私が世界経済フォーラムを創設してからの47年間、話し方を変えると、考え方も変わり始めることを、私は身をもって見てきました。同様に、考え方を変えれば、行動の仕方も変わります。これは私たち全員に当てはまります。家庭にいる一市民であれ、政府の長として重大な決定を下す立場であれ、私たちが使う言葉や世界についての考え方が、その後の行動を形作るのです。
過去10年間に、環境課題の形成に向けた姿勢や取り組み方が変化したことは、その好例です。2005年、世界経済フォーラムが、気候変動や水の安全保障といった差し迫った地球規模の環境課題への対応に役立つ、分野横断的な対話を促進し官民協力の可能性を示し始めた当時、こうした問題について影響力のある関係者の間に実質的な協働はありませんでした。たとえば政府、企業、市民社会組織のどこで働いているかによって、人々は環境課題について別々に話し、行動する傾向がありました。
今日、なお多くの課題が残されているものの、あらゆる関係者が参加した10年にわたる官民の大きな関与によって、より協働的な新しい行動課題が形作られました。その結果、企業のリーダー、市民社会の代表者、政策立案者は、地球の生物圏を守る必要性について、10年前とは大きく異なる形で語り、考え、行動するようになっています。実際、2015年、世界各国は協働による策定プロセスを経て、第17の持続可能な開発目標そのものを、環境と持続可能な開発に向けたグローバル・パートナーシップの推進に全面的に焦点を当てることに合意しました。
そのため、2016年に私の著書『第四次産業革命』が出版されて以来、テクノロジーとその世界への影響について、私たちの語り方が変わり始めたことを大変うれしく思います。新興テクノロジーが経済、社会、さらには人間としての私たちのあり方までも変革する力を持つことに気づく人が増えています。メディアの議論では、新技術の倫理、価値観、社会的影響がしばしば取り上げられるようになりました。人工知能がどのように私たちに影響を与えるために使われるのか、社会的包摂の促進と犯罪行為のどちらに暗号資産がより効果的なのか、テクノロジーがより広く浸透し、強力になる時代に活躍するためにはどのようなスキルを身につけるべきか、といった問いが今ではよく聞かれます。「第四次産業革命」という言葉は一般に使われるようになり、進行中の変化の大きさを伝えています。
しかし課題は、第四次産業革命が浮き彫りにする課題に対応する前に、考え方をゆっくり変えるための10年の猶予がないことです。今日進行している変化の速度、規模、範囲に加え、起業家、企業、政策立案者がすでに新技術をめぐるルール、規範、技法、インフラを作り始めていることを考えれば、10年後では手遅れです。新技術の構造はおおむね定まり、それを生み出した人々の視点や価値観が、私たちを取り巻き、私たちの一部となった数多くのテクノロジーに深く組み込まれているでしょう。
過去の産業革命について私たちが理解しているのは、それらが莫大な富と機会を生み出す一方で、大きな害ももたらすということです。多くの人々が恩恵をまったく受けられず、負の影響を被るのは、発言力や権力が最も小さい人々であることが少なくありません。したがって、技術の未来の進化を成り行きに任せたり、市場の力が望む未来を作ると信頼したりするだけでは不十分です。そうではなく、私たちは今日、語り、考え、行動する必要があります。
それが、私の新著『第四次産業革命を形作る』の執筆動機です。本書は、新興テクノロジーを理解し、議論し、それをめぐる決定を下すまでのプロセスを加速させることを目指しています。今日の技術革命を動かす最も重要な力学を概説し、最新の科学的ブレークスルーをめぐる議論で見過ごされがちな重要な関係者に光を当て、世界を代表する思想家200人以上の知見を活用して、人類の未来に不可欠な12の技術分野を探ります。
第四次産業革命について考え、行動するには、新しいタイプのリーダーシップが必要です。私たちはこのアプローチを「システム・リーダーシップ」と呼びます。この文脈でのシステム・リーダーシップとは、テクノロジーそのものの設計を主導するだけでなく、その統治のあり方や、あらゆる背景を持つ人々に影響を及ぼす際に示される価値観についても、リーダーシップを発揮することを意味します。
個人、企業幹部、社会に影響力を持つ人々、政策立案者を含むすべての関係者に、新しい考え方と行動が求められています。しかし、関係者の権力や役割はそれぞれ異なるため、政府、企業、個人が今日つかむことのできる機会も異なります。
政府にとって最も緊急の課題は、テクノロジーを統治する新たなアプローチのための余地を開くことです。とりわけ政府は、テクノロジーと、それを採用する民間部門の主体が持つ俊敏性、流動性、柔軟性、適応性に見合う「アジャイル・ガバナンス」の概念を取り入れる必要があります。これは、どのような新しいルールが必要かを考えるだけでなく、他のセクターと協力しながら、時間の経過に応じてルールを策定し更新するまったく新しい方法を見いだすことを意味します。
企業にとって最も重要な戦略は、人材に同時に投資しながら、より多くの実験を行うことです。第四次産業革命はまだ初期段階にあり、新技術の可能性は十分に理解されていません。しかし、産業や組織の周縁部から破壊的変化が生じることがますます多くなっているなど、この革命を動かす力学の一部は予測できます。テクノロジーを直接試してみて初めて、組織は何ができるのかを自ら確かめられます。実験は事業に最も近い人々が行うのが最適であるため、従業員のスキル向上に継続的に取り組み、起業家精神を取り入れることも必要です。
最後に、市民にとって最も重要な行動は、これらの課題に関与し、有権者、消費者、従業員、市民社会組織のメンバー、地域社会のリーダーとして声を上げることです。今日を生きる幸運に恵まれた私たちには、将来の世代が持続可能で包摂的な、テクノロジー主導の未来で暮らし、生きる意味を見いだせるようにする責任があります。
ですから私たち全員が、望ましい未来像を築き、テクノロジーの開発と導入のあり方に影響を与える一員となるべきです。語り方を変えることで考え方が変わり、行動する新たな機会が生まれます。世界中のできるだけ多くの人々にとって、そうした望ましい未来像を現実にするため、今、ともに行動しましょう。
クラウス・シュワブ教授の新著『第四次産業革命を形作る』は、2018年1月18日に刊行され、こちらから入手できます。


