標準化された交通データやコンピューティング能力が広く利用できるようになり、さまざまな交通プロジェクトや政策がもたらす空間的・ネットワーク上の影響を把握できるようになっています。1月には、 OpenTripPlannerAnalyst(OTPA)アクセシビリティ・ツールを正式に公開しました。このオープンソースのウェブツールでは、都市の空間分布(雇用や学校など)、交通ネットワーク、個人の移動行動を組み合わせ、個人が機会にどれほど容易にアクセスできるかを算出できます。
OTPAの アクセシビリティ・ツールを活用することで、こうしたデータセットや分析手法を用いた街区単位のアクセシビリティ分析の可能性が広がります。このツールを使えば、誰でも都市における交通と土地利用の相互作用をモデル化し、市民のニーズにより的確に応える交通サービスを設計できます。たとえば、貧困層や下位40%の人々を、関心の高い重要な場所につなぐ、対象を絞ったサービスを設計できます。
わずか数カ月の間に、私たちはこのツールのさまざまな活用方法と、プロジェクトに情報を提供するため実務の場でどのように利用できるかを探り始めました。

リマにおける雇用アクセシビリティの変化、
メトロ2号線。TTL:Georges Darido
交通シナリオの比較
このツールの最も明白な使い方は、異なる交通ネットワークがアクセシビリティに与える影響を比較することです。ユーザーは異なる交通シナリオをアップロードし、都市の各地域で雇用へのアクセスがどのように変化するかを比較できます。ペルーのリマでは、新たな地下鉄路線の追加によって生じる雇用アクセシビリティの変化を比較できました。また、移動時間だけに頼るのではなく、プロジェクトがネットワークや接続性に与える影響を理解するうえでも役立ちました。
空間構造の把握
ただし、このツールの用途は交通シナリオの比較に限られません。地球観測データと組み合わせてスラムや公営住宅の位置を特定することで、都市の空間構造と、最も脆弱な住民が利用できるアクセシビリティの機会を探ることができます。アルゼンチンのブエノスアイレスでは、 LandScan のデータとこのツールの出力を組み合わせ、都市で最も貧しい人々が利用できる雇用へのアクセスの選択肢を把握しました。

住宅プロジェクトの最適な立地の特定。
TTL:Angelica Nunez
さらに、このツールを使えば、公営住宅プロジェクトの立地について、より適切な判断ができます。アクセシビリティの出力を重ね合わせ、居住地に関する国勢調査データと組み合わせることで、アクセシビリティが高い一方、人口密度は高くなく、住宅プロジェクトの候補地として理想的と思われる都市内の地域を見つけられます。また、人口密度が高くても、いずれか、あるいは複数のサービスへのアクセシビリティが低い地域を特定し、新たな交通サービスの優先対象とすることもできます。
データが乏しい環境での活用
このツールの適用可能性をめぐる主な問いの一つは、データが乏しい環境でどう活用できるかです。高解像度データ製品の利用が広がり、この制約を克服できるようになっています。ケニアのナイロビなどでは、このツールの能力を WorldPop (100m単位の人口データを提供)と組み合わせることで、都市への理解を大きく深められます。これにより、調査対象地域の人々にとって、ある場所がどれほどアクセスしやすいかを把握し、雇用センターや学校、病院などのサービスの最適な立地を特定できます。
このツールと多様なビッグデータを活用すれば、都市全体の移動時間を集計したり、具体性に欠ける広範な指標を用いたりするのではなく、都市内でアクセシビリティがどのように変化するかを把握できます。理想的には、世界銀行グループ全体でこのツールを活用し、プロジェクトの優先地域や進行中のプロジェクトの指標を特定できるでしょう。アクセシビリティ分析が広く用いられれば、都市交通プロジェクトや他の分野のプロジェクトの影響を評価する方法が変わる可能性があります。
このツールを使い始めた最初の数カ月で、活用できる多様な環境を探ることができました。さらに、交通を中心とするプロジェクトだけでなく、住宅プロジェクトや学校、病院などの不可欠なサービスのアクセシビリティ測定にも活用できます。
さまざまな環境やプロジェクトでこのツールの検証を続け、その可能性を十分に引き出したいと考えています。そして、次の問いを捉え直す助けとしたいと考えています。すなわち、この投資は大都市圏の最も貧しい下位40%の人々のアクセシビリティをどのように改善するのか、という問いです。
この記事は当初、 世界銀行のブログ「Transport for Development」に掲載されました。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。
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著者:Tatiana Peralta-Quirosは、都市開発・レジリエンス部門のジュニア・プロフェッショナル・アソシエイトです。Shomik Raj Mehndirattaは、ワシントンDCを拠点に世界銀行のラテンアメリカ・カリブ海地域で勤務する主任交通専門官です。
画像:2012年1月11日、カリフォルニア州ロサンゼルスのロサンゼルス郡立美術館(LACMA)でメディア向け内覧会が開かれ、Chris Burdenの大規模な動く彫刻作品「Metropolis II」の高架道路をミニチュアカーが走行する。REUTERS/David McNew。



