パリ協定に沿った排出削減で「20年以内」に効果が現れる

A general view of boats amid dense fog and mist in the background during morning hours at China Creek area in Karachi, Pakistan January 17, 2020. REUTERS/Akhtar Soomro - RC2JHE9XUAJG
'Immediate and strong action on climate change can bring benefits within current lifetimes and not just far into the future.' cap the global temperature increase.Image: REUTERS/Akhtar Soomro
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  • 新たな研究によると、パリ協定に沿って世界の排出量を削減すれば、20年以内に地球の気温に影響が及ぶ。

  • 『Nature Climate Change』に掲載された新たな研究は、気温上昇を1.5℃に抑えることで、「前例のない気温上昇率」のリスクが低下することを示している。

  • 著者らは、強力な気候変動対策によって、遠い将来だけでなく、今を生きる人々の生涯のうちに効果をもたらせると強調している。

新たな研究によると、パリ協定の目標に沿って世界の排出量を削減すれば、20年以内に地球の気温に明確な影響が及ぶ。

気候研究では、今世紀後半以降に世界の排出削減がもたらす影響に焦点を当てることが多いが、新たな分析は「短期的にも大きな効果」があることを示唆している。

例えば、地球温暖化を1.5℃に抑える道筋に移行すれば、今後20年間に「前例のない気温上昇率」が生じるリスクは、対策を講じないシナリオと比べて13分の1になると研究者らは述べている。

この研究結果について、著者らはCarbon Briefに、「気候変動に対する即時かつ強力な行動は、遠い将来だけでなく、今を生きる人々の生涯のうちに効果をもたらし得る」と語っている。

短期的な温暖化

『Nature Climate Change』に掲載されたこの新たな研究で、研究者らは、緩和の度合いの違いが今後20年間(2021~40年)の地球温暖化率にどう影響するかを調べている。

著者らによると、これは適応策を決める政策立案者にとって「重要な期間」だ。例えば論文では、「現在の温暖化率のもとでは、この期間に作物の品種改良が農業への気候影響に追いつく可能性は低い」と述べている。また、洪水防御施設などの適応策を計画する際には、20年が一般的な時間軸だという。

気温上昇を1.5℃に抑えることで、「前例のない気温上昇率」のリスクが低下する。Image: Nature Climate Change

しかし、主執筆者のクリスティン・マッケナ博士と共著者らはCarbon Briefに、今後数十年間の気候緩和の効果を特定するのは、今世紀後半と比べて難しいと語っている。マッケナ博士はリーズ大学に所属する。

その一因は、「大気や海洋の自然変動、たとえばエルニーニョ現象や太平洋十年規模振動が地球温暖化の進行速度を上下させ、一時的に地球の気温に対する人間の影響を覆い隠したり、強めたりする」ことだという。

もう一つの理由は、排出量が減少しても、大気中のCO2濃度がなお上昇し続けるため、当面は地球の気温が上昇し続けることだ。論文によると、地球の気候を安定させるには、世界の排出量をネットゼロにする必要がある。

こうした要因は、「温室効果ガスの排出量が大きく変化しても、排出経路間の違いを見えにくくする可能性がある」と述べるのは、クリス・ジョーンズ博士だ。ジョーンズ博士は、英国気象庁ハドレーセンターで地球システムと緩和科学を研究するフェローである。

ジョーンズ博士は新たな研究には参加していないが、最近、Carbon Briefに、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンが大気中のCO2濃度に及ぼす影響について寄稿した。博士はCarbon Briefにこう語っている。

「このため、緩和策は何年も大きな効果をもたらさないと思われるリスクがある。さらに悪いことに、今は取り組む必要はなく、将来の世代に任せればよいと考えられてしまうかもしれない。」

二つのアプローチ

こうした課題に取り組むため、この研究では二つのアプローチを用いている。

第一のアプローチでは、第6期結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)のモデル予測を用いる。これは、世界中の科学者による共同の気候モデリングの取り組みだ。著者らによると、これらのモデルは「気候システムについての最新の理解に基づいている」。ただし、長期的な気候変化をシミュレーションするよう設計されているため、「現実世界の[自然]変動を必ずしも正確に再現するとは限らない」。

第二のアプローチでは、観測された自然の気候変動に関する複数の推定値を、「FaIR」(有限振幅インパルス応答)という単純な気候モデルのシミュレーションと組み合わせる。研究者らによると、FaIRを使う利点は、簡単に「何千回も実行でき、より幅広い将来の可能性を探れる」ことだ。

研究者らは二つのアプローチを用いて、今後20年間のさまざまな排出シナリオについてモデルシミュレーションを実行した。下の図はその結果を示す。左は地球の平均地表気温の10年当たりの上昇傾向(摂氏)、右は現在と比べた2021~40年の平均気温上昇である。

図中の各ボックスは異なるシナリオを表す。地球温暖化を1.5℃未満(緑)または2℃未満(青)に抑える排出経路と、パリ協定に基づく現在の国際公約、すなわち国が決定する貢献(NDC)(灰色)に沿った排出経路が含まれる。さらに、世界が気候変動対策を講じないと想定する「緩和なし」のシナリオを二つ実行した。一つは「平均的な」経路(オレンジ)、もう一つは「最悪ケース」の経路(茶色)だ。パリ協定(灰色)に沿った排出経路が含まれる。さらに、世界が気候変動対策を講じないと想定する「緩和なし」のシナリオを二つ実行した。一つは「平均的な」経路(オレンジ)、もう一つは「最悪ケース」の経路(茶色)だ。

(NDCシナリオを除き、各シナリオは気候モデラーが今後100年間の社会、人口動態、経済の変化を探る際に用いる共通社会経済経路(SSP)に対応している。これらは図のキャプションに記載されている。)

今後20年間に予想される地球の平均地表気温の上昇。Image: Carbon Brief/McKenna et al. (2020)。

各ボックスの高さは予測される気温上昇の幅を表し、中央の横線は中央値を示す。ボックスが二つ並んでいる場合、左側はFaIRの結果、右側はCMIP6モデルの結果を示す。

(注:著者らがCarbon Briefに説明したところによると、CMIP6にはNDCまたは「1.5℃未満」の結果がない。前者はCMIP6の排出経路として使われておらず、後者については当時、利用可能なモデルが十分になかったためである。)

この論文によると、二つのアプローチはいずれも、強力な緩和が短期的な温暖化率にもたらす「明確な効果」を示している。例えば、FaIRモデルでは、1.5℃シナリオの温暖化速度は、「緩和なしの最悪ケースシナリオのほぼ3分の1、緩和なしの平均シナリオの半分強」と予測される。

論文によると、2℃シナリオの温暖化率は、「緩和なしの最悪ケースシナリオのほぼ半分、緩和なしの平均シナリオの3分の2」だという。NDCシナリオにも緩和効果が示され、緩和なしの平均シナリオと比べて温暖化が約4分の1、最悪ケースと比べて約3分の1抑えられる。

右側の図では、シナリオ間の差が左側の図より小さい点に注意が必要だ。これは、図が短期的な温暖化を捉える方法の違いを反映しているとマッケナ博士は説明する。

右側の図の「偏差」は、1995~2014年から2021~2040年までの平均的な気温上昇予測を示し、それぞれ2005年と2030年を中心とする。一方、左側の図は2021~40年の温暖化傾向を示していると博士は述べる。

「傾向はより後の期間の温暖化を推定するものであり、シナリオ間の排出量の差は時間とともに大きくなるため、偏差よりも傾向のほうに大きな差が現れると予想されます。」

1.5℃の閾値を超えないために

強力な緩和シナリオは、世界が過去に観測されたものを上回る温暖化を経験するリスクも低下させると、著者らはCarbon Briefに語っている。

「これほど急速で大幅な排出削減を[1.5℃に沿って]行えば、これまでに見られたどの水準をも上回る温暖化率を経験するリスクは、排出削減をせず、化石燃料に大きく依存し続ける『平均的な』将来と比べて13分の1になります。」

当然ながら、排出量の少ないシナリオほど、今後20年間に1.5℃の閾値である人為起源の温暖化を超えない可能性が高い。

FaIRモデルでは、2℃シナリオで1.5℃を超える確率は42%だが、緩和なしの平均シナリオではほぼ倍の78%となる。1.5℃シナリオでは、1.5℃を超えない確率は74%と研究は推定している。

新たな研究の中央値の推定によると、2℃シナリオとNDCシナリオでは、それぞれ2043年と2039年に1.5℃の温暖化を超える。緩和なしのシナリオでは、平均経路で2035年、最悪ケースの経路で2033年に閾値を超える。

(先週、Carbon Briefは独自の分析を発表し、異なる排出シナリオとCMIP6モデルに基づいて、1.5℃と2℃を超える時期を検討した。緩和なしのシナリオの中央値の推定では、1.5℃は2030~32年ごろに超える可能性がある。)

マッケナ博士と同僚らによると、新たな研究結果は総じて、「気候の自然変動があっても、厳格な排出削減によって、より急速で極端な温暖化が短期的にもたらし得る影響を回避できる可能性が高まる」ことを意味する。

「要するに、気候変動に対する即時かつ強力な行動は、遠い将来だけでなく、今を生きる人々の生涯のうちに効果をもたらし得ます。」

ジョーンズ博士は、この研究結果は「私たちが考えていたよりもずっと早く効果が現れるという説得力のある根拠を示している」と述べ、こう付け加える。

「現在と比べた温暖化の変化は今後20年間で同程度かもしれませんが、今行動を起こせば、温暖化の速度が低くなる可能性ははるかに高まります。」

これは「タイタニック号にブレーキをかけるようなもの」だと博士は言う。

「減速の効果に気づくまでには長い時間がかかりますが、船の速度を落とし始めるのが早いほど、危険を避けられる可能性は高まります。」

他の研究

この新たな論文は、緩和策と短期的な温暖化を扱った最近の他の二つの研究とは、わずかに異なる結論に至っている。

例えば、『Nature Communications』に掲載された研究では、ビョルン・サムセット博士が率いる国際気候研究センター(CICERO)のチームが、今年7月に、異なる温室効果ガスやエアロゾルを強力に緩和しても、「効果が見えるのは今世紀半ばであり、それより前ではない可能性が高い」と示唆した。

マッケナ博士と共著者らによると、サムセット論文は、CO2やメタンだけといった排出の個別要素を切り分けて削減することに焦点を当てた。一方、新たな研究は、すべての排出を組み合わせて削減する効果をまとめて扱っているという。

「排出を一つの要素だけ削減するよりも、すべての排出を削減するほうが地球の気温に大きな効果を及ぼします。そのため、より早い段階で効果を検出できるのです。」

もう一つの論文は、ヨヘム・マロツケ博士がマックス・プランク気象研究所で執筆し、2018年にWIREs Climate Changeに発表したものだ。そこでは、「2020年以降にCO2排出量が減少したとしても、地球温暖化が減速せず、2035年まで加速する確率は3分の1ある」としている。そのため、「短期的な気候政策の有効性について現実的な期待を持つことが極めて重要だ」と警告している。

この二つの研究とマッケナ博士の研究手法には、ほかにも違いがある。例えば、マッケナ博士の研究は「1.5℃未満」のシナリオを検討する一方、他の二つの研究で最も強力な緩和経路は2℃未満に相当する。また、マッケナ博士と同僚らによると、「短期的な温暖化に対する自然変動の影響を推定するために観測データを用いている」のに対し、他の研究は「気候モデルを使って推定している」。彼らはこう説明する。

「地球の気温の変動は、一般に現実世界よりも気候モデルのほうが大きいため、[この]手法では自然変動の影響を過大評価し、排出削減のシグナルを覆い隠す可能性があります。」

マッケナ博士の研究手法は、「緩和策の短期的な影響を評価する方法として、より適切と思われる」と述べるのは、カール=フリードリヒ・シュロイスナー博士だ。博士はClimate Analyticsで気候科学と影響部門を率いており、この研究には参加していない。

シュロイスナー博士はCarbon Briefに、今後数十年間における強力な緩和の「決して小さくない」効果は、「政策立案者や一般の人々に伝えるべき内容に、はるかに近い」と語っている。

サムセット博士は、自身の研究結果はマッケナ博士らによる新たな「非常に洗練された」研究結果と「完全に整合している」と述べる。Carbon Briefに対し、主な違いは後者が用いた20年という時間軸にあると語っている。

「気候の文脈では、自然変動を平均化するために意味のある形で検討できる期間として、これは短く、最短であるのは確かです。しかし、現代の民主主義国の多くでは、選挙周期二回分を超える期間でもあります。マロツケ(2019年)とサムセットら(2020年)の両方が伝えようとしているのは、今後10年間で排出量が急速に減少する一方、観測される気温や温暖化率は高いままという状況が十分にあり得るという点です。」

しかし、新たな研究の重要なメッセージは、「そう、急速な削減によって、回避できる気候リスクという点で大きな成果が得られることです」と彼は述べ、こう結んでいる。

「これは素晴らしく、強調すべき非常に重要な結論です。しかし、関連する研究文献は、そこに至るまで短期的な変動があると、依然として注意を促しています。」

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