを示している。

私たちは、卵巣の摘出など、寿命を縮めることが知られている生活上の変化によって、実際にマウスのエピジェネティック・クロックが速まることを示し、この手法を検証した。人間の健康に悪影響を及ぼすとわかっている高脂肪食も、クロックを加速させた。

次の段階では、マウスのエピジェネティック・クロックの内部の仕組みを詳しく調べ、その刻む速度を変える。例えば、メチル化クロックを変化させる分子や薬剤を特定し、ゲノム編集や薬物治療によってそれらを変えることができるだろう。これにより、老化がDNAメチル化のパターンによって直接左右されるのか、それともゲノムにすでに書き込まれた物語を読み取っているにすぎないのかが明らかになるはずだ。

細胞や組織、さらには生物全体を若返らせるため、老化の時計を巻き戻す新たな方法も探っていく。こうして昔からの探求は続くが、舞台は新天地への遠征から、静かなデータ分析の世界へと移った。いつの日か、エピジェネティクスが状況を一変させ、年を経ても尽きることのない老化の謎に光を当てた分野として振り返られることを願っている。

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