告白があります。私は、自分では実際に経験したことのない社会問題の解決を企業に支援しています。住む家を失ったことも、貧困に陥ったことも、飢えを経験したこともありません。そして、企業が世界により大きな変化をもたらすことを望む人々と、取締役会の場で約20年間過ごしてきましたが、「当事者としての経験」を持つ人がそこにいたことは一度もありません。企業の社会的責任が概して効果を上げてこなかったのは、そのためだと考えています。この分野で従業員、消費者、投資家を効果的に巻き込むには、当事者としての経験を持つ人々を意味のある形で参加させるしかないとも考えています。
「歴史は、自らが直接経験した社会問題の解決に取り組んできた個人や地域社会の力を明らかにしています」と、人権派弁護士で「移民・難民児童法律支援部門」の創設者兼ディレクターであるバルジート・サンドゥは言う。「女性の権利運動、公民権運動、アルコホーリクス・アノニマス、あるいは家庭内暴力を生き延びた子どもが設立した、女性と子どものための世界初の安全な避難施設、リフュージを考えてみてください。」
実際のところ、高い教育を受け、長年の経験を持つビジネスの専門家たちは、あまり良い成果を上げていません。これは驚くことではないでしょう。そもそも、MBA取得者が飢餓への解決策を開発するのに適任だと言えるでしょうか。意外なのは、こうした社会問題を最もよく解決できる人々が、これまで排除されてきたことです。最も成功した社会的成果が普通の人々から生まれることを示す事例は数多くあります。
スプリングボード・コラボラティブは、フィラデルフィアで夏休みに行われる読書プログラムです。スプリングボードの成功は、公立学校制度の中で最も活用されていない資源、すなわち低所得の、主にアフリカ系アメリカ人またはラテン系の親たちを巻き込んだことに基づいています。この人々は、自分の子どもを助ける能力も意欲もないと見なされがちです。リビルド財団は、シカゴ西部出身の黒人アメリカ人陶芸家、シアスター・ゲイツが設立し、主導してきました。他のアーティストや地域住民と協力し、リビルド財団は、地域を中心に据えたアート主導の都市開発を通じてシカゴ南部を変えてきました。放置されていた建物は、今もそこに暮らす人々をつなぎ、力づける地域拠点として再構想され、再生されました。放置されたり壊れたりしていた素材は、全国的に知られる文化施設の創出に活用されました。
当事者としての経験を持つ人々の力を示す最も驚くべき例の一つはザンビアにあります。テキサス州ほどの広さがあるこの国では、農村部の外科医はわずか6人です。必要不可欠な医療を受けられない地域では、「臨床担当官」が3年間の外科課程を受講し、帝王切開、子宮摘出、虫垂切除、腸閉塞の手術など、最も必要とされる手術を学びます。
ホームレスを経験した若者が仕事を見つけるのを支援するのに、より適しているのは誰でしょうか。社会福祉機関の就職支援担当者でしょうか。それとも、自身もホームレスを経験した後、やりがいのある仕事と安定した住まいを得た若者でしょうか。ホームレスを経験した若者を採用し、ホームレスを経験した若者と企業をつなぐカナダ全国規模のプラットフォーム、HireUpの開発を手伝ってもらった経験から、答えは後者だと分かりました。HireUpを支援するために採用した若者、キャメロンはこう語っています。「当事者としての経験は、社会問題を分析し効果的に対応するために必要な深い理解だけでなく、他の状況では再現しにくい情熱ももたらします。」キャメロンは今、自分の家を持ち、大学に在籍しています。
社会変革に携わるすべての人が、支援しようとしている人々の状況や視点を理解し、共感することが大切です。私の経験では、その点はおおむね実現されていますが、それだけでは十分ではありません。人々の暮らしを改善することを目的とした取り組みの設計から実施まで、当事者としての経験を持つ人々が関わって初めて、効果的な社会変革が可能になります。そのために企業ができる方法は4つあります。企業にとって効果的であり、参加する人々への敬意も保てる形で実現できます。
課題の影響を受ける人々が最初の段階から関われるよう、手順を定める必要があります。その方法として、提案中の取り組みについて話し合う会合を開けるよう、地域の社会福祉機関と連携することが挙げられます。当事者としての経験を持つ人々がすでに集まっている場所で会合を開けば、交通手段が参加の障壁になることを防げます。さらに、当事者としての経験を持つ人に、プロジェクトの共同議長など正式な役割を担ってもらい、その役割に対して報酬を支払うべきです。
企業が行う社会変革プログラムはすべて、当事者としての経験を持つ人々と共同でつくるべきです。その方法には、当事者としての経験を持つ人々が一部進行役を務め、影響を受ける地域社会の参加者を招き、無料の託児などの支援を提供するプログラム設計セッションの実施が含まれます。
一般に企業は、教育や特権に恵まれた人々で構成される広告代理店に、プログラム資料の作成を依頼します。プログラム資料は、当事者としての経験を持つ人々が作成する(少なくとも、その意見を反映して作成する)べきです。先住民の女性起業家の資金面のニーズに対応するプログラムを開発した際、最終報告書のデザインを、グラフィックデザイン事業を営む先住民の女性に依頼しました。
社会問題に直面している人々が、支援を目的としたプログラムの測定・評価に用いる指標を策定するべきです。さらに、測定と評価そのものにも参加してもらうべきです。私たちはこれを「コミュニティ主導のプログラム評価」と呼んでいます。
当事者としての経験を持つ人々に参加してもらうには、コミュニケーションや組織運営のスキルなどの面で支援が必要になることもあると認識することが大切です。また、企業はトラウマを経験した人々のニーズに配慮しなければなりません。こうした方法を取り入れることで、企業はより効果的な社会変革プログラムをつくり、従業員、消費者、その他の重要な関係者をより効率的に巻き込めるでしょう。
企業には、低所得者やマイノリティに対する固定観念の軽減を支援することで、効果の乏しく包摂性に欠ける企業の社会的責任を乗り越える機会があり、その実行は急務でもあると考えています。Google.orgの創設者で初代エグゼクティブ・ディレクターを務めた疫学者、ラリー・ブリリアント博士はこう述べました。「社会変革は参加型です。それが社会的である理由です。」


