エネルギー転換に鉱業分野のイノベーションが不可欠な理由

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  • 再生可能エネルギーを利用する技術の稼働には大量の金属・鉱物が必要だが、鉱業分野はその需要に応える体制が整っていない。

  • クリーンエネルギーへ効果的に移行するには、前例のない金属30億トンの需要がある。

  • 2050年までに世界全体でネットゼロ排出を達成するには、2040年までに鉱物資源の投入量を現在の6倍にする必要がある。

世界的なエネルギー転換が進むなか、企業や政府はエネルギー源の脱炭素化に向けた道筋を着実に築いています。こうした取り組みは、再生可能エネルギー源をどれだけ速やかに普及させられるかにかかっています。しかし、再生可能エネルギーを利用する技術にも、金属や鉱物を含む膨大な量の資材が必要です。それどころか、再生可能エネルギーを利用する技術は、従来の化石燃料を基盤とするシステムよりもより多くの資材を必要とし、世界的な脱炭素化の推進にあたって重要な留意点となっています。

クリーンエネルギーへの移行に伴って資材需要が増すなか、鉱業分野は現状のままでは需要に応えられません。鉱床の状況は変化しており、過去数十年にわたり業界を支えてきた技術や工程は、エネルギー、水、環境への負荷がますます大きくなっています。クリーンエネルギーをより利用しやすくするために真の進展を遂げるには、鉱業の大幅な変革が必要です。

環境的に持続可能な慣行の推進を主導する大手鉱業コングロマリット、Vimson Groupのディレクターとして、業界の重要な課題を埋めるうえでイノベーションと世界のスタートアップ・エコシステムが果たす決定的な役割を目の当たりにしてきました。クリーンエネルギーへの移行を実現するには、拡大する資材需要への対応に注力するとともに、その成長が持続可能で、気候への影響を最小限に抑えるようにしなければなりません。

(上)従来型自動車と電気自動車で使用される鉱物の比較、IEA、パリ。(下)クリーンエネルギー技術と他の発電源で使用される鉱物の比較Image: IEA

金属・鉱物需要の急増

現在、クリーンエネルギーへの移行には最大で金属30億トンが必要であり、需要は今後数十年で増加すると見込まれています。2050年までに世界全体でネットゼロ排出を達成するには、2040年までに鉱物資源の投入量を6倍にする必要があります。

米国で最大の排出部門である運輸分野では、脱炭素化の取り組みに電気自動車(EV)の普及が欠かせません。これは概ね成功を収めており、大きな可能性を示しています。2021年にはEVの販売台数が倍増し、現在の週間販売台数は2012年の年間販売台数を上回っています。しかし、電気自動車にはガソリン車の6倍の鉱物が必要です。EVの普及に伴い、こうした資材の需要も増加します。その大半はリチウム、コバルト、ニッケル、黒鉛などの特殊な鉱物であり、すでに遅れをとっている業界に大きな圧力をかけています。

資材を大量に使うバッテリーは電気自動車のコストを押し上げており、政府が支給するEV税額控除は普及を促し、コストを引き下げる重要な手段となっています。それでも、インフレ抑制法は、国内生産のバッテリーに対象を限定したため、ほとんどのEV購入をこの優遇措置の対象外としました。これを受け、企業は既存の鉱物サプライチェーンを再評価し、代替手段を模索しています。

原材料需要の増加は、鉱山で産出される鉱石の品位低下も招いています。大量の廃石を含む低品位の鉱床を採掘・処理するための革新的で最新の技術がなければ、鉱山会社はエネルギーを大量に消費する旧来型の技術に頼らざるを得ず、運営コストがさらに上昇します。

EV普及の勢いを保つため、従来の採掘工程を変革することはかつてないほど重要です。たとえば、二次資源からの資材の抽出とリサイクルなどの革新的な手法によって、国内の金属・鉱物供給を増やすことができます。ただし、取り組みをさらに拡大し、需要を維持するには制度面での支援が必要です。

低炭素の未来における鉱物と金属の役割の拡大Image: 世界銀行/IEA/McKinsey & Company

鉱業が抱える独自のサステナビリティ課題

探査から操業まで、鉱業の工程はエネルギーを極めて大量に消費します。鉱業は世界のエネルギー消費量の10%を占め、ネットゼロの目標を妨げるとともに、土地利用の変化による重大な環境影響をもたらします。

既存の工程を更新する必要がある一方で、鉱業はリスクを避ける傾向の強い業界です。安全、操業、社会面の課題が重大であるため、イノベーションや民間投資の場として見過ごされ、革新的なソリューションの導入も遅れています。

適切な資源と意欲があれば、ライフサイクル全体の炭素排出量を削減する機会があります。水素やアンモニアなどの代替クリーンエネルギーの導入、従来とは異なる方法での鉱石の破砕・運搬、そしてグリーン水素の利用と、炭素回収・利用・貯留による金属加工の脱炭素化がその例です。大きな影響をもたらす原材料の生産と使用に起因するScope 3排出量を削減するには、EV関連企業などがエネルギー消費の少ない採掘工程を検討する必要があります。

それでも、鉱山会社が技術への投資を増やした際に、投資収益率(ROI)が見えにくい場合があります。デジタル変革を受け入れる企業文化の醸成や、イノベーションを育む経営システムの導入など、重要な基盤整備ができていないためです。業界を変え、再構想しようとする意欲は明らかですが、時間、資源、そして足並みをそろえた取り組みが必要です。

ESG課題に関する鉱業・金属市場の意識調査結果Image: White & Case 2022

連携したアプローチ

鉱業分野が需要と世界の気候目標を達成する唯一の方法は、意図的な分野横断の協働と、拡大可能で持続可能なソリューションへの大規模な投資です。しかし、業界全体でも企業内でも分断があり、トップダウンで連携したアプローチの実施を妨げています。

鉱業のサプライチェーンは複雑で、鉱山から市場に至るまで、輸送や設備など多くの個別工程が関わります。組織内の縦割りはよく見られ、事業部門は連携や情報共有をほとんど行わず、独立して運営されることが少なくありません。サプライチェーンを統合されたプロセスとして捉えなければ、企業はエンドツーエンドのソリューションを導入したり、組織全体を大きく変革したりできません。

鉱業分野のイノベーションには、官民の緊密な協働も必要です。規制の変更はサプライチェーンに顕著な影響を及ぼす一方、企業の意思決定は地政学的な影響をもたらすためです。分断された業界でこの水準の連携を実現するのは困難であり、業界全体にわたる世界的な合意が求められます。

世界のスタートアップ・エコシステム

Vimson Groupは、鉱業向けの初期段階技術プラットフォームが緊急に必要だと判断し、Prospect Innovationを設立しました。このプログラムは、官民のリソースとつなぐことで、天然資源・鉱業分野の発展を担うトップイノベーターを支援します。

デザイン思考とオープンイノベーションに着想を得た協働の枠組みを活用し、業界の障壁を深く理解する専門家と連携しながら、世界のスタートアップ・エコシステムが持つ大きな可能性を生かそうとしています。これにより、数十年にわたる鉱業の専門知識を生かして、こうしたソリューションの拡大・実装方法に沿うよう、新興技術を磨き上げることができます。

エネルギー転換に追いつくには、鉱業分野が緊急かつ抜本的に変わる必要があることは明らかです。その実現を可能にするのが、スタートアップ・エコシステムと新興技術です。革新的なソリューションを育むことで、鉱山会社は環境により配慮した効率的な業界、そして最終的には、より強靭で持続可能な世界への道を切り開くことができます。

世界経済フォーラムの初期段階イノベーション・イニシアチブであるUpLinkは、ネットゼロで自然にプラスの影響をもたらし、公平な未来に不可欠な、目的意識を持つ起業家を支援し、その活動を加速させています。詳細を確認し、UpLinkコミュニティに参加するには、こちらをクリック。

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