製造拠点でデジタル変革を成功させるうえで、人材不足が大きな障壁となっています。
必要な現場人材の安定確保において、従業員の高い離職率が依然として大きな課題です。
先進企業が人材にどのように投資しているかを知るには、添付のプレゼンテーションをご覧ください。
世界経済フォーラムの「仕事の未来」報告書によると、リーダーの50%超が、変革の大きな障壁としてスキルギャップと人材の獲得を挙げています。製造業やサプライチェーンの経営幹部は、熟練した労働力の必要性を理解している一方で、必要な人材の採用、定着、意欲向上に苦慮することが少なくありません。生産システムには、最高水準の成果を上げる拠点から学び、ベストプラクティスを取り入れた、人材に関する新たな実践指針が必要です。この課題に取り組むため、世界経済フォーラムはマッキンゼーと協力し、「未来の現場人材」イニシアチブを2023年に立ち上げ、先進的な産業拠点における人材面の成功事例を特定し、共有しています。
その1年余り後、「未来の現場人材イニシアチブ」は、業界リーダーへの80件を超えるインタビューと世界各地の多数の拠点訪問を実施し、61件の革新的な人材ソリューションを集めたデータベースを構築するとともに、現場人材の卓越性を実現するための実践指針をまとめました。
現在、このイニシアチブは、2018年にマッキンゼーとの協力のもと設立されたグローバル・ライトハウス・ネットワーク(GLN)と連携しています。GLNは、産業界のパートナー連合が主導し、生産性、サプライチェーンのレジリエンス、顧客中心主義、持続可能性、人材の面で卓越した成果を上げる世界有数の拠点を特定しています。172を超える加盟拠点は、各拠点、生産ネットワーク、バリューチェーン全体にわたる総合的なパフォーマンスの最前線を示しています。
これらのライトハウス拠点は、生産性の50%向上、品質の80%超の改善、リードタイムの40%短縮、排出量の30%削減など、目覚ましい成果を上げています。テクノロジー、人材、持続可能性のソリューションを通じて、成果につながるイノベーションへの道筋を示してきました。なぜ、より多くの企業がこれに続かないのでしょうか。今日、企業が直面する主要な課題の一つが人材です。GLNは2025年に、人材に関連する実績とソリューションを枠組みに加え、人材への取り組みを一層強化します。これにより2025年から、各拠点は人材変革において際立った世界水準の成果を達成した拠点として認定を申請できるようになります。
今日の人材をめぐる課題
第四次産業革命(4IR)が多くの進歩をもたらしたにもかかわらず、企業は生産性の向上に引き続き苦労しており、その一因は労働力の安定性不足にあります。米国で最近発表された報告書によると、製造業者の71%が、従業員を採用し定着させられないことを最大の課題として挙げました。特に採用後90日以内の離職率は、依然として高止まりしています。先進国全体で、1時間当たりの生産性の伸びは、平均で2016~2022年には1%に減速し、1997~2002年の2.2%を下回りました。
今日ほど、労働者の採用、定着、意欲向上が難しい時代はありません。こうした複合的な課題の根本原因は5つあります。
1. 人材不足
現場労働者の需要が供給を上回っています。米国労働統計局は2024年1月、全米の製造業で62万2,000件の求人が埋まっていないと報告しました。一方、労働力人口全体の労働参加率は、1990年代の67%から2023年には63%未満へ低下しました。
2. スキルギャップの拡大
デジタル技術や自動化への投資の進展に、技術スキルの習得が追いついていません。製造業全体で、労働者のおよそ15%が何らかのスキルミスマッチを感じています。この状況は、世界経済フォーラムの2023年版「仕事の未来」報告書の予測とも一致します。同報告書は、今後5年間で労働者のスキルの44%に変化が生じると予測しました。
3. 報酬、評価、インセンティブの不足
マッキンゼー・アンド・カンパニーの分析によると、労働者の41%が総報酬は不十分だと感じており、それが離職や転職につながっています。
4. 現場監督者の苦慮
現場監督者は対人スキルが不足していることが多く、人と向き合う時間は勤務時間の3分の1にも満たないことがあります。
5. 変化する労働者のニーズ
今日の現場従業員は、明確なキャリアパスを求め、意欲をかき立てるリーダーに応え、意義のある仕事を重視し、より柔軟な勤務スケジュールを望んでいます。しかし、マッキンゼーの調査によると、雇用主が考える従業員の最優先ニーズと、従業員自身が挙げるニーズには食い違いがあります。
成長を支える6つの人材能力
これまで経営リーダーは、労働力をコストセンターと見なしてきました。しかし、最も大きな価値を生み出す企業は、資本生産性と労働生産性を同時に高めることに注力しています。そのために、人材を資本と同じように投資対象として捉えています。
「未来の現場人材」イニシアチブは9社と連携し、現場人材への投資が成功した事例を特定するための包括的な評価プロセスを策定しました。
パイロット事業から、企業は6つの能力にわたって人材に投資していることが明らかになりました。こうした投資を、業界や地域に適した報酬パッケージと組み合わせる企業は、同業他社を大きく上回る生産性の向上と人材の安定化を実現しています。以下は、6つの能力に関して確認されたイノベーションの一例です。詳細は、添付のプレゼンテーションをご覧ください。
1. 仕事の設計と安全
安全で生産性の高い職場と業務プロセスを実現するため、現場の仕事を再構想する:
ウエスタンデジタルのプラーチーンブリー拠点では、デジタル管制室を活用して工場を変革し、オペレーターをより高度なスキルを要する職務へと移行させています。
ユニリーバのキルバーン拠点では、俊敏かつ継続的な組織再編を実施し、在籍する人材に合わせて個別に設計したキャリア開発の機会を創出しています。
2. 人材計画
組織と拠点レベルで現場人材に必要なことを把握し、動的なシフト編成によって需要と供給を一致させる:
ハイアールCOSMOPlatの動的なラインバランス調整ツールは、柔軟なシフト編成の機会を生み出しています。
シュナイダーエレクトリックのコンピテンシー管理システムは、インドの同社拠点で効果的な人材計画を可能にしています。
3. 採用とオンボーディング
次世代の現場人材を見つけ、活躍につなげる:
フレックスのアルトホーフェン拠点は、若手人材の継続的な確保につながる見習い制度を提供しています。
アラムコはAIマッチングを活用し、従業員候補者の選考の質とスピードを高めて採用プロセスを最適化しています。
4. 能力開発
オペレーターと現場監督者の現場対応力を高める:
ウエスタンデジタルはタイで、大学と連携し、独自のデジタルリーダーシップ基礎プログラムを作成しました。
アラムコは、研修の効果を高めるため、バーチャルリアリティとゲーム要素を取り入れた研修を実施しています。
5. 人材の有効性
業績目標の達成に向けて望ましい行動を促す形で、オペレーターと現場監督者のパフォーマンスを管理する:
ユニリーバのキルバーン拠点では、従業員と経営陣の率直な対話を促す、独創的な成果連動型報奨を導入しています。
ハイアールCOSMOPlatは、革新的な給与計算手法を導入しています。
6. 企業文化と従業員体験
魅力的な従業員価値提案を定め、実現する:
ネスレのガロト・チョコレート工場は、聴覚障害のある従業員が働きやすい、インクルーシブな環境を整えています。
ハイアールCOSMOPlatは、従業員がイノベーションに取り組めるソーシャルプラットフォームを導入しています。
人材変革を通じて世界水準の成果を達成したとお考えの場合、以下からグローバル・ライトハウス・ネットワークへの申請をお勧めします:initiatives.weforum.org/global-lighthouse-network/home。申請期間は12月9日から2月2日までです。
パイロット参加企業のアラムコ、コカ・コーラ、フレックス、ファースト・ソーラー、フォーチュン・ブランズ、ハイアールCOSMOPlat、ネスレ、シュナイダーエレクトリック、ユニリーバ、ウエスタンデジタルに感謝します。


