世界がオープンサイエンスを受け入れるべき理由

Universities should continue to unleash their unique strength in thought leadership to facilitate the open science movement.Image: Unsplash/Moritz Kindler
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  • オープンサイエンスは、協働ネットワークを通じて共有・発展させることのできる、誰もがアクセス可能な知識を提供する。

  • 研究大学があらゆる活動にオープンサイエンスを取り入れ、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を加速すべき時が来ている。

  • 研究の信頼性を高め、科学的知見への一般市民のアクセス拡大を確実にするため、サイエンスコミュニケーションを拡充する必要がある。

国連事務総長の年次「持続可能な開発目標」進捗報告書は、2020年初頭の時点で、世界は2030年の目標達成に向けた軌道に乗っていなかったと述べている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした壊滅的な影響に加え、同報告書は、持続可能な開発目標(SDGs)に関する国際比較可能なデータを含む質の高いデータの不足も、効果的な意思決定を妨げる要因として挙げている。

SDGsの推進におけるデータの力は、情報分析を手がけるグローバル企業、エルゼビアによる2020年の研究で詳しく論じられている。しかし同研究が明らかにするように、一部のSDGsに関する研究が急速に拡大している一方で、その成果が具体的な行動につながらない可能性があり、分野横断的な連携もさらに必要である。地球が直面する「グランドチャレンジ」を踏まえると、学問分野間、そして科学、政策、社会の間にある隔たりを縮めることが急務である。

ここでオープンサイエンスが重要となる。オープンサイエンスは、科学論文への自由なアクセス、公的研究のデータへのアクセス、そしてICTツールやインセンティブによって可能になる共同研究を含む。質、誠実さ、公平性、集団的利益といった中核的価値に根差すオープンサイエンスは、協働ネットワークを通じて共有・発展させることのできる、誰もがアクセス可能な知識を提供し、変革を促す基盤となることが期待されている。

この目的に向け、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)は、基準となるオープンサイエンスに関する勧告の最終化を進めており、2021年11月に加盟国によって採択される予定である。また、世界が持続可能な開発のための行動の10年に入る今、研究大学があらゆる活動にオープンサイエンスを取り入れ、SDGsの達成を加速すべき時が来ている。

パラダイムを転換する

世界では、オープンサイエンスをめぐる合意がまだ形成されていない。UNESCOが実施した地域協議では、参加者の46%がオープンサイエンスとは何かを明確に理解していないことが分かった。さらに、断片化した政策、激しい競争、技術的障壁、文化の違い、購読料を要する出版モデルなど、複数の要因が科学データのオープン化を妨げている。

パラダイムの転換には時間がかかるが、先進的な大学は、世界に広がる性質と、1世紀にわたり時代の潮流を形づくってきた役割を生かし、オープンサイエンスの理念と実践を先導できる。その第一歩として、キャンパス全体にオープンサイエンスを体系的に組み込むことが考えられる。ユトレヒト大学(オランダ)は、オープンサイエンスを組織戦略の指針として明確に掲げ、具体的な行動計画を開始した数少ない大学の一つである。

2021年3月に開催された、大学長による2021年のオンラインフォーラムでは、31カ国・地域の大学指導者60人以上が共同声明に署名し、テクノロジーを活用し、オープンサイエンスを推進することを約束した。大学は、オープンサイエンスの運動を後押しするため、知的リーダーシップという独自の強みを引き続き発揮すべきである。

社会的合意を築き、公共政策に情報を提供し、支援する文化を醸成するため、これまで以上に提言活動に取り組む必要がある。

オープンサイエンスの要素

大学は知識の拠点として認識されてきた。FAIR(発見可能、アクセス可能、相互運用可能、再利用可能)原則を特徴とするオープンサイエンスでは、学者や研究者が、責任ある厳密な知識によって他者の力を高めることが求められる。したがって、倫理的な観点からも、より透明性の高い科学の進め方としても、大学のカリキュラムにオープンサイエンスを組み込むべきである。

大学の外に向けては、いわゆるポスト真実の時代に、研究の信頼性を高め、科学的知見への一般市民のアクセス拡大を確実にするため、サイエンスコミュニケーションを拡充する必要がある。知識を広く一般に伝えることで、持続可能な開発の中心に一人ひとりの市民を据えることができる。さらに、市民参加型の科学の取り組みは、持続可能性が主として学術界や行政の難題であるという誤った認識を解消する助けとなる。

「社会的合意を築き、公共政策に情報を提供し、支援する文化を醸成するため、これまで以上に提言活動に取り組む必要がある。」

呉朝暉、浙江大学学長

オープンサイエンスは、すべての人に公平で質の高い教育と生涯学習の機会を広げ、知識格差の縮小を目指す。これは、パンデミックによって長年の不平等が悪化した、資源の乏しい地域社会にとって特に重要である。高等教育機関は、パートナーシップやネットワークを通じて情報通信技術を活用し、多様な知識体系をつなぎ、相互に補完する知見を組み合わせることで、可能な限り幅広い学習者に利益をもたらすべきである。

オープンサイエンスのもう一つの重要な要素は、科学的プロセスのあらゆる段階でのアクセス可能性である。例えば浙江大学では、チーム間および分野横断の共有と交流を促す、社会に開かれた仮想研究環境の構築を目指し、「浙江大学の研究」ポータルを立ち上げた。

また、オープンサイエンスの実践を支える大規模インフラ、遠心式超重力・学際実験施設(CHIEF)の建設も主導している。浙江大学は、教育の実績、学術的リーダーシップ、社会的影響をより重視することで、キャリア評価指標の多様化も進めている。

オープンサイエンスを支えるインフラである遠心式超重力・学際実験施設(CHIEF)の完成予想図。Image: 浙江大学

連携の価値

研究とイノベーションにおいて従来の学問分野、セクター、地理的な境界が曖昧になるなか、大学は学術界の枠を越えて新たな担い手と関わらなければならない。トップレベルの研究大学は、地域のイノベーション・エコシステムの中核であり原動力としての地位を確立している。英国のケンブリッジや米国のボストンといった都市の成功がその例である。

新興国でも、外部組織とのパートナーシップで設立された仮想プラットフォームや実体を持つ研究機関を通じて、こうした相乗効果が広がっている。そこでは企業と研究者が集まり、科学的発見をより迅速に実用化し、支援を必要とする人々の力となる方法を探っている。オープンサイエンスをオープンイノベーションと結びつければ、研究室と人々の暮らしの間にある最後の隔たりを埋め、包摂的な成長に貢献できると私たちは考える。

地政学的な不確実性があるなかでも、COVID-19ワクチンの展開は国際協力の計り知れない価値を示した。同じ理念のもと、大学、研究機関、政府、企業はオープンサイエンスのモデルに取り組んでいる。

これは、経済協力開発機構(OECD)の調査結果にも表れている。同調査によると、COVID-19の生物医学研究における共同研究で、米国と中国が最大のパートナーとなった。SDGsの達成には、科学、政策、実践を結ぶ強固な連携が強く求められる。大学は、オープンサイエンスの勢いを維持するため、これまでの取り組みをさらに超えていくべきである。

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