今週、世界保健総会(WHA)がジュネーブで開催され、保健関連の目標の実施について議論します。持続可能な開発のための2030アジェンダ特に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)をいかに実現するかに焦点を当てます。
今年初め、世界保健機関(WHO)は、デジタルヘルスに関する世界戦略の草案を発表しました。同戦略は、手頃な価格で誰もが医療を受けられるようにするうえで、デジタルヘルスの取り組みや、テクノロジーと保健情報システムの活用拡大を中核に据えています。WHAが公共部門の役割に焦点を当てるのは当然ですが、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現を阻む数多くの課題は、政府機関、NGO、企業のいずれも単独では解決できません。2030年までにUHCを実現するには、民間部門と政府がデジタル変革の主要な担い手となる協働のエコシステムを築くことが不可欠です。
ヘルステック分野では、データとテクノロジーのイノベーションが力強く融合し、価値に基づく医療の変革を可能にしつつあると感じています。政府は今、医療システムに実質的な効果と規模をもたらすため、接続性とテクノロジーの導入を確信を持って加速できます。
デジタル化の進展や、遠隔医療など新たなテクノロジーの導入は、すでに境界を取り払い、患者中心の医療システムを生み出しています。負担の軽い医療環境や在宅へ業務を移す利点がますます認識され、デジタル消費者の医療に対する期待も変化するなか、この傾向は2019年以降、急速に拡大するでしょう。
遠隔医療とAI:イノベーションが患者を医療に近づける
医療体制が整った国々では、遠隔医療への移行により待ち時間の解消や移動費の削減が進んでいます。同時に、新興国や農村部の患者が医療を受けやすくするうえでも重要な役割を果たしています(農村部の地域社会では、都市部と比べて医療を受けられる可能性が半分にとどまります)。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの提供を促進する大きな可能性を秘めた、もう一つの注目すべきイノベーション分野が人工知能(AI)です。AIは個別化された治療計画を提供し、患者の治療成果や医療提供の効率を大幅に向上させる可能性を持つことで、患者の治療方法を変えつつあります。しかし、AIの真価を引き出すには、臨床と運用の現場に関する知識と組み合わせる必要があります。私たちが「適応型インテリジェンス」と呼ぶ、人を中心に据えたアプローチです。
こうしたテクノロジーはロボット工学や自動化と組み合わせることで、最終的には医師が患者と過ごす時間を増やす助けとなります。その実現には、医療従事者が新たなテクノロジーや発見に適応できるよう能力開発に投資し、医学生の教育方法も変える必要があります。WHOは、2035年までに世界全体で、熟練した保健医療従事者が約1,290万人不足すると推計しています。ここでいう従事者とは、助産師、看護師、医師です。医療従事者を養成する自国の医学部さえ持たない国もあり、この隔たりを埋めるためにこうしたテクノロジーが真に必要とされています。
新たな医療モデルと未来の病院が変革をもたらす
今日の医師の多く、そして次世代の医療従事者は、未来の病院で働くことになるでしょう。そうした病院は主にテクノロジーを軸に構築され、AI、遠隔医療、つながるケアが標準となります。高度なコンピューターやアルゴリズムが事務作業や定型業務を担い、医療の質と手頃さの双方を高めます。
この構想を実現するうえで、テクノロジーや接続性に関する課題は重大です。しかし、ケア提供において最も重要なのは患者であるという事実を見失ってはなりません。患者を中心とした価値に基づく医療システムを実現するには、フィリップスが「クアドラプル・エイム(4つの目標)」と呼ぶ指標に照らして進捗を測る必要があります。健康的な生活を支え、患者の体験を高め、健康上の成果を改善し、医療費を抑え、医療従事者の職業生活を向上させることです。
革新的な官民パートナーシップがデジタル変革の規模と効果を高める
デジタル化が成果を生むには、共通の目的のために組織を結び付ける革新的なパートナーシップが欠かせません。そのため私たちは、国連人口基金(UNFPA)と連携し、保健上の課題が最も深刻な国々で、5,000万人の女性と少女の健康とウェルビーイングの向上に取り組んでいます。
このパートナーシップを通じて、最も脆弱で支援が届きにくい地域社会に向け、最先端技術を活用し、革新的な資金調達に支えられた質の高い医療ソリューションを開発し、規模を拡大します。まずはコンゴ共和国でパイロット事業を始めます。UNFPAとともに、最貧困層の地域社会に暮らす女性が、健康な妊娠と安全な出産を経験できる可能性を高め、妊娠から出産までのあらゆる段階で、女性と新生児の双方が必要なケアを受けられるよう取り組んでいます。
この連携は、より効果的な意思決定に向けて保健データを収集、分析、活用する各国の能力を高めるという、UNFPAの継続的な取り組みも後押しします。
今週の議論で、世界保健総会がイノベーション、責任あるリーダーシップ、協働のエコシステムという私たちの重視する点を共有し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に近づく具体的なコミットメントと指針が示されることを期待しています。テクノロジーとデジタルツールの力を活用し、公共部門と民間部門が協力する意欲を持てば、2030年までにUHCを実現できる可能性は高まります。


