要点
新たな研究により、エタノールをベースにしたゲルを扁平上皮腫瘍に直接注入すると、100%の治癒率を達成できることが示された。この低コストで簡単に実施できるがん治療は、発展途上地域で治療成績を大きく改善する可能性がある。
エタノールを用いたがん治療
デューク大学の研究者らは、ハムスターのモデルで扁平上皮がんにエタノールベースのゲルを直接注入し、100%の治癒率を達成した。この研究は、『Nature Scientific Reports』に掲載され、エタノールアブレーションと呼ばれる既存の低コスト治療法に着想を得て、より幅広い種類の腫瘍に効果を発揮するよう手法を改良した。
カクテルをおいしくするあのアルコール、エタノールは、タンパク質を破壊し、細胞を致命的な脱水状態にするため、注入すると一部の腫瘍を死滅させることができる。これをエタノールアブレーションと呼ぶ。エタノールアブレーションはすでに肝がんの一種の治療に用いられており、1回あたりの費用は5ドル未満で、成功率は手術と同程度だ。
しかし、治療法としてのエタノールアブレーションには限界がある。研究者らは、エタノールにエチルセルロースを混ぜ、腫瘍内でゲルに変化して注入部位の近くにとどまる溶液を作ることで、この手法の改善を試みた。
研究チームは、口腔扁平上皮がんを患うハムスターを使ったモデルで、このゲルを試験した。対照群のハムスターには腫瘍に純エタノールを注入し、実験群には新しいエタノールゲルを投与した。エタノールゲルを投与されたハムスターでは、7日後に7つの腫瘍のうち6つが完全に退縮した。8日目までに7つすべてが消失し、治癒率は100%となった。
すべての人にがん治療を
がん治療はどこでも高額だが、発展途上地域では、そもそも受けられないことが多い。発展途上地域では最先端技術が不足しており、医療従事者や電力さえ利用できない場合がある。そのため、発展途上地域でがんと診断された人は、先進地域の人に比べて、がんで死亡する可能性がはるかに高い。
新しいがん治療の研究の大半は、非常に高額な手法に焦点を当てており、その一部は米国のような場所でさえ経済的に実現可能ではない可能性がある。こうした新しい手法では、治療にあたりほぼ例外なく 高度な医療施設が必要となる。そのため、『Nature』の研究で示されたような、簡便で低コスト、かつ手術を伴わないがん治療が、発展途上地域で強く求められている。
この研究で用いられたサンプル数の少なさと動物モデルという制約から、概念実証の段階を超えるには、さらなる研究が必要だ。それでも、結果は非常に有望である。研究チームは、エタノールベースのゲルを1回注射するだけで、特定の種類の腫瘍を治癒できる可能性があり、子宮頸部の一部の前がん病変や乳がんの治療にも使えるかもしれないと考えている。何よりも、研究が進展すれば、世界中の患者に恩恵をもたらすだろう。




