研究チームが、ウイルスが細胞に感染する瞬間を観察できるほど高性能な顕微鏡を開発した。
チームが開発した新しい3D「ウイルスカメラ」は、微小なウイルスがリアルタイムでうごめく様子を捉えられる。この顕微鏡で撮影した動画では、レンチウイルスが人の髪の毛より少し広い範囲を跳ねたり、細かく震えたりしながら進む様子を見ることができる。
次に研究チームは、この技術を多機能な「魔法のカメラ」へと発展させ、踊るように動くウイルスだけでなく、ウイルスが侵入しようとしている、はるかに大きな細胞膜も観察できるようにしたいと考えている。
「私たちが調べようとしているのは、ウイルスが細胞表面に最初に接触する瞬間です。受容体をどのように認識するのか、また、どのようにエンベロープを脱ぐのかを明らかにしたいのです」と、研究グループを率いるデューク大学化学科の助教、ケビン・ウェルシャー氏は語る。
「その過程をリアルタイムで観察したい。そのためには、最初の瞬間からウイルスを捉え続ける必要があります」と同氏は話す。
個々の粒子の動きをリアルタイムで3D追跡できる顕微鏡は、これが初めてではない。実際、ウェルシャー氏は博士研究員時代に以前のモデルを製作し、それを使って、細胞膜に引っかかる明るい蛍光ビーズを追跡した。
しかし、博士研究員のシャンゴウ・ホウ氏が製作した新しいウイルスカメラは、従来の顕微鏡に比べ、より速く動き、より暗い粒子を追跡できる。「速度の限界を克服しようとしていました。しかも、集める光子の数をできるだけ少なくして実現しようとしていたのです」とウェルシャー氏は語る。
暗い粒子を見つける能力は、ウイルスを追跡する際に特に重要だとウェルシャー氏は言う。タンパク質とDNAからなるウイルスは、自然には光を発しない。そのため顕微鏡で観察するには、まず蛍光を発する物質を付ける必要がある。しかし、量子ドットなど明るく光る粒子の多くは、ほとんどのウイルスと比べてかなり大きい。それを付けるのは、バスケットボールに野球ボールをくっつけるようなものだ。ウイルスの動きや細胞との相互作用に影響する可能性が高い。
新しい顕微鏡は、はるかに小さな蛍光タンパク質が発する弱い光を検出できる。ウイルスをバスケットボールにたとえるなら、蛍光タンパク質はおよそエンドウ豆ほどの大きさだ。蛍光タンパク質はウイルスのゲノムに挿入することもできるため、ウイルスが組み立てられる過程で内部に取り込ませることができる。
「それが私たちにとって大きな転機でした」とウェルシャー氏は語る。「量子ドットも、人工の蛍光ビーズも使う必要はありませんでした。蛍光タンパク質がウイルスのどこかにあれば、見つけることができたのです」。ウイルスの動画を撮影するため、ウェルシャー氏のチームは大学のウイルスベクターコアに協力を依頼し、レンチウイルスに黄色蛍光タンパク質を挿入した。
ウイルス追跡顕微鏡が稼働し始めた今、チームは近くの細胞表面もマッピングできるレーザー走査顕微鏡の開発に取り組んでいる。
「粒子の位置が分かれば、その周囲も撮像して、粒子がどこへ向かっているのかを再構成できます」とウェルシャー氏は語る。「この技術を応用して、ウイルス感染をリアルタイムで捉えたいと考えています。」


