職場の自動化をめぐる扇情的な論調を乗り越え、人間と機械の協働によって、より高い生産性を実現する方法を考える時が来ている。問うべきなのは、人工知能(AI)やロボティクスによって何件の仕事が置き換えられるかではなく、人材と機械を最適に統合するために、仕事をどのように再構成できるかである。
この課題に取り組む組織には、次の4段階のアプローチが役立つ。
1. 職務ではなく仕事から考える
職場のデジタル化により、組織は仕事を進めるための新たな選択肢を得ている。従来の職務は、世界中のどこにいても、従業員、UpworkやTopcoderなどのプラットフォーム上の人材、フリーランサー、提携パートナー、そしてもちろん自動化によって遂行できる、独立した個々のタスクに分解できる。
したがって、人間と機械を最適に統合する方法を決める際には、職務ではなく仕事に焦点を当てるべきだ。この出発点から、組織は、自動化に最も適した定型業務と、共感力や創造性など人間のスキルを必要とする、より変化に富んだ対話型の業務を切り分けられる。
では、どのタスクが自動化に最も適しているのか。また、各タスクに最適なツールを組織はどのように選べばよいのか。
2. 自動化の機会を理解する
この図が示すように、主要な自動化技術3種類と、それぞれの技術に最も適した仕事を理解することが不可欠だ。

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA):3つの技術のうち最も成熟したロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)は、大量かつ複雑度の低い定型的な業務プロセスを自動化する。たとえば、従業員の連絡先や給与データの更新、あるソフトウェアから別のソフトウェアへのデータ転送(表計算ソフトからCRMシステムへの転送など)が挙げられる。
RPAはこうしたプロセスの速度と正確性を高められる。たとえば、銀行記録、信用格付け機関、納税申告書などのデータを調べる作業を含め、多くのデータ分析や統合作業を行う融資審査担当者を考えてみよう。ボット、つまり自動化スクリプトを実行するアプリケーションは、こうした作業を人間より速く、誤りなく遂行できる。その結果、担当者は融資申請をより速く処理でき、顧客サービスの向上につながる。
コグニティブ・オートメーション: AIや機械学習を含むコグニティブ・オートメーションは、非定型で複雑なタスクにおいて、人間の能力を補強したり代替したりするためによく用いられる。コグニティブ・システムは膨大なデータを迅速にふるいにかけるだけでなく、学習もできるため、さまざまな分野における専門性が時間とともに高まり、組織の知識基盤を拡充する。
たとえば、銀行のコールセンターでは、コグニティブ仮想エージェントを使って一般的な取引に関する質問に答え、人間の担当者が共感力や人間味を必要とする課題に集中できるようにすることがある。たとえば、他行への乗り換えを検討している顧客への対応などだ。
ソーシャル・ロボティクス:ソーシャル・ロボティクスとは、物理的な機器、AI、センサー、移動機能を組み合わせ、現実空間で人間と対話する機械を実現するものだ。
ソーシャル・ロボティクスの例として、Amazonの倉庫で従業員とともに働く同社のKivaロボットが挙げられる。これらのロボットを使うことで、Amazonは作業員が倉庫内を歩き回って商品を集めるという、危険で時間のかかる作業をなくした。代わりにロボットが商品を集めて作業員のもとへ運び、作業員がAmazonの顧客向けの荷物を組み立てる。
3. 仕事の選択肢を最適に組み合わせる
職務を個々のタスクに分解すると、自動化を活用すべき領域と、人間の従業員がより大きな価値を加えられる領域を組織が見極めやすくなる。たとえば、市場分析のタスクをマーケティング・マネージャーの業務から切り離し、わずかな追加コストでコグニティブ・システムに実行させることが考えられる。この方法により、マーケティング・マネージャーは、共感力や創造性を要する、より価値の高い活動に時間を割ける。たとえば、ソーシャルメディアを通じて顧客との関係を強化したり、チームのエンゲージメントを高めたりすることだ。
4. リーダーシップへの期待を見直す
新しい働き方の世界で成功するには、仕事の依頼元が豊富にあり、仕事上の関係も同じように多様なネットワーク型組織において、正式な権限を持たずにリーダーシップを発揮する能力が求められる。リーダーには、この新たな仕事のエコシステムを采配するためのビジョンと新しいスキルが必要になる。
私たちの分析によると、業界を問わず、職務を分解し、最も効率的かつ効果的な人間と自動化の組み合わせを使って仕事を配分する企業は、多くの場合、60%から80%のコスト削減を実現できる。これにより、組織が能力を発揮できるようになるまでのスピードやリスク特性も、大幅に改善できることが多い。
自動化によって雇用がなくなる場合もある一方、多くの場合、自動化は人間の能力を補強し、新たな、そしてしばしばより充実感のある仕事を生み出すことで、働く人々がより大きな価値を加える助けとなる。


