ブロックチェーンへの期待がメディアで最高潮に達したのは、「暗号資産熱」が取引市場を席巻した2017年だった。最近では、規制のあり方に注目が集まっている。一方、今月公表された調査では、経営幹部の5人に4人以上(84%)が、自組織でブロックチェーンの取り組みが進行中だと回答しており、その大半は金融サービス分野だった。
新興技術であるブロックチェーンは、デジタル金融にとどまらない幅広い関連性を持つ。世界が直面する最も差し迫った環境問題について、私たちの考え方や管理の仕方を一変させる可能性も秘めている。
ブロックチェーンが期待を集めるのには十分な理由がある。これは本質的に新たなコンピューティング・アーキテクチャであり、1990年代のインターネットや2000年代後半のスマートフォンと同じように、革新的な新機能をもたらす。
今の15歳にスマートフォン以前の暮らしを、あるいは20代の人にインターネット以前の暮らしを尋ねてみてほしい。そのような世界を想像することさえ難しい人も多いだろう。
ブロックチェーンが世界をどのように変え得るのかを理解するには、まずその特徴を見極めるとよい。なかでも重要なのは、分散型で改ざんできない台帳と高度な暗号技術だ。これらは大規模なコンピューターネットワークに、強力な新たな特性、すなわち「信頼」をもたらす。デジタル通貨やデジタル資産を所有することへの信頼から、その起源や取引の真正性に対する信頼まで幅広い。また、定義上中立であるブロックチェーンの分散型ビジネスモデルへの信頼や、ブロックチェーン技術を支えるデータとコードが誰にでも公開されていることへの信頼も含まれる。
しかし、期待が高まる一方で、インターネットや携帯電話と同等の規模と普及に達するには、相当な課題を克服する必要がある。ユーザーの信頼と普及の促進、性能上の障壁(相互運用性、拡張性、エネルギー消費など)、セキュリティリスク(サイバーリスクや本人確認など)、法的・規制上の課題が含まれる。
こうした課題を克服し、技術が成熟して分野やシステムをまたいだ活用が広がれば、ブロックチェーンは違法漁業や森林破壊から、水やエネルギーのより良い管理まで、幅広い環境問題への取り組みに役立つ可能性がある。世界経済フォーラムとPwCによる新たな報告書は、サンフランシスコで開催されたグローバル気候行動サミットに合わせて発表され、環境関連の課題への対応にブロックチェーンが役立つ可能性のある、新たなユースケースを65件以上特定している。
また、ブロックチェーンが第四次産業革命の他の先進技術と組み合わさることで、既存のビジネスモデルだけでなく、気候変動やその他の環境課題への取り組み方も一変させる予測不能な切り札となり得る分野も特定した。
私たちはこれらをゲームチェンジャーと呼び、8つを挙げた。
1. 「見える化」されたサプライチェーン。 サプライチェーン全体の取引をブロックチェーンに記録し、来歴(製品の原産地など)を示す改ざんできない記録を作成できる。これにより、製品の供給元から店舗まで、全面的かつ徹底した透明性と追跡可能性を実現できる。クリーンなサプライチェーンを求める新たな消費者需要を喚起するだけでなく、こうした透明性は近い将来、避けられないものとなり、サプライヤー、購入者、規制当局によるサプライチェーンの扱い方を変える可能性がある。
将来的には、ブロックチェーンによって、工場労働者から物流事業者、小売業者、消費者、投資家、NGO、規制当局に至るまで、グローバルなサプライチェーンのすべての関係者を一つのプラットフォームにつなげられる可能性がある。利用者が必要とするデータ、追跡可能性、透明性、管理機能、コンプライアンスの仕組みを提供するプラットフォームは、インフォーマル経済で働く人々にも消費者にも、真に大きな変革をもたらす提案となるだろう。
2. 分散型で持続可能な資源管理。 ブロックチェーンは、分散型でクリーンかつ資源効率の高いエネルギー・水システムへの大規模な移行を支え得る。プラットフォームは、こうした資源に関する分散データ(スマートセンサーで収集した世帯単位の水・エネルギーデータなど)を集約できる。システム内の意思決定者、つまり中央集権的な当局も小売段階の利用者も、部分的な情報だけで判断していることが多いため、これは大きな変化をもたらす。ブロックチェーンを活用したプラットフォームはこの問題を克服し、より十分な情報に基づく意思決定、さらには資源やシステム全体の管理に関する分散型の意思決定を可能にする。再生可能エネルギー源の追跡・検証、ピアツーピア取引、動的価格設定、需要側のより良い需給調整などが実現し得る。
3. 兆単位の資金を集める―持続可能な金融の新たな源泉。 ブロックチェーンを活用した金融プラットフォームは、資本へのアクセスを一変させ、環境課題に取り組むプロジェクトに新たな投資家層を呼び込む可能性がある。グリーンインフラへの投資から、途上国向けのブレンデッド・ファイナンスや慈善寄付の実現までが含まれる。さらに広く見れば、株主価値からステークホルダー価値へ、従来の金融資本から社会・環境・金融資本を考慮する方向へと、システムの転換をブロックチェーンが可能にする可能性がある。
4. 循環型経済へのインセンティブ。 ブロックチェーンは、素材や天然資源の評価、利用、取引のあり方を根本から変え、現在は廃棄されたり捨てられたり、経済的価値がないと見なされたりしているものから金銭的価値を生み出すよう、個人や組織に促す可能性がある。これにより広範な行動変容が促され、真の循環型経済の実現に役立つ可能性がある。例えば、Plastic Bankは、回収したリサイクル可能な海洋プラスチックを持ち込むと、暗号トークンの形で金銭的報酬を発行する社会的企業を設立した。
5. 炭素(およびその他の環境)市場の変革。 ブロックチェーン・プラットフォームは、取引可能な価値を持つ暗号トークンを提供し、既存の炭素(またはその他の物質)市場プラットフォームを最適化するとともに、炭素クレジット取引の新たな機会を生み出せる可能性がある。初期の試験例として、Energy Blockchain LabsとIBMが開発した中国の「Carbon Credit Management Platform」がある。スマートコントラクトの導入により、中国の炭素市場の透明性、監査可能性、信頼性を高めることが目指されている。さらに将来的には、ブロックチェーンが個人、世帯、組織向けの世界的な炭素取引市場を支えることも考えられる。
6. 次世代の持続可能性モニタリング、報告、検証。 ブロックチェーンは、持続可能性に関する報告と保証を一変させる可能性を秘めている。企業が自社の実績をより適切に管理、実証、改善できるよう支援し、消費者や投資家がより十分な情報に基づいて判断できるようにする。温室効果ガス排出量などのデータ収集と管理をスマートコントラクトで自動化すれば、リアルタイムで信頼できるデータにアクセスし、不正を最小限に抑えられる。ブロックチェーンによる温室効果ガス会計の改善は、炭素税の効果を高める可能性がある。こうした仕組みの成果は、透明性と信頼性のある温室効果ガス排出データに左右されるためだ。
7. 災害への自動的な備えと人道支援。 ブロックチェーンは、災害への備えや救援に関わる複数の組織が共有する新たなシステムを支え、資源の効率性、有効性、連携、信頼性を高める可能性がある。適切に設計されたシステムなら、災害発生時にスマートコントラクトを通じて、幅広い関係者が重要情報を自動的に共有できる。例えば、新たに利用可能となった資源をより迅速かつ効果的に動員し、サプライチェーンを自動的に再編し、緊急事態への対応で救援機関同士の連携を促進できる。
8. 地球管理プラットフォーム。さまざまな価値に基づく取引を可能にする、ブロックチェーンを活用した新たな地理空間プラットフォームは、探究の初期段階にある。陸上の生命から海洋の健全性まで、地球環境という共有資源を守る新たな市場メカニズムを実現できる可能性がある。こうした用途は技術面・物流面での実現可能性という点ではまだ先の話だが、期待を抱かせるものだ。例えば、海洋資源を監視する世界的な海洋データ・プラットフォームにブロックチェーンを組み込み、地域社会や漁業者の漁業権を保護し、執行できる可能性がある。
ブロックチェーンが期待に応え、適切な課題に活用されれば、よりクリーンで資源を保全する分散型ソリューションへの移行を可能にし、自然資本を解き放ち、地域社会に力を与える大きな可能性がある。共有地の悲劇や、非金銭的価値を捉える難しさが現在も広く見られる環境分野では、これは特に重要だ。


