湾岸の石油資源に恵まれた国々は、将来の電力需要を満たすため、再生可能エネルギーに投資しなければならない。
エネルギーミックスを多様化すれば、炭化水素資源を輸出に回せるほか、経済の多角化を促し、戦略的に重要な雇用創出を加速させ、二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるなど、湾岸諸国には多くの恩恵がもたらされる。
湾岸協力会議(GCC)加盟6カ国すべてが、再生可能エネルギーへの投資計画を発表し、2030~2040年までに意欲的な目標を達成することを目指している。
サウジアラビアのどこかで、若いエンジニアは祖父の話を思い出している。家族がナツメヤシの実を売って生計を立て、電気もエアコンもない暮らしを送り、車を運転するのではなくラクダの背に乗って移動していたころの話だ。
過去、現在、そして未来
1938年の石油発見が、サウジアラビアと湾岸協力会議(GCC)の他の加盟国、すなわちバーレーン、クウェート、オマーン、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の日常生活をこれほど劇的に変えるとは、ほとんど誰も想像できなかっただろう。
サウジアラムコが世界最大の石油生産企業へと成長するなか、若いエンジニアの父は掘削事業で安定したキャリアを築いた。
エンジニア自身は米国の大学に進学し、その後、世界各地を旅した。いま故郷に戻り、自分の人生を築こうとする彼は、父や祖父が知っていたものとはまったく異なる未来を思い描く。それは、エネルギー効率の大幅な向上と多様なエネルギー源を基盤とする、持続可能な未来だ。
GCCの人々が、なぜまったく異なる未来を夢見る必要があるのかと疑問に思う人もいるかもしれない。実際、BP「世界エネルギー統計レビュー2016」によると、これらの国々は世界の石油埋蔵量の29%、天然ガス埋蔵量の22%を合わせて保有している。また、世界の原油生産量の23%、天然ガス生産量の11%を占める。
これほど豊富な資源があれば、将来は約束されているように思える。
なぜ再生可能エネルギーに投資するのか
しかし、GCC各地で、変化が急務だとの認識が広がっている。その理由を理解するには、いくつかの顕著な傾向を見ればよい。
GCC諸国のエネルギー消費量は、2000年以降、年平均6%増加し、GDP成長率(5%)と人口増加率(4%)を上回っている。同時に、エネルギー消費が経済にもたらす価値は先進国を大きく下回り、さらに低下している。
こうした傾向の主な原因は、大量のエネルギーを必要とする産業の発展と、家庭部門のエネルギー消費が絶えず増加していることにある。
エネルギー価格が低いため、エネルギー効率の向上や節約を促す動機はほとんど生まれてこなかった。その結果、GCCの一人当たりエネルギー消費量は世界でも最高水準となっている。
APICORPによると、今後5年間で湾岸諸国は現在より40%多く発電する必要があると見込まれており、その増加分は62GWに相当する。このため、再生可能エネルギーへの投資を早急に進める必要がある。
国内の電力需要と海水淡水化の需要はすでに非常に大きく、世界第8位の天然ガス生産国であるにもかかわらず、サウジアラビアはその半分を原油の燃焼で賄わなければならない。
同様に、国内の電力需要の増加により、UAEは天然ガスの純輸入国となっている。
GCC最大の経済規模を持つサウジアラビアでは、国内の石油消費量が生産量に占める割合は、2000年の17%から2015年には32%に増加したと、BP「世界エネルギー統計レビュー2016」は指摘している。
需要を抑制するか、代替エネルギー源で賄わなければ、今後10~20年以内に国内消費がサウジアラビアの炭化水素生産の大半を吸収する可能性がある。そうなれば、原油を輸出し、下流部門をさらに拡大する能力が損なわれ、この二つが重なることで国家経済に重大な影響が及ぶだろう。
エネルギーミックスの多様化に向けて再生可能エネルギーに投資するエネルギーミックス
要するに、GCC諸国は持続可能な道を歩んでいない。
活力ある未来を実現するため、GCC諸国は直ちに、かつ積極的にエネルギー効率の向上に取り組み、国内需要を満たすため再生可能エネルギーへの投資を拡大して、エネルギーミックスを多様化しなければならない。
再生可能エネルギーへの投資は、ひいては炭化水素資源を輸出に回し、経済の多角化を促し、戦略的に重要な雇用創出を加速させ、GCC諸国内の二酸化炭素(CO2)排出量を削減する。
近年、再生可能エネルギーの技術と経済性は大幅に向上しており、湾岸地域には太陽光や風力などのクリーンエネルギー源を活用する大きな可能性がある。
UAEで直近に入札が行われた太陽光発電プロジェクトでは、価格が1kWh当たり米3セントを下回った。湾岸地域の大規模太陽光発電はすでに、石油や液化天然ガスの輸入に対して競争力があり、硫黄分の多いガスや非在来型ガスの新たな埋蔵量開発とも競合できる。
GCC加盟6カ国すべてが、再生可能エネルギーへの投資計画を発表し、2030~2040年までに意欲的な目標を達成することを目指している。

国内消費の増加と再生可能エネルギーの競争力向上を踏まえ、GCC諸国は再生可能エネルギー計画を加速させるとともに、民間部門による再生可能エネルギー投資への参画をさらに促すべきだ。
GCC各国政府が今、果たすべき重要な役割は次のとおりだ。
1. 野心的でありながら達成可能なエネルギー効率向上と再生可能エネルギー開発の目標を設定する。
2. エネルギーのバリューチェーンに関わる主要な利害関係者を結集し、掲げた目標の達成を支援する機関を創設または強化する。
3. 再生可能エネルギーとエネルギー効率化技術の開発を後押しする規制の枠組みを改善する。その中には、民間発電事業者やプロジェクト開発事業者へのインセンティブも含まれる。
4. 教育制度を、再生可能エネルギー部門で必要とされる技能の育成に重点を置いたものにする。
公益事業者も、再生可能エネルギー計画への投資をさらに振り向けるとともに、再生可能エネルギーを組み込むために事業モデルと運営モデルを転換するうえで、重要な役割を担っている。
GCCの次世代は、持続可能なエネルギーの未来がもたらす、想像を超える豊かさを享受できるだろうか。GCCには手段がある。あとは意志を奮い起こすだけだ。


