デジタル公共財(DPG)とデジタル公共インフラ(DPI)は、デジタル協力における新たな課題です。
DPGとDPIの現在の導入事例から、各国が自国の成功に役立てられる教訓が得られています。
DPGはひな型を意図したものではなく、社会全体で取り組むアプローチを通じて、各国の状況に応じたデジタル基盤を構築するための足がかりとなるべきです。
デジタル変革は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を加速するうえで不可欠です。国連は、各国がデジタル基盤の確立を目指すなかで、デジタル公共インフラ(DPI)の重要性がますます高まっていることを認識してきました。DPIは、各国がWeb 3の課題を探るなかで、本人確認、データ交換、決済など、サービス提供に不可欠な基本機能を可能にします。
しかし、これは具体的に何を指し、なぜ重要で、どのように活用するのが最善なのでしょうか。
オープンソースソフトウェアを選ぶ理由
デジタルインフラを構築する際、政府には主に3つの選択肢があります。
1. 独自のソリューションを構築する。多くの場合、費用がかさみ、技術的にも困難です。
2. 独自技術をリースまたは購入する。カスタマイズが制限される場合があります。
3. デジタル公共財(DPG)を導入する。これには、国連が定めるDPG標準を満たすオープンソースソフトウェアが含まれ、カスタマイズとデジタル主権が可能になります。
UNDPとMOSIPは、政府と協力してDPIとDPGを構築・活用してきた経験があり、次のような事例があります。
- CoWin:新型コロナウイルス感染症ワクチン接種の管理・登録を行うデジタルソリューション。Digital Infrastructure for Vaccination Open Credentialing(DIVOC)を使って、ワクチンの証明を行います。
- OpenG2P:政府から市民への現金給付システム。
- MOSIP:市民の基盤的なIDシステムの確立を支援するオープンソースのIDプラットフォーム。6か国で導入・試験運用されています。
こうした経験から教訓を引き出すことで、DPGを活用したDPIの導入を加速し、各国がデジタル基盤を構築できるよう支援できます。
DPI導入を改善するための教訓
1. DPGのカスタマイズが鍵
DPIを活用した国々は、現金給付やワクチン接種キャンペーンを通じて、新型コロナウイルス感染症による社会経済面および健康面の影響に、より迅速に対応できたことを示す証拠があります。現在、各国政府はDPIの導入加速を望んでおり、特に低・中所得国でその動きが見られます。
効果的に実施するには、DPGを汎用的なコードベース以上のものとして捉え、各国のニーズに応じたDPIの導入を通じて展開する必要があります。したがって、その成功は技術的な実装だけでなく、各国が何を達成したいのかを示すロードマップにも左右されます。
OpenG2Pは、西アフリカのエボラ危機の際に構築されたDPIの一例です。仕様の大半はシエラレオネ政府と現地のオープンソース開発者が策定しました。利用可能な本人確認・決済システムの調整と接続、現場職員の能力開発支援、すべての医療従事者を支援するヘルプデスクの苦情対応を実現するため、多大な調整が行われました。
インドでのCoWin導入でも、予算の少なくとも70%が技術以外の支出に充てられました。その中には、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種会場をさらに325,000か所稼働させることも含まれ、農村部やアクセスが困難な地域で、全国平均を上回る予防接種率を実現しました。
2. 各国の戦略とDPGへの取り組みを結びつける
DPI導入の機会への需要は明らかであり、多くの国が着手方法について支援を求めています。
DPGを国家開発に組み込むと表明することは、重要な第一歩です。ただし、成功には、その取り組みが政府のより広範な目標とどのように整合するかを理解する必要があります。
たとえばアフガニスタンでは、UNDPが国連全体の危機対応の一環としてABADEI戦略を開始し、介入の一貫性と相互補完性を促しました。ほかに12の国連機関が参加しました。この取り組みは、アフガニスタンの関係者と世界の人道支援コミュニティが地域の事情への理解を共有し、将来のレジリエンスとセーフガードを築く堅牢な標準を備えた相互運用可能なシステムの設計に取り組む重要な機会となりました。
戦略計画を通じて取り組みへの合意を促すことは、前進のための有効な手段であり、DPGの導入を加速する具体的な出発点にもなります。
3. 縦割りから社会全体で取り組むアプローチへ
各国は、DPI導入の設計上の選択に反映する独自の目標を定める必要があります。そのためには、大規模なDPIによって何が実現できるかを認識する考え方が欠かせません。縦割りや単一部門のアプローチから、政府全体、さらには社会全体で取り組むアプローチへの移行が必要です。
システムレベルの変革は、DPGの活用と新たな協力形態を促進できます。たとえば、フィリピン政府がMOSIPを導入した際には、フィリピン統計庁だけにとどまらず、政府のさまざまな部門を巻き込んだ議論が必要でした。現在、DPIの導入を活用した複数の部門横断的なユースケースが構想されています。
導入時にDPIをどう活用するか話し合うことで、この考え方の転換を促せます。複数のユースケースに対応し、市民に価値をもたらす相互運用可能なデジタルシステムの導入とカスタマイズについて議論しましょう。
4. 能力を構築し、協力を促進する
能力開発は、DPG、特にDPIの導入を成功させるための基盤であり、政府、地域のデジタル・エコシステム、市民社会組織にとって欠かせません。
こうした幅広い能力開発のニーズをめぐっては、いくつか考慮すべき点があります。政府にとって、どのスキルやリソースを強化すべきか把握する第一歩は、デジタルインフラのビジョンを明確にすることです。
ただし、能力開発の取り組みには通常、次の内容を含めるべきです。
- DPIの導入時に包摂性と人権への配慮を組み込むこと。たとえば、データ共有の意味を明確にし、デジタルアーキテクチャ内にセーフガードを設けます。
- 調達やベンダー管理など、認識を共有する必要のあるさまざまな関係者と協働すること。DPGの導入を監督する技術的能力も必要です。
- 国家規模のインフラを統治するための立法・政策枠組みを構想し、策定できること。
5. 地域に根ざしたサービスとイノベーションの文化を育む
地域のデジタル・エコシステムを構築するには、現地の人材を引きつけ、定着させることが重要です。バングラデシュ政府は、UNDPとの共同プログラムであるa2iを通じて、これを見事に実現してきました。
この事例は、地域のイノベーション拠点が、現地人材の育成を促す重要な役割を担い、DPIシステムへの継続的な支援を提供できることを示しています。また、ベンダーとして国際企業に依存する状況を減らし、地域におけるサービスとイノベーションの促進にも役立ちます。
こうした動きは国際的にも進んでいます。たとえば、世界規模の非営利基金であり、資源動員プラットフォームでもあるCo-Developは、各国が包摂的で安全かつ公平なDPIを構築できるエコシステムの創出を目指しています。
持続可能な開発目標の前進
Digital Public Goods Allianceとロックフェラー財団による最近の報告書が指摘するように、DPIには、より多くの人々をデジタル経済に包摂し、優れたガバナンスとサービス提供を可能にし、緊急の課題に対応する新たなツールを生み出すことで、持続可能な開発目標の達成を加速する大きな可能性があります。
こうした議論を前進させるなかで、誰がどのレベルで話し合うべきか、各国への支援をどのように定着させるべきかという、より大きな問いが残っています。しかし、これらの初期の知見がDPIに関する議論を前進させ、最終的に、より良く包摂的な社会を築く助けとなることが期待されます。


