NASAの主任宇宙飛行士が危機一髪の経験から学んだこと

The International Space Station is seen with the docked space shuttle Endeavour in this photo provided by NASA and taken May 23, 2011. The photo was taken by Expedition 27 crew member Paolo Nespoli from the Soyuz TMA-20 following its undocking and is the first-ever image of a space shuttle docked to the International Space Station. REUTERS/NASA/Handout (UNITED STATES - Tags: SCI TECH) FOR EDITORIAL USE ONLY. NOT FOR SALE FOR MARKETING OR ADVERTISING CAMPAIGNS. THIS IMAGE HAS BEEN SUPPLIED BY A THIRD PARTY. IT IS DISTRIBUTED, EXACTLY AS RECEIVED BY REUTERS, AS A SERVICE TO CLIENTS - RTR2NEY1
NASA Chief Astronaut Chris Cassidy shared what he learnt from a near disaster in space.Image: REUTERS/NASA/Handout
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NASAの主任宇宙飛行士クリス・キャシディは、国際宇宙ステーションで数カ月を過ごし、6回の船外活動を行った。「頭にガラスの球をかぶり、片手を金属の塊に置いて、足元では地球が秒速5マイルで流れていく。マイクに向かって口にすることすべてを世界中の人が聞いている。そんな状況を想像してみてください」と、最近のウォートン・リーダーシップ会議で語った。

NASAに加わる前、キャシディは海軍特殊部隊(SEAL)として地中海地域とアフガニスタンで10年間勤務し、ブロンズスター勲章を2つ受章した。彼のSEALチームは、2001年9月11日のテロ攻撃後、最初にアフガニスタン入りした部隊だった。彼は、お気に入りのリーダーシップの逸話はその時期のものだと述べ、聴衆に語った。

キャシディによると、小隊長だった彼は、当時の上官ボブ・ハーワードに作戦計画を急いでまとめて説明しなければならなかった。ハーワードを彼は「気難しい年配の海軍大佐……GIジョーみたいな傷跡があって、ほとんど笑わない。いや、一度も笑わない」と評した。(現在は退役した中将であるハーワードは、昨年2月、ドナルド・トランプ氏の国家安全保障担当大統領補佐官への就任を辞退したことでニュースになった。)計画には軍事情報に加え、ヘリコプター、弾薬、食料、水に関する兵站の詳細や、幾重もの不測事態への備えが盛り込まれていた。

キャシディは大佐への説明に緊張していたが、うまくいった。ハーワードは質問はないと言い、承認をつぶやいた。会議が終わり、キャシディはそこで気づいた。「時計を見たら、しまった、ヘリに乗るまであと38分だ。たぶん食事もして、トイレにも行かなくちゃならない。」

当時のアフガニスタンでの米軍の生活環境は、かなり簡素だったとキャシディは語った。「テントがいくつかと電線が何本か。明かりを一つつるした線が一本あったかもしれない。それに食堂……寝る場所も簡素なものだった。」彼が向かったトイレは、カンダハルの滑走路に向かって開いた側を設けた、合板3枚でできたものだった。「便座」は、穴の上に渡した桟に載せたタイヤ3本だった。

夜だった。キャシディはヘッドランプをつけてトイレに入った。「照らし出されたのは、真ん中のタイヤに座るボブ・ハーワードだった。」キャシディには、隣に座る以外ほとんど選択肢がなかった。

「私たちは二人とも夜の暗闇を見つめていて……永遠に続くように思えました」とキャシディは語った。「すると突然、彼が『なあ、お前に何を期待しているか分かるか?』と言ったんです。」キャシディは、自分の計画の詳細を思い浮かべながら、分かっていると答えた。しかしハーワードはただ、「『正しい判断をして、仲間を無事に連れ帰ることを期待している』」と言った。

「頭にガラスの球をかぶり、片手を金属の塊に置いて、足元では地球が秒速5マイルで流れていく。そんな状況を想像してみてください。」

キャシディは、それこそがあらゆる準備と訓練の本当の目的なのだと「雷に打たれたように」悟ったという。チームを率い、適切な判断を下し、仲間を無事に帰還させることだ。「速く走れるか、弾をまっすぐ撃てるか、ヘリから飛び降りられるかは関係なかった……すべてはリーダーシップの問題だった。だから、あれは私の人生でリーダーシップについて最も心に刻まれた瞬間のようなものです。それがアフガニスタンのカンダハルの便所で起きたんです。」

起こるはずのない問題

キャシディによると、6回の船外活動のうち5回は「計画どおり」だった。6回目はそうではなかった。この出来事を覚えている人もいるだろう。2013年7月16日付のABCニュースの見出しは、こう伝えた。「船外活動中の宇宙飛行士、溺れかける。」

この出来事を振り返り、キャシディは、地上チームと宇宙飛行士2人、すなわち自分とイタリア人の同僚ルカ・パルミターノとのチームワークに、リーダーシップ上の教訓があったと語った。キャシディは船外活動のリーダーだったが、「実際に指揮を執っていた」のはヒューストンのフライトディレクターだったという。

問題の最初の兆候は、船外活動開始から約30分後に現れた。パルミターノのCO2センサーが、異常に高い数値を示し始めたのだ。CO2が多すぎると健康に問題が生じる可能性がある。しかしキャシディによると、宇宙服の中で激しく作業して汗をかくと、水分がセンサーに付着し、「ちょっと気まぐれな動きをすることがある」のは周知の問題だった。CO2センサーが現実離れした数値を示し始めた場合、船外活動を続け、数値ではなく自分の体調に注意を払うのが、認められたミッション手順だった。

「ある意味、宇宙服が私たちに何かを伝え始めている。でも私たちはまだ比較的落ち着いていて、少し油断していた。以前にもこういうことが起きるのを見ていたからです」とキャシディは語った。

数分後、パルミターノが頭に水がたまっていく感覚を覚えた。これが次の異変の兆候だった。キャシディによると、パルミターノはその前の週、初めての船外活動の後にもヘルメット内に少量の水があった。水が見つかったのは船外活動を終えてからで、宇宙飛行士も地上要員も特に気に留めなかった。汗か、パルミターノの飲料水バッグの飲み口から少し漏れた水だろうと考えていた。

しかし約45分後、パルミターノは、前回の6時間に及ぶ船外活動の後と同じくらいの水を頭に感じていた。彼はその感覚を地上管制に報告した。キャシディによると、問題を声に出せば、取るべき行動を決めるプロセスが始まることを、キャシディもパルミターノも分かっていた。二人は船外活動が早期に打ち切られないことを願っていた。しかし前の週と同じく、それは汗か飲料水バッグの水だというのが大方の見方だった。

その間、キャシディはもう一人の宇宙飛行士に近づき、頭の上で揺れるグレープフルーツ半分ほどの水の塊と、顔の近くに浮かぶ小さな水滴に気づいた。(宇宙では水は塊になって漂い、物にくっつく。)パルミターノは水滴の一つを口でつかみ、水が氷のように冷たいと報告した。

ぞっとする体験

「そのとき、これはまずいと分かりました」とキャシディは語った。宇宙服内の水の発生源は、汗、尿、腹部に装着した飲料水バッグの水で、いずれも体温と同じ温度のはずだったと説明した。氷のように冷たい水の発生源は一つだけで、それは宇宙服の冷却システムだった。宇宙飛行士は水の通る管を織り込んだ長い下着を着用する。これはエアコンのように働き、その機構は宇宙飛行士の背中のバックパックに収められている。

「冷却システムから宇宙服の中に水が入り込む可能性があるとは、これまで一度も想定していませんでした。設計上、そんなことは起こりえないと考えられていたんです。」しかし、実際には起こりえた。

ヒューストンは船外活動を終了することを決めた。しかし、状況はまだ緊急事態とは見なされていなかった。キャシディによると、NASAの用語で「terminate(終了)」は、秩序立てて作業を終え、速やかに宇宙船へ向かうことを意味する。すべてを放り出してできるだけ早く戻る「abort(中止)」とは異なる。キャシディは当時、「終了」の判断に同意していたと語った。

「軍にいた頃、問題は地図の折り目や方眼の交点、そして夜に起きると冗談を言っていました。まさに同じような状況が、だんだんそろってきていたんです。」

宇宙船はちょうど暗闇に包まれようとしていたとキャシディは指摘した。地球を周回すると、90分ごとに一周し、日照が45分、夜が45分続く。彼はこう語った。「軍にいた頃、問題は地図の折り目や方眼の交点、そして夜に起きると冗談を言っていました。まさに同じような状況が、だんだんそろってきていたんです。」

船外活動を終了する決定が下されたとき、キャシディには片付けるものがあり、パルミターノに先に宇宙船へ戻るよう伝えた。「こっちは荷物があるから」と彼は請け合った。パルミターノは戻り始めた。しかし、キャシディにも地上チームにも知られないまま、この宇宙空間での移動によって大量の水がパルミターノのヘルメットに流れ込んだ。水が耳、目、鼻、通信マイクをふさいだため、ほとんど聞こえず見えない状態で、彼は手探りで戻り、ようやくエアロックを通り抜けた。

それでも、彼はすぐにはヘルメットを外せなかった。キャシディの説明によると、パルミターノはエアロックを安全に再加圧するために必要な20分間、待たなければならなかった。そばにいたキャシディは、仲間の宇宙飛行士の口が水でふさがれておらず、呼吸できているか確かめるため、ずっと口元を見ていた。「彼には聞こえませんでしたが、私たちは手を握り合っていました。私たちがそばにいることは分かっていたし、圧力が戻ってきていることも、なんとなく感じ取れたんです。」幸い、パルミターノはけがをせずにこの出来事を乗り越えた。

「集団思考」を避ける

「NASAのコミュニティーにとって、これは本当に大きな出来事でした……ヘルメットに水が入った場合の手順はありませんでした。まさか、そんなことが起きるはずがない、と考えていたんです。それが起きた。」原因は、冷却水に含まれる汚染物質や微粒子が、システムを定期的に洗浄していたにもかかわらず時間とともに蓄積し、いくつかのバルブを固着させたことだと特定された。キャシディによると、現在使われている宇宙服は1970年代に製造されたもので、「かなり古い」。

「ヘルメットに水が入った場合の手順はありませんでした。まさか、そんなことが起きるはずがない、と考えていたんです。それが起きた。」

キャシディによると、NASAは洗浄方法を変更し、ヘルメットには吸水パッドが追加されたが、メディアは同様の(ただし軽微な)事例を2件報じている。2015年2月と2016年1月に、テリー・バーツとティム・コプラの船外活動で、それぞれヘルメット内に小さな水の塊が見つかり、どちらの事例も冷却システムが原因とされた。

自身の経験について、キャシディはこう語った。「私たち全員にとって最大の教訓は、『集団思考』を避けることでした。『原因は飲料水バッグに違いない』とすぐ飛びつくのは簡単です。でも、飲料水バッグが原因ではありませんでした。」

何よりキャシディは、パルミターノにエアロックへ戻るよう伝えた後、自分の直感を信じるべきだったと感じていた。もう一人の宇宙飛行士のシルエットが宇宙ステーションの角を曲がって消えるのを見て、突然、胃のあたりに不安を覚えたことを思い出す。「くそっ、これが『相棒』という関係の本質だ」と考えたという。「だから二人一組で行動するんです。今、彼のそばにいるために。」もし一つだけ違う行動ができるなら、その気持ちをヒューストンに伝え、パルミターノが宇宙船へ戻るときに一緒に行けばよかったと、キャシディは語った。

彼はまた、明確なコミュニケーションの重要性についても話した。ミッションを危険にさらさないため、パルミターノは自分が感じた水の量や、いつ感じたのかを控えめに伝えたことを、後に悔やんだという。キャシディは、地上チームに「私たちが見ていたのと同じ状況を伝える」ために、二人とも自分たちが経験していることを正確に伝えていなかったと述べた。

聴衆の一人は、航空業界で目標達成を安全より重視する傾向を指す「ミッション・イティス(ミッション遂行への執着)」が、船外活動中のNASAにあったと思うか、キャシディに尋ねた。

キャシディは否定し、ヒューストンはこの出来事に「かなりうまく対応し……今では将来の不測事態にさらに備えられている」と思うと述べた。ただし、地上チームも宇宙飛行士も、前の週の船外活動後にパルミターノの頭にあった大量の水に、もっと注意を払うべきだったという。「私たちは何となく見過ごしてしまった……私たちは皆、責任があり、皆が関わっていたんです。」

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