企業は、新興テクノロジー、変化する消費者の期待、サステナビリティ目標によって進む変革に、継続的に適応しなければならない。
先端テクノロジーは、サプライチェーンのリアルタイムな対応力の実現、サステナビリティへの取り組み(例:ネットゼロ目標)の加速、効率化に向けた業務の自動化に不可欠である。
人工知能とデジタル技術が産業を再編する中、企業は競争力を維持するため、従業員のスキルアップとリスキリングを優先しなければならない。
変化が間違いなく不安をもたらすものであっても、成功するリーダーはそれを受け入れる。不安を乗り越えた先には、前例のない機会が待っていると知っているからだ。特に企業にとって、不確実性の中でレジリエンスを発揮し、成長する力を示す機会は数多くあった。
ここ数年、ほぼ絶え間ない変革が続いている。その背景には、人工知能(AI)などの新興テクノロジー、地政学的動向、消費者の期待の変化、急速なエネルギー転換がある。
この環境で成功するには、企業は迅速に適応し、変化を予測し、潜在的な混乱を戦略的優位性へと転換する方法を見いださなければならない。
この変革は一度限りの出来事ではない。対応力のあるサプライチェーンや迅速な製品開発から、将来に備えた人材に至るまで、事業のあらゆる側面で絶え間ない適応を促す継続的な進化である。つまり、絶え間ない変化には、絶え間ない適応力で応えなければならない。
絶えず適応する企業
私たちが「絶えず適応する企業」と呼ぶ企業は、不確実性を生き延びるだけでなく、その中で成長する術を身につけている。迅速なイノベーション、新しい働き方、目的主導の持続可能な成長、継続的に学び適応する人材、そしてエコシステム全体にわたるシームレスな協働を通じて成功を収める。
テクノロジー主導のアプローチにより、こうした変革の目標を実現可能なものにできる。組織が将来のリスクをどれほど的確に予測し、新たな機会を活用できるかにおいて、テクノロジーが決定的な役割を果たすことは疑いない。
タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)の実践的な専門知識に基づく新たなビジネスロードマップは、今日の変化に富む環境の複雑で相互につながった現実を乗り越え、今後の課題と機会を予測して対応するための道筋を示す。
絶えず適応する企業の重点領域
このロードマップでは、企業が変革を成し遂げ、エコシステムを最大限に活用し、イノベーションと持続可能な成長の原動力となるために不可欠と考える、テクノロジー主導の重点領域を示している。
1. 人間中心のAI戦略へ移行する
TCSの「AI for Business」調査によると、世界の企業の94%が生成AI(GenAI)またはその他のAIソリューションを導入している。しかし、ビジネス上の成果を実現したユースケースはわずか12%であり、明らかに生産性向上に重点が置かれている。AIの恩恵を最大限に得るため、適応力のある企業は人間を中心に据える多層的なアプローチを採用する。
AIは、暗黙知を文脈に即した知識で補い、仕事の効果を高めるのを支援できる。協働型知能を通じて卓越したパフォーマンスを加速させ、人間の能力を拡張する。最も高度な段階では、AIは働き方そのものを変革する可能性を秘めている。機械が人間の発想力を高め、バリューチェーンが根底から再定義される。
2. デジタルツールでネットゼロへの道を加速する
国連気候変動枠組条約による最新の報告書は、憂慮すべき状況を示している。持続可能な開発目標のうち、達成に向けて順調に進んでいるのはわずか17%である一方、極端な気候事象は加速している。
適応力のある企業は、デジタル・サステナビリティ・ツールが、炭素排出量の削減と世界的なサステナビリティ目標との整合に不可欠だと認識している。これには、エネルギー最適化のためのモノのインターネット(IoT)デバイス、AIを活用したサプライチェーンの透明性確保や排出量モニタリング、炭素クレジット追跡のためのブロックチェーンなどが含まれる。
こうしたツールは時間と資源を節約し、組織が規制要件を満たすとともに、株主と社会に価値を生み出すのに役立つ。たとえば、私たちはロールス・ロイスと提携し、2035年までに水素を動力源とする航空機エンジンを開発する。水素が未来のゼロカーボン航空燃料になり得ることを実証すると、両社は約束している。
人、地球、製品に合わせて業務を整えることで、企業は業務の分断、文化的な惰性、技術面での盲点など、適応力を妨げる障壁を乗り越えられる。
3. 先端テクノロジーを組み込み、サプライチェーンのリアルタイム対応力を高める
ガートナーの最近の報告書は、サプライチェーン関連組織の50%が2024年までに、AIと高度な分析機能を支えるアプリケーションに投資すると予測した。テクノロジー主導のサプライチェーンを持つ企業は、より高い対応力とレジリエンスを備えている。
企業内外の構造化データと非構造化データを組み合わせるビッグデータ分析は、サプライチェーンの動向をリアルタイムで把握する手がかりとなる。これにより企業は、混乱を予測し、迅速に対応できる。
AIと機械学習は、結果の予測、プロセスの自動化、効率の向上に役立つ。価値あるサプライチェーンデータにアクセスできれば、企業はその情報を製品やサービスの改善に活用できるため、イノベーションも促進される。
4. AIを活用した自動化を導入し、インテリジェントな業務を実現する
今後10年間で、産業オートメーションの世界市場は年率10%の成長が見込まれており、市場規模は2024年の2,340億ドルから2033年までに5,300億ドルに拡大する。AI、機械学習、ロボティック・プロセス・オートメーションをシステムに導入する企業は、反復作業を効率化し、プロセスを最適化し、人手の介入を減らせる。
IoTセンサーとリアルタイムデータ分析により予知保全が可能になり、設備の稼働時間を確保しながら停止時間を最小限に抑えられる。こうした自律型の業務は、効率を高め、コストを削減し、生産性を大幅に向上させる。
5. 新たなデジタルスキルで将来に備えた人材を育成する
私たちの調査によると、リーダーのほぼ半数が、AIの影響はインターネットと同等以上になると考えている。多くのリーダーは、3年以内に従業員の大半が日常的に生成AIを使うようになると見ている。
この変革を実現するため、ビジネスリーダーは従業員のスキルアップとリスキリングに向けた包括的な戦略を策定することが不可欠である。TCSは45万人を超える従業員に生成AIの研修を実施し、技術、プロンプト、期待される成果を理解できるようにした。
また、実践的な学習やさまざまなレベルでの専門性開発に向けて、AI体験ゾーンを設けている。
6. 製品開発を加速する
インテリジェント・エイジのデジタル技術は、企業にとって働き方を進化させ、時代遅れの考え方から脱却し、エコシステムの強みを生かす大きな機会となる。
また、企業はこれらの技術により、前例のない速さでイノベーションを起こし、試行を重ね、改善を進められる。イノベーションと差別化を支えるためにテクノロジーを取り入れる組織は、競合を上回り、同業他社より2.8倍速く成長することが、調査で一貫して示されている。
絶えず適応する企業の力
こうした戦略的な重点領域により、絶えず適応する企業は、目的、俊敏性、レジリエンスを統合しながら、今日の課題を乗り越えられる。人、地球、製品に合わせて業務を整えることで、企業は業務の分断、文化的な惰性、適応力を妨げる技術面での盲点などの障壁を克服できる。
その結果、絶えず変化する世界の複雑で相互につながった現実の中で、継続的に適応し、成長するための備えを十分に整えた企業が生まれる。


