ブレークスルー・アジェンダ報告書2022は、電力、水素、道路輸送、鉄鋼、農業の5産業でネットゼロを達成する方法について、25の提言を示しています。
報告書によると、国際協力と世界共通の基準の整合が、温室効果ガス排出量のネットゼロへの移行を加速する鍵です。
脱炭素化を加速することは、技術コストの抑制にもつながると報告書は述べています。
2050年までに温室効果ガス排出量をネットゼロにするには、国際協力の強化が不可欠です。
それが、ブレークスルー・アジェンダ報告書2022のメッセージです。同報告書は、国際エネルギー機関、国際再生可能エネルギー機関、国連気候変動ハイレベル・チャンピオンが発表しました。
報告書は、電力、水素、道路輸送、鉄鋼、農業という主要な5つの産業部門における排出削減の進捗を検証し、移行を加速するために、政府、企業、社会の間でより強力な協力を呼びかけています。
著者らは、ネットゼロへの移行を加速すれば技術コストを抑えられると主張しています。5つの産業全体にわたり、次の選択肢をできるだけ早く最も手頃なものにするため、25の提言を行っています。クリーン電力、電気自動車、持続可能な農業、低炭素の鉄鋼と水素ここでは、その概要を紹介します。
電力産業の脱炭素化
1. 政府、企業、開発銀行、投資家は共同で、優先プロジェクトについて合意し、将来のネットゼロ電力の供給を支えるエネルギー貯蔵などの技術を実証・試験すべきです。
2.国際的な支援を強化し、より適切に調整するとともに、透明性とアクセスのしやすさを高め、電力産業のネットゼロ移行を後押しすべきです。
化石燃料に依存する地域への開発資金は、地域の雇用、技能、投資、環境再生と、より緊密に結び付ける必要があります。
4. 各国は国境を越えて協力し、電力産業のクリーンエネルギーへの移行を支える送電網の整備機会を創出すべきです。
5. エネルギーを大量に消費する機器には、最低限のエネルギー性能 基準を設け、各国と産業界が共同で合意すべきです。
クリーンエネルギーへの移行に不可欠な水素
6. すでに低炭素水素や再生可能水素を利用している産業は、その利用をさらに増やすことを約束すべきです。いわゆるグリーン水素は、再生可能エネルギーを使って製造される炭素を排出しない燃料です。
7. 政府と企業は、再生可能水素および低炭素水素に関する国際基準と認証制度に合意すべきです。これには排出量と安全性の測定を含める必要があります。
8. 水素技術を実証するプロジェクトの数と地理的な分布を大幅に拡大し、海運や重工業を含む分野での用途を対象とすべきです。
9. 優遇金利の融資を、対象を適切に絞った水素の用途に利用できるようにすべきです。これにより、途上国の水素生産・流通に大規模な民間投資を呼び込める可能性があります。
道路輸送には、より統一されたアプローチが必要
10. すべての新車の販売を、政府間で合意した期日までにゼロエミッション車にすべきです。自動車の場合、期日は2035年頃とすべきです。
11. 主要技術は道路輸送のゼロエミッション化に役立ちます。政府は対象となる技術に合意し、その内容を把握したうえで、産業界に「明確で曖昧さのない」シグナルを送るべきです。
12. 政府は、投資を呼び込み、電気自動車の充電インフラの整備を加速するために最も効果的な方法を共有すべきです。
13. 車両充電インフラの基準は統一されておらず、小型車と大型車では異なる規則が適用されています。政府と産業界は協力して、基準がこれ以上ばらばらになるのを防ぐ必要があります。
14. 電気自動車用バッテリーは、環境への影響を最小限に抑えるなど、持続可能で社会的責任を果たす方法で生産する必要があります。
15. 中古車の効率性と安全性を確保するため、車両の輸出国と輸入国の間で規制を調和させるべきです。
ほぼゼロ排出鉄鋼には、さらなる後押しが必要
16. 政府と企業は、共通の定義を定め、低排出鉄鋼とほぼゼロ排出鉄鋼を定義する必要があります。
17. ほぼゼロ排出鉄鋼の購入約束を拡大し、政府と企業の将来の鉄鋼需要の「かなりの割合」を対象とすべきです。
18. ほぼゼロ排出鉄鋼が国際市場で競争できるよう、生産国と消費国を含む各国政府は、「戦略的対話を緊急に開始」すべきです。
19. 主要な鉄鋼生産地域でパイロット事業を実施すれば、技術に関する知見を共有できます。政府と企業は協力して、対象となる地域を特定すべきです。
20.新興国と途上国の支援に向けた資金を大幅に増やし、鉄鋼産業をほぼゼロ排出技術へ移行させるべきです。
農業には持続可能性と気候変動への強靱性が必要
21. 農業の研究、開発、実証事業への投資を増やす必要があります。重点分野には、食品廃棄と排出量の削減、家畜および肥料に由来する排出量の削減を含めるべきです。
22. 農業分野に向けた国際気候資金を「大幅に増やす」必要があります。中小企業や途上国の小規模農家への支援も増やすべきです。
23.農業に関する政策と支援の方向を転換し、持続可能性と気候変動への強靱性を高めるべきです。政府、研究機関、民間部門などの関係者は、そのための方法を開発、試験、共有する必要があります。
24. 持続可能な農業に取り組む国が、国際貿易で不利にならないようにすべきです。各国政府は、これを避けるための戦略的対話を始めるべきです。
25. 農業で利用する天然資源の状況を報告するため、国際基準を策定すべきです。土壌の炭素含有量や花粉媒介者の健全性も対象に含める必要があります。
産業のネットゼロに向けた取り組み
アルミニウム、航空、コンクリート、海運、鉄鋼など、炭素集約型産業部門の脱炭素化を目指すのが、世界経済フォーラムのファースト・ムーバーズ・コアリションです。
9か国の政府と50社を超える加盟企業が、世界の温室効果ガス排出量の30%を占める重工業の7分野でクリーン技術の普及を加速させる世界的な取り組みに参加しています。
ネットゼロ産業トラッカーも、産業部門が2050年までにネットゼロを達成できるよう支援する、フォーラムの取り組みです。産業が排出量を削減し、エネルギー効率を改善している状況を測定するため、共通の指標をまとめています。
「エネルギー転換指数」では、フォーラムとプロフェッショナルサービス企業のアクセンチュアが、現在のエネルギー危機はクリーンエネルギーへの投資を「記録的なペース」で増やし、クリーンエネルギー源への移行を拡大する機会になると述べています。
同指数は10年にわたり、クリーンで手頃かつ安定したエネルギーへの移行を進める100か国以上を追跡してきました。


