カーボンニュートラルとネットゼロは、どちらも気候変動対策に欠かせない異なる取り組みを指します。
カーボンニュートラルは事業活動の特定の範囲を対象とする場合があり、通常はCO2排出量を算定しますが、その他の温室効果ガスは対象としません。
一方、ネットゼロとは、企業がサプライチェーン全体であらゆる温室効果ガスの排出を削減することを意味します。
コーヒーを買うときも、旅行を予約するときも、投資をするときも、サステナビリティをめぐる専門用語は分かりにくく、圧倒されることさえあります。そのため、自分が適切な選択をしているのか判断しにくくなります。
この記事では、こうした用語をいくつか取り上げ、気候変動との闘いにおいて今も意味のある手段なのかを掘り下げます。また、地球を守る取り組みを後押しするために、新たな言葉が必要かどうかも考えます。
カーボンニュートラルとネットゼロの違いとは?
カーボンニュートラルを掲げる組織は、排出するCO2を評価することを約束します。そのうえで、排出量を削減する方法を見つけ、他の場所で排出を減らすか、大気中から同量のCO2を除去することで、残る排出を相殺します。
この均衡を図る取り組みはカーボン・オフセットと呼ばれ、新たな植林や再生可能エネルギーへの投資、あるいはバイオエネルギーと炭素回収・貯留(BECCS)などが含まれます。
サステナビリティ・マネージャーを務めるセンヤ・クオッカネン氏は、カーボンニュートラルという用語は「かなり以前から使われています」と話します。Nesteは、再生可能かつ循環型のソリューションを手がける世界有数の企業です。「カーボンニュートラルは事業活動の特定の範囲を対象とする場合があり、通常はCO2排出量を算定します」が、その他の温室効果ガスは対象としません。
「ネットゼロは、企業の気候変動対策における最高基準と見なされています」。
一方、ネットゼロとは、企業がサプライチェーン全体で絶対排出量を削減し、世界の気温上昇を1.5℃に抑える目標を支えることを意味します。この目標は、2015年のパリ気候サミットで合意されました。
CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所、世界自然保護基金のパートナーシップである科学的根拠に基づく目標イニシアチブ(SBTi)は、世界初のネットゼロ基準を策定しました。企業がネットゼロ目標を効果的に実施するための枠組みとツールを提供しています。
新しい用語である「ネットゼロ」は「企業の気候変動対策における最高基準」と見なされていますが、クオッカネン氏は、一方の用語が他方より優れているということではないと付け加えます。どちらも、気候変動に立ち向かううえで欠かせない取り組みの一部を指しています。
実際、気候目標の達成に向けた排出削減の取り組みには優先順位があり、どちらの用語も重要な役割を担います。その段階は、温室効果ガスの新たな排出を完全に回避することから始まり、最後には、自らのバリューチェーン外での取り組みによって残余排出を相殺することに至ります。
気候変動を語る言葉に注意を!
気候危機について誰もが語るようになり、カーボンニュートラルやネットゼロの目標が掲げられるなか、広く一般にとって意味の乏しい流行語が、環境への機運を損なうのではないかと懸念すべきでしょうか。
気候関連の用語は誤用されやすいと、ネステや気候投資コンサルティング会社ポリネーション・グローバルなどに助言する独立系の気候変動活動家、ジェームズ・キャメロン氏は指摘します。
カーボンニュートラルやネットゼロのような用語について、「行動を促す考え方を形にする必要がありました」とキャメロン氏は話します。同氏は1997年の京都議定書など、国際的な気候変動協定の交渉にも携わりました。
「カーボンニュートラルやネットゼロのような用語について、私たちは行動を促す考え方を形にする必要がありました」。
「それ自体が単純化であり、欠点もあって解釈が必要ですが、何もないよりはましです」と同氏は強調します。
一部の企業が環境面での実績を誇張することがあっても、問題について語る行為そのものが、気候危機を議題の上位に押し上げるとキャメロン氏は考えています。
さらに、ネットゼロという考え方は「伝えやすいものです。他の目標や方法論の多くはかなり複雑ですから」。
クオッカネン氏も、「気候問題をめぐる熱意の高まり」は楽観できる理由であり、「私たち全員を正しい方向へ導いています」と同意します。
環境について語る新しい方法が必要でしょうか?
言葉は、緊急の行動を促し、意欲をかき立てるうえで重要な役割を果たします。私たちが使う言葉を考える際には、人々を結集させるその効果を考慮することに大きな価値があります。
キャメロン氏はこう語ります。「人々が目標を達成するために必要なことは何でもしたいと思えるよう、暮らしがより良くなるという展望が必要です」。
同氏は、「再生」といった言葉の使用を提唱します。それは「リスクと機会への期待をともに含む、前向きな概念」です。
同様に、「指数関数的な変化を活用する」と語ることは「希望を与えてくれます」。イノベーションを加速させ、「そうしなければ手に負えなくなる問題に追いつける」という希望です。
キャメロン氏は、気候変動を動機として持ち出す必要のない、社会や経済にとっての別の優先課題を通じて「気候危機に取り組みたい」と考えています。
「ネットゼロの世界がどのような姿になるのかへと、議論の焦点を移すべきです」。
クオッカネン氏は、ネットゼロの世界がどのような姿になるのかへ議論の焦点を移すことが、「この課題の規模を本当に理解する」助けとなり、排出削減に向けた意欲を、測定可能な具体的行動へとつなげるために不可欠だと考えています。
たとえば、「どのようなエネルギーを使い、どう暮らし、どう移動するのか。生計はどのようなものになるのか。私たち全員に年間の温室効果ガス排出量の上限が設けられるのか」と思い描くことです。
ネットゼロの世界を視野に入れると、「とてもわくわくする議論につながるかもしれません」とクオッカネン氏は言います。「そうすることで、次に取るべき意義ある一歩を見極め、実行できます」。


