膨張顕微鏡法とバーチャルリアリティ(VR)を組み合わせることで、科学者は従来の光学顕微鏡の能力をはるかに超えて細胞構造を拡大し、観察・分析できるようになる。
これらの技術の開発により、感染症や自己免疫疾患に関する研究者の理解が深まり、疾患の診断法や予防法、治療法を開発する能力も高まる。
バーチャルリアリティでサンプルを拡大
カーネギーメロン大学メロン科学学部の生物科学助教、ヨンシン(レオン)・ジャオは、生検サンプルを物理的に拡大する膨張顕微鏡法を開発してきた。この手法により、研究者は標準的な顕微鏡を使って生物学的サンプルの微細な詳細を観察できる。
ジャオは、生検サンプルを化学的に変化させて水溶性ハイドロゲルにすることで、そのサイズを大きくする。次に、組織をゆるめ、体積を100倍以上に膨張させる処理を施す。その後、サンプル内の組織や分子に標識を付けて画像化し、複雑なデータセットにまとめることで、細胞とその構造の相互作用を研究できる。
ただし、この技術には、現在の手法で解釈できる量より2~3桁多いデータが抽出されるという制約がある。この問題の解決を助けるため、研究者らは膨張顕微鏡法を、バージニア・メイソンのベナロヤ研究所(BRI)が開発したバーチャルリアリティ技術と組み合わせた。
この目的のために開発されたVR技術により、研究者はもともと2次元だった膨張顕微鏡画像を3次元で見て操作できるようになり、組織やタンパク質の配置と相互作用を360度の視点から捉えられる。
「BRIでは、感染症と自己免疫疾患の生きたサンプルを準備します」と、上級ポスドク研究員のキャロライン・ステファニは話す。「サンプルをカーネギーメロン大学に送り、そこで拡大してもらい、VRで見るための画像をBRIに送り返してもらいます。」
データへの没入
「これは、科学者が複雑なデータを扱う方法の未来です」とジャオは語る。「データの中に座っているような、没入型の体験です。あらゆる角度、あらゆる場所から自由にデータを探ることができます。」
BRIの元研究技術部長であるトム・スキルマンは、このバーチャルリアリティ技術を開発し、その後、VR企業イマーシブ・サイエンスを設立した。
「この助成金における私の役割は、疾患を研究する科学者が、『イマーシブ・サイエンス』と呼ばれる計算技術を通じて大量のデータを理解できるようにするソフトウェアツールを開発することです」とスキルマンは話す。
「こうしたデータをすべてVRに取り込むことで、科学者は2次元の顕微鏡画像を完全な3次元で見られるだけでなく、データを操作することもできます。チャンネルを選択し、表示、色、コントラストを調整し、画像をつかんで回転させることで、研究対象の疾患に関連する画像の重要な特徴をすばやく特定できます。」
最終的な目標は、研究者らが膨張顕微鏡法とともに、ExMicroVRと呼ばれるVRツールをオープンプラットフォームで他の研究者と共有し、他の研究者も疾患プロセスの新たな詳細を観察し、より大規模で複雑なデータセットを理解できるようにすることだ。
膨張顕微鏡データをVRの3次元画像に変換するシステムは、開発途上国の研究者や医師にも手頃な価格で容易に利用できる。また、最大6人が同じサンプルを遠隔で同時に見ながら共同作業できる。
この研究への資金は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の取り組みであるグランド・チャレンジズを通じて提供された。


