フィランソロピー部門は、世界的な援助の減少に対し、データを含め、自らが利用できる資産を活用して対応しています。
インドからマラウイなどに至るまで、さまざまな非営利団体がデータの活用を広げています。
以下では、データ戦略を通じて成果を最大限にもたらす方法について、非営利団体が他の組織に提供できる3つの教訓を紹介します。
国際援助の減少を受け、フィランソロピーは、成果データが中心的な役割を果たす形で、非営利団体やグローバル・サウスの政府による公共サービスの提供を支援する革新的な方法を模索しています。
データに基づく革新を実現するには、適切な事実を収集するだけでは不十分であり、日々の業務のやり方を変える必要があります。世界のフィランソロピー部門は、今やこの考え方に目覚めつつあります。
以下は、グローバル・サウスで業務にデータを効果的に導入し、有意義な制度変革という目標に実際に前進を遂げた非営利団体からの3つの重要な教訓です。
教訓1:データ利用者は、飴には鞭よりはるかによく反応する
政府職員は、データによって成果不振が明らかになれば悪い結果を招くと感じると、そもそもデータを収集しようとしなくなる可能性があります。フィランソロピーは、データ活用と新たなインセンティブや支援を組み合わせるプロジェクトを支援することで、触媒としての役割を果たすことができます。
Generation Indiaは、官民パートナーシップの枠組みのもと、国および州政府機関と協力しています。この枠組みでは、両者が同額の資金を拠出しています。従来、政府資金によるプログラムの研修事業者には、主に研修と認定に基づいて報酬が支払われていました。この2つの節目が、学習者1人当たりの政府支払額の70%超を占めていました。学習者1人当たりの政府支払額の残りには、就職率や3か月間の雇用継続などの成果指標も一部含まれていましたが、これらの成果指標を証明する手続きは煩雑で時間もかかり、この方向への取り組みを妨げていました。さらに、研修事業者は投入関連の支払いの70%で損益分岐点を達成する方法を習得していたため、成果関連の追加支払いを手放すことにも前向きでした。その結果、就職率は25%未満にとどまりました。
状況を好転させるため、Generation India と政府機関のパートナーシップは、プログラム修了に連動する投入関連の支払いを56%に引き下げ、成果に基づく報酬を44%に引き上げました。並行して、プログラム修了後3か月以内の就職と、初回就職後の3か月目および6か月目の雇用継続に基づく新たな支払いの節目を導入しました。いずれも第三者によって検証されています。
ブラジルの Collaborative Leadership 連合(BLC)でも、同様の取り組みが行われています。この連合は、 Lemann Foundationと、連邦、州、市町村の各政府によるパートナーシップであり、国内の1年生と2年生の70%に届いています。識字能力を向上させるため、Lemann Foundation は、参加するすべての学校の教員研修に資金を提供し、児童に質の高い教科書を提供しています。州は、教材や2年生の評価を含む全国識字プログラムへの参加を約束しています。また、州は最も優れた成果を上げた学校の校長に、平均10,000ドルの現金賞を授与することで、その取り組みを評価しています。表彰された学校は現金賞の60~75%をただちに受け取りますが、残りの25~40%は、地域内の別の学校の識字成果の向上を支援した場合にのみ受け取ることができ、これにより追加的な支援の仕組みが生まれています。最後に、州の税収の2~5%が、目標に対する成果に基づいて市町村政府に配分され、各市町村はその資金の使途を自ら決定できます。
教訓2:重要なデータの流れが存在しない場合は、それを創出する
既存のデータでは、行動の指針として不十分な場合があります。そのような場合、フィランソロピーは、非営利団体や政府が新たなデータの流れを構築することを支援できます。
2017年、マラウイ保健省は、農村部の医療成果を向上させるための唯一の信頼できる情報源を構築し、それを診療現場での意思決定支援ツールとしても活用したいと考えました。こうして、統合地域保健情報システム(iCHIS)が誕生しました。地域保健ワーカーは、非営利団体 Last Mile Healthによって、新しいデジタルデータシステムの使い方や、日々の訪問時の情報をタブレットで記録し、iCHIS にアップロードする方法の研修を受けました。現在までに、3,200人近くの地域保健ワーカーがこのシステムを利用しており、687,000人以上の人々が登録されています。iCHIS はすでに医療の提供方法の改善に寄与しています。例えば、地域保健ワーカーは、予防接種の期限が過ぎている子どもについて、リアルタイムの通知を受け取れるようになりました。これにより、農村地域の予防接種率が向上しています。
ブラジルでは、2年生が年に2回流暢性テストを受け、教員や学校が児童の識字能力の推移をよりよく把握できるようにしています。教員は、児童が教室で約1分間文章を読む様子を携帯電話で録画します。そのスコアは教員と共有されます。その結果、流暢性テストは全国識字評価の成績を強く予測することがわかりました。現在、Bem Comum Association が Lemann Foundation およびその他の BLC 資金提供者の支援を受けて、年間300万件以上のテストを実施しています。2024年には、18州の350万人の児童が識字評価を受け、69%が適切な読解水準に達しました。2022年の49%から上昇しています。
教訓3:データを日常の業務と意思決定に組み込み、実行可能なものにする
車のダッシュボードの情報のようなデータに基づくインサイトは、利用者がそれを日常的に使って進路を確認し、正しい方向を維持しなければ、ほとんど役に立ちません。
Last Mile Health とマラウイ保健省にとって、最初のステップは、3,200人近くの地域保健ワーカーが正しくデータを収集できるようにすることでした。そのため、タブレットの電源の入れ方、Wi-Fiの接続確認、データの記録とアップロードの確認といった基本的な作業について研修を実施しています。これにより、保健省とそのパートナーは、iCHIS システムを活用して、日々の重要な意思決定を導けるようになりました。その成果の一つとして、世帯ごとに蚊帳を正確に配分できるようになりました。配布された蚊帳のスキャンと国民IDカードを照合し、住民が確実に蚊帳を受け取ったかを確認できます。
Generation India は、2種類のダッシュボードを使って、研修事業者と毎週連携しています。1つは指導に焦点を当てたもの、もう1つは業務と雇用に焦点を当てたものです。指導ダッシュボードには、コホートごとの週次のスキル習得評価が表示され、前週までの成績と比較しながら、介入が必要な学習者を特定します。業務・雇用トラッカーには、出席、中途退学、修了者、3か月目および6か月目の就職など、主要指標のデータが表示されます。これら2つのダッシュボードに基づき、研修事業者と Generation India は、成果を改善するために継続的に軌道修正を行っています。前述の改訂された報酬アルゴリズムと合わせて、研修事業者は数か月以内に、就職率が25%から80%超に上昇したことを確認しています。
フィランソロピーは、何が効果的かを明らかにするうえで、質の高いデータが不可欠であることを理解しています。しかし、真の制度変革を実現するには、質の高いデータだけでは不十分です。ここで示した3つの原則に基づき、フィランソロピーが政府や非営利団体と歩調を合わせ、データに基づく変革の好循環を生み出すときに、制度変革は実現します。





