新しい「剥がして積み重ねる」方法で作られる次世代デバイスには、皮膚に装着できる電子チップが含まれる可能性がある。
あらゆる電子機器の中核には、トランジスタなどの半導体素子が小さな都市のように集積した、硬く冷たいコンピューターチップがある。コンピューターチップは剛性が高いため、それを動力源とするスマートフォン、ノートパソコン、時計、テレビなどの電子機器も同様に柔軟性に乏しい。
MITの技術者が開発したプロセスが、複数の機能を備えた柔軟な電子機器を低コストで製造する鍵となる可能性がある。
このプロセスは「リモートエピタキシー」と呼ばれ、グラフェンの中間層で覆った、同じ材料からなる大きく厚いウェハーの上に、半導体材料の薄膜を成長させる。研究者は半導体薄膜を成長させた後、グラフェンで覆われたウェハーから剥がし、ウェハーを再利用できる。ウェハー自体は、材料の種類によっては高価な場合がある。この方法で、チームは同じ基盤となるウェハーを使い、薄く柔軟な半導体薄膜を何枚でも複製して剥がすことができる。
本日、学術誌Natureに掲載された論文で、研究者らはリモートエピタキシーを使い、あらゆる機能性材料の自立膜を作製できることを実証した。さらに重要なのは、異なる材料で作られた薄膜を積み重ね、柔軟で多機能な電子デバイスを製造できる点だ。
研究者らは、このプロセスによって、さまざまな用途に使える伸縮性のある電子薄膜を製造できると期待している。用途には、仮想現実に対応したコンタクトレンズ、自動車の曲面に沿う太陽光発電スキン、天候に反応する電子繊維などが含まれ、これまでマーベル映画の世界の話と思われていた、その他の柔軟な電子機器も実現できる可能性がある。
「この技術を使えば、あらゆる半導体材料を組み合わせて、新たなデバイス機能を備えた柔軟なチップを作れます」と、MITの機械工学准教授、ジーファン・キム氏は語る。「どんな形の電子機器でも作ることができます。」
キム氏の共著者には、MITのヒョン・S・クム、キム・ソンギュ、ウェイ・コン、クアン・チャオ、ポン・チェン、ジェウ・シム、サンホン・ベ、チェヨル・チェ、ルイジ・ランノ、スンジュ・ソ、サンホ・リー、ジャクソン・バウアー、キャロライン・ロス各氏が名を連ねる。また、ウィスコンシン大学マディソン校、コーネル大学、バージニア大学、ペンシルベニア州立大学、中山大学、韓国原子力研究院の研究者らも協力した。
時間を稼ぐ
キム氏らがリモートエピタキシーを用いた最初の成果を報告したのは2017年だった。その後、まず複数の希少金属を組み合わせた厚く高価なウェハーにグラフェン層を置くことで、薄く柔軟な半導体材料の膜を作製できた。各金属の原子をグラフェンで覆ったウェハー上に流すと、原子はグラフェンの上に、基盤となるウェハーと同じ結晶パターンの膜を形成した。グラフェンは粘着しにくい表面となり、研究者はそこから新しい膜を剥がすことができた。グラフェンで覆われたウェハーは残り、再利用できた。
2018年、チームはリモートエピタキシーを使い、周期表の第3族および第5族の金属から半導体材料を作れる一方、第4族の金属からは作れないことを示した。その理由は、極性に行き着くと判明した。つまり、グラフェン上に流す原子と、基盤となるウェハー内の原子との間に生じる電荷の違いだった。
この発見以来、キム氏らはより複雑な半導体材料の組み合わせを次々に試してきた。今回の論文で報告されたように、チームはリモートエピタキシーを用いて複合酸化物から柔軟な半導体薄膜を作製した。複合酸化物とは、酸素と少なくとも2種類の他の元素からなる化合物だ。複合酸化物は幅広い電気的・磁気的特性を持つことで知られ、一部の組み合わせは、物理的に伸ばされたり磁場にさらされたりすると電流を発生させる。
キム氏によると、複合酸化物の柔軟な薄膜を製造できれば、振動に反応して伸縮し、その結果として電気を生み出すシートやカバーなど、新しいエネルギー回収デバイスへの道が開ける可能性がある。これまで複合酸化物材料は、厚さが数ミリメートルある剛性の高いウェハー上でしか製造されておらず、柔軟性が限られるため、エネルギーを生み出す能力も限られていた。
研究者らは複合酸化物薄膜を作るため、プロセスに手を加える必要があった。最初、チタン酸ストロンチウム(ストロンチウム、チタン、3個の酸素原子からなる化合物)などの複合酸化物を作ろうとしたところ、グラフェン上に流した酸素原子はグラフェンの炭素原子と結合しやすく、基盤となるウェハーのパターンに沿ってストロンチウムやチタンと結合する代わりに、グラフェンの一部を削り取ってしまうことがわかった。驚くほど単純な解決策として、研究者らはグラフェンをもう1層加えた。
「最初のグラフェン層が削り取られる頃には、すでに酸化物化合物が形成されていることがわかりました。つまり、元素状の酸素は目的の化合物を形成すると、グラフェンとの相互作用が弱まるのです」とキム氏は説明する。「グラフェンを2層にすることで、化合物が形成されるまでの時間を稼げます。」
剥がして積み重ねる
チームは新たに調整したプロセスを使い、複数の複合酸化物材料から薄膜を作製し、各層を作るたびに厚さ100ナノメートルの膜を剥がした。また、異なる複合酸化物材料の層を積み重ね、わずかに加熱して実質的に接着させることで、柔軟で多機能なデバイスを作ることもできた。
「機能性電子材料はすべて厚いウェハーの形でしか存在しなかったため不可能だった、複数のナノメートル厚の膜をレゴブロックのように積み重ねることを、今回初めて実証しました」とキム氏は語る。
ある実験では、チームは2種類の複合酸化物、磁場中で膨張することで知られるコバルトフェライトと、伸ばすと電圧を発生する材料PMN-PTの薄膜を積み重ねた。研究者らが多層膜を磁場にさらすと、2つの層が連動し、膨張すると同時に小さな電流を生み出した。
この結果は、異なる機能を持つ材料を組み合わせ、従来は1つのデバイスにまとめることが難しかった柔軟な電子機器を、リモートエピタキシーで作製できることを示している。コバルトフェライトとPMN-PTの場合、それぞれ異なる結晶パターンを持つ。キム氏によると、1枚のウェハー上で高温により材料を成長させる従来のエピタキシー技術では、結晶パターンが一致する材料しか組み合わせられない。リモートエピタキシーなら、研究者は再利用可能な異なるウェハーを使ってさまざまな薄膜を作製し、結晶パターンに関係なく積み重ねることができるという。
「この研究の全体像は、まったく異なる材料を一か所に組み合わせられるということです」とキム氏は語る。「センサー、コンピューターシステム、バッテリー、太陽電池を含む層からなる、薄く柔軟なデバイスを想像できます。つまり、柔軟で自ら電力を供給する、モノのインターネット向けの積層チップが実現するかもしれません。」
チームは半導体薄膜のさまざまな組み合わせを研究し、試作デバイスの開発にも取り組んでいる。その一例が、キム氏の呼ぶ「電子タトゥー」だ。人の身体に貼り付いて形状に沿う柔軟で透明なチップで、体温や脈拍などのバイタルサインを感知し、無線で伝達できる。
「最高水準の機能を備えた、薄く柔軟なウェアラブル電子機器を作れるようになりました」とキム氏は語る。「剥がして、積み重ねるだけです。」
この研究は、MITとウィスコンシン大学マディソン校の研究者らによる緊密な共同研究の成果であり、国防高等研究計画局(DARPA)の支援を受けた。


