'テスラ村':電気自動車が中国の農村経済の新たな開拓地に

Panzhiga village has earned the nickname 'Tesla village' thanks to a large uptake of the electric vehicles after a surge in tourism.
Panzhiga village has earned the nickname 'Tesla village' thanks to a large uptake of the electric vehicles after a surge in tourism.Image: Reuters/Thomas Peter
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  • テスラ車はすでに中国の大都市で人気を集めているが、農村部は電気自動車(EV)にとって、依然としてほとんど開拓されていない市場だ。

  • パンジガ村は、観光客の急増後にEVの普及が大きく進んだことから、「テスラ村」という愛称で呼ばれるようになった。

  • しかし、都市部以外での普及をさらに促すには、特に充電インフラの整備に関して、より多くの取り組みが必要だ。

テスラは長年、中国の大都市で大きな成功を収めてきたが、今では国内のより遠隔地にも急速に進出している。実際、雲南省の小さな山あいの町は今、「テスラ村」と呼ばれている。

パンジガ出身の起業家、蔡潤氏は、故郷と幹線道路を結ぶ新しい橋が建設され、地域に観光客が訪れるようになるまで、何年も中国の大都市で働いていた。好機と見た同氏はパンジガに戻り、小さなホテルを開業し、テスラのモデルYも持ち帰った。

近隣住民はすぐに彼のテスラに夢中になり、今ではこの小さな村にモデルYが30台以上ある。村人たちも起業家で、移動手段として使うだけでなく、モデルYを地元の事業にも積極的に活用している。こうして「テスラ村」という呼び名が定着した。

テスラ村:中国の農村経済のデジタル変革に向けた一歩

パンジガの「テスラ村」への発展は、「タオバオ村」が登場した初期の時代に続く、中国の農村経済のデジタル変革に向けたもう一つの大きな前進だ。

近年、モバイルインターネットとデジタル技術は、中国の農村経済に大きな影響を与えてきた。農家の過半数がアリババのショッピングサイト「タオバオ」で働く村が数多くあり、そこから「タオバオ村」と呼ばれるようになった。

アリババはタオバオ村を、「世帯の10%超がオンライン店舗を運営し、村の電子商取引の年間売上高が1,000万元(約160万ドル)を超える村」と定義している。アリババのデータによると、中国にはタオバオ村が1,000以上ある。

もちろん、「テスラ村」、あるいは「EV村」はまだごくわずかだ。中国の電気自動車ブランドが急速に追い上げ、テスラと真っ向から競い合っている。スタイリッシュで高級な電気自動車は、環境意識の高い都市部のエリート層と結び付けられることが多いが、状況はまもなく変わるだろう。

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2022年6月、中国は大規模なキャンペーンを発表し、自動車メーカー26社が、中国の農村部で電気自動車(EV)の購入を促す優遇策を設けることになった。自動車メーカーには、電子商取引プラットフォームと連携した販売奨励策に取り組み、農村部や下位都市でオフライン販売を生み出すことが奨励される。

こうした動きを背景として、中国は自動車産業の変革において、EVの開発を戦略的に重要と位置付けている。まず、中国の大都市では自動車の保有がすでに飽和状態に達しており、突破口が必要だ。

第二に、中国は「2060年までのカーボンニュートラル達成」を誓約しており、その結果、2035年までに中国で販売される新車はすべて完全なEVまたはハイブリッド車(総称して新エネルギー車)でなければならないと宣言した。したがって、農村部は大きな可能性を秘めた、十分に開拓されていない市場だ。

しかし、新エネルギー車の農村市場での販売には、依然として大きな障壁がある。その理由は次の通りだ。

第一に、価格性能比の改善が必要だ。

農村部の住民は、新エネルギー車の価格に特に敏感だ。実際、中国では低速の「ミニ電気自動車」がすでに年間数百万台販売されており、価格はわずか1,500ドルほどだ。主に高価なリチウム電池ではなく、安価な鉛蓄電池で走り、運転に免許も必要ない。衝突安全試験の厳格な基準を経ていないため、ミニ電気自動車は中程度の速度でも何かに衝突すれば簡単に壊れるおそれがある。安全上の懸念から、中国の多くの都市では地方当局が全面的に禁止している。

ミニ電気自動車に対する新エネルギー車の利点は安全性だ。新エネルギー車の低価格帯は10万元(15,000ドル)未満から見つかるが、農村部の購入者にとってEVを魅力的にするには、価格をさらに下げて5万元(7,500ドル)未満にする必要があるかもしれない。

テスラ村の起業家のように事業にも使うなど、複数の用途に活用できれば、電気自動車の価格負担をさらに補える。つまり、この市場を活性化するため、農村住民向けに特化した革新的な電気自動車モデルを設計できる可能性がある。

今後、中国のEV市場は細分化が進む可能性がある。家族を持ち、上昇志向のある専門職向けの上位車種、若年層向けの手頃な価格で若々しいデザインの中位車種、そして農村部の購入者向けの安価で多目的な車種という構成だ。

第二に、充電施設のネットワークが不足している。

中国は公共利用可能な充電ポールの数で他国を大きく上回るが、既存の充電施設は一級都市に集中している。電気自動車用の急速充電ステーションを1か所建設するには、多額の初期投資が必要だからだ。ジレンマは、充電ステーションへのアクセスが広がれば農村部での新エネルギー車の普及が加速する一方、農村住民の購入が増えるまでは、充電ステーションの建設が採算に合わないことだ。

そのため、全国的な充電インフラ整備は政府主導で進める必要がある。2022年1月、中国国家発展改革委員会(NDRC)と他の9政府機関は、EV充電サービスの強化に向けた指針を発表し、2025年までにそうした車両2,000万台の需要に対応することを目指した。指針によると、中国はスマートで効率的、バランスが取れ、適度に先進的なバッテリー充電施設ネットワークの整備を加速する。

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この指針では、農村部における充電施設ネットワークの構築が重視された。農村振興の取り組みの一環として、中国はすべての県に充電ステーションを、すべての村に充電ポールを設置することを目指している。また、6月に発表された販売促進策によると、各省政府と関係省庁が連携して、公共充電インフラへの投資拡大など、EVの購入者を増やす支援策を推進する。

第三に、電気自動車の整備サービス施設が不足している。

充電ステーションと同様に、新エネルギー車の整備店は、EV所有者がすでに一定数いる大都市に集中している。農村部では、緊急充電や機器の修理など自動車メーカーが約束するアフターサービスの多くが、沿岸都市ほど利用しやすくない。待ち時間は数時間ではなく、数日になることもある。

前述の複数省庁による指針では、政府は充電施設周辺の整備サービスとインターネットサービスの強化も計画した。なお、中国には今もインターネットを利用しない人が数億人おり、その大半は遠隔地でインターネットインフラが不足していることによる村人だ。

中国は2020年から、「デジタル村」の推進を始めた。これにより、遠隔地のインターネットインフラ投資に中央政府から資金援助が行われる可能性がある。インターネット接続の改善は、販売促進策が想定する「オンラインで販促し、オフラインで販売する」戦略に不可欠であり、多くの「デジタル村」と「EV村」がともに生まれるかもしれない。

農村部の電気自動車市場は未開拓

まとめると、革新的な電気自動車モデルは、まだ開拓の余地が大きい農村部の消費者ニーズに応えるだろう。しかし、EVを農村の奥深くまで普及させるには、まだ長い道のりがある。

課題はあるものの、中国の農村部で電気自動車を普及させるうえでは、いくつかの利点もある。大都市の住民と比べ、農村部の住民は駐車スペースを確保しやすく、自宅に充電設備を設置できる可能性もある。下位都市や中国の農村部では、電動自転車や電動スクーターがすでに広く利用されており、EVもまもなく普及するかもしれない。

そのため、中国の「デジタル村」と「EV村」の試験的取り組みは、デジタル格差の解消と気候変動対策に向けた、世界にとって貴重な参考事例にもなり得る。各大陸の政府が農村経済のデジタル変革に取り組めば、新エネルギー車の巨大なユーザー市場も見いだせるだろう。

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