ブロックチェーンはSDGsの実現への扉を開く鍵となるのか?

The Aral Sea is a case study in how different SDGs can come into conflict
The Aral Sea is a case study in how different SDGs can come into conflictImage: Patrick Schneider / Unsplash
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  • SDGsの達成に向けて多くの取り組みが行われてきましたが、依然として大きな障壁があります。なかでも、目標同士が衝突する可能性があることは大きな課題です。

  • こうした課題に対処する方法として、優れたガバナンスが挙げられています。

  • ブロックチェーン技術は、2030年までにSDGsを達成するために必要な、ガバナンスの改善を支える鍵となり得ます。

各国政府や組織は、国連が掲げる17の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、多大な資源を投入してきました。しかし、進展を妨げる障壁も明らかになっており、とりわけ目標同士がしばしば衝突するという事実が課題です。

その一例が、カザフスタンとウズベキスタンの間に位置するアラル海です。湖に流れ込む河川の水が別の用途に転用され、1960年代以降、面積が90%縮小しました。

スミソニアン保全生物学研究所のホンボー・ヤン氏が述べたように、「農地への灌漑は、食料安全保障の強化を目指すSDG目標2の達成に役立ちました……しかし、その進展は、水生野生生物の保護を目指すSDG目標14を犠牲にして実現したものです。」

世界経済フォーラムが発表した研究では、こうした課題に対処する方法としてガバナンスが挙げられ、次の3つの問いが提起されています。

● 適切なステークホルダーをどのように結集できるでしょうか?

● 難しいトレードオフにどう対処すればよいでしょうか?

● 説明責任をどのように組み込めばよいでしょうか?

SDGs関連プロジェクトには、各国政府、援助機関、地域住民、地方自治体、NGOなど、世界各地に分散する多様な当事者や地域団体が関わっています。こうした課題に分散型かつグローバルな方法で対処するには、連携と集団的な意思決定の新たな方法を見つける必要があります。

ブロックチェーン技術は、こうしたガバナンスモデルを構築する機会をもたらします。ブロックチェーンは、合意された価値観に基づいて情報を共通に把握できる分散型プラットフォームであり、その価値観に基づいて自動実行される活動を可能にします。

効果的な実行を確保するには、まず目標、この場合はSDGsについて合意し、続いて目標に関連する目的と指標を定める必要があります。目標の達成には、透明性、オーナーシップ、説明責任が重要です。実行段階では、資金が確保された後、適切なガバナンスが成果を実現する鍵となります。確実に実行するには、実行の方法が重要であるため、実行プロセスを策定する必要があります。したがって、適切なガバナンスなしに実行を確保することはできません。不適切なガバナンスは、インセンティブの不整合、権力の不均衡、利益相反を招き、ブロックチェーン・プラットフォームの基本原則である分散化、民主性、透明性を損ないます。

図1. DCFプロセス:エンゲージメント、実行、ガバナンスの新たなモデルImage: ボストン・コンサルティング・グループ、IOHK

このニーズに応えるため、ボストン・コンサルティング・グループ、Input Output、ブロックチェーン研究所、ワイオミング大学などの協力者が、分散型コンソーシアム資金調達(DCF)モデルを開発しました。これはエンゲージメント、実行、ガバナンスの新たなモデルです(上図1参照)。資金の効果的な活用を支援し、戦略目標の達成を確実にすることを目指しています。このモデルは、資金と資源の配分を伴うあらゆるプロセスに適用できます。DCFは、ガバナンス要素を組み込んだ技術とプロセスからなるプログラム実行の仕組みです。ブロックチェーン本来の機能を活用し、設計段階から権力の集中を抑えることを意図しています。

DCFモデルは、資金提供者側のステークホルダー(分散型資金調達の場合は代表者がその役割を担うことがあります)と、目標達成に向けて作業するコンソーシアムのメンバーとの間の摩擦を軽減します。また、コンソーシアム内外の参加者間で目標の整合と協働を促し、多様性と包摂性の実現を後押しします。協働は「実績証明」と呼ばれるインセンティブモデルによって促進されます。

図2. DCFモデルのガバナンスおよび実行の構成要素Image: ボストン・コンサルティング・グループ、IOHK

分散型ガバナンスと実行(運営)要素を組み合わせることで、DCFはプリンシパル・エージェント問題、すなわち資金提供者側のステークホルダーとコンソーシアムの間の優先事項の対立を解消することを目指します(図2参照)。こうした優先事項の対立は、しばしばプロジェクトの失敗につながります。さらに、モラルハザードなど、効率性や成功を妨げる要因にも対処します。このプロセスは次の5段階に分けられます。

1. 目的、明確なビジョン、共有する価値観を定める

2. コンソーシアムを組成する

3. 財務資金を引き出す

4. 実行中のコンソーシアムを運営する

5. 資金提供者側のステークホルダーまたはその代表者が受け入れる目的を達成する。

DCFの枠組み

現在策定中の白書は、大規模資本プロジェクトに向けた分散型ガバナンスと実行の概念を紹介することを目的としています。まず、実行の成功を確実にすることを目指します。この概念を提示するにあたり、白書では課題を提起し、論点を示し、原則を概説するとともに、DCFの枠組みを紹介して、このテーマへの新たな大局的アプローチを提案します。考え得るすべての問題を解決する「実践ガイド」ではありませんが、ブロックチェーンが可能にする分散型ガバナンスの新たな世界において、将来にも通用する出発点となります。

5つの段階があり、それらを通じて16のプロトコルが定義されています。DCFの枠組みはハイブリッド型で、ブロックチェーン上の要素とオフチェーンの要素(従来のシステムやプロセス)を組み合わせています。モジュール型の枠組みであり、実装ごとにオンチェーン要素とオフチェーン要素の組み合わせを変えられます(下図3参照)。段階的な分散化を念頭に設計されているため、オフチェーンのツールは、オンチェーンのツールが開発されるにつれて置き換えることができます。

図3. コンソーシアムの設立と運営Image: ボストン・コンサルティング・グループ、IOHK
図4. DCFプロトコルの概要Image: ボストン・コンサルティング・グループ、IOHK

DCFは、主に2つの仕組みによって革新をもたらします。調達資金に対するガバナンスと、実行・運営モデルです。

1. 調達資金に対するガバナンス

ガバナンスは、プロジェクトの実行に対するコンソーシアムの説明責任を確保し、ステークホルダーの価値を守る仕組みです。特に営利分野における従来のガバナンス確立プロセスでは、管理職や報告系統を設け、最終的な説明責任を取締役会に負わせます。その結果、権力が集中することも少なくありません。

DCFは、ルールの設定、紛争解決、介入、監督、監査、情報基盤のための機能別プロトコルを用いてこのプロセスを実施します(上図4参照)。この仕組みはDCFの5段階すべてを通じて機能し、機能別プロトコルはコードまたは人の関与によって実行されます。オンチェーンとオフチェーンのガバナンス慣行を分析したうえで、DCFの仕組みは両方の特性を備えて運用されるよう設計されました。

ブロックチェーンを活用した意思決定を通じて、DCFは権力の集中や不均衡に強い分散型ガバナンスを維持します。この仕組みはステークホルダーの関与を高めるインセンティブも提供し、これは持続可能性にとって極めて重要です。

2. 実行・運営モデル

効果的なガバナンスには、実行の成功、コンソーシアムメンバーへの公正な報酬、紛争解決、所有権と権利の保護を確実にする運営モデルが必要です。DCFの設計における法的枠組みは、マニフェスト、プロジェクト憲章、基本契約、メンバー契約、仲裁、情報・プライバシー方針などを対象とします。重要な概念の一つが「ワークパッケージ」です。これは、DCFが分散型ながら「方向性を定めた」方法で達成を目指す、より大きな目標群の中で、具体的な目的の達成を担う作業単位です。ワークパッケージはコンソーシアムが作業を始める前に定義され、プロジェクトの進行中に見直されます。

結論

信頼と共有する価値観は、コンソーシアムを含むあらゆる集団的取り組みの基本です。これはDCFのような分散型モデルでいっそう重要になります。効果的な民主的意思決定のためには、不正行為への不安なくメンバーが協働できなければなりません。DCFのコンソーシアムネットワークの設計は、多額の資本を伴い、戦略目標の達成を目指すプロジェクトを実行する際に、低コストで効率的な監視と管理に必要な情報を生成します。このようにDCFは、透明性と協働による意思決定を可能にし、適時に実施できるよう設計された、SDGsの達成を後押しする手段となります。

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